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エイムの魔法植物学  作者: izumo_3D
ー守護英雄の村編ー
13/67

立ち向かう者

キィィィイイーーーーーーン!


黒い閃光が、鋭く音を立てて空を切り裂き、シラセめがけて一直線に迫ってきた。


ーーーー死ぬ。

そんなことがシラセの頭をよぎった直後、視界がぶれた。

エイムがシラセを突き飛ばしたのだ。

黒い閃光はエイムの腕をかすめ、激しい風を巻き起こしながら、背後の木々を引き裂き、幹を貫いてその先へ消えた。


「うぅ!」

エイムが呻き声を上げる。

見ると血が一筋、腕をなぞっていた。


「エイム!大丈夫か!?」

シラセは我に返ったように目を見開き、叫んだ。


「うん、大丈夫…かすっただけ…」

エイムは痛みを堪えて言う。


「あ…ああ…弓が…!」

シラセは震える声で言った。

シラセが装備していた弓は、閃光を避けた際に折れてしまっていた。


バキバキバキ……ドォーーーン!!!

エイムたちの後ろで轟音がする。

幹を貫かれた巨木が倒れた。


鋭い眼光でこちらを睨んでいた()()は、ゆっくりと歩き出し、森の闇から、日の当たるところにその姿を表した。


「うそ…だろ…」

心臓が鼓動を打つ音だけが耳に響き、世界が止まったかのような感覚に包まれる。


そこにいたのは、高さ3メートルを優に超える、巨大な黒い狼だった。

眼は血走り、口からは凶悪な牙がのぞいている。

口元から滴る涎は、獲物の気配を嗅ぎ取った飢えた捕食者のそれだった。

エイムとシラセは、心臓を掴まれたと錯覚するほどの戦慄に支配されていた。


「…シラセ…あんな生き物、この森にいるの…?」


「そんなわけないだろ…あんなのがいるってわかってたら、二人だけでここに来るもんか!

 エイム、逃げよう!あんな化け物に、かなうはずない…」

シラセの声は震え、目は恐怖で大きく見開かれていた。

心臓はまるで胸を突き破るかのような速さで鼓動し、冷たい汗が額を伝う。

脳裏には次々と最悪の光景が浮かび上がり、自分たちがこの場に留まる限り、未来などないという確信がシラセを支配していた。


「ダメだよシラセ!ここで逃げたら、村の人々はどうなるの!?」

エイムの言葉には怒りと熱が込められている。

しかし、それはシラセを責めるためではなく、恐怖に飲み込まれそうな彼を引き戻すための叫びだった。


「何言ってんだエイム!!あんなのに、俺たちだけで勝てるわけないだろ!!!

 俺の弓も折れちまった…もう戦えないんだ!

 このままここにいても死ぬだけだ!!頼むから逃げようエイム…」

シラセの眼は涙目で、怯え切っている。口の端が小刻みに震え、喉から漏れる息は荒い。

もはやそれは哀願だった。


エイムはしゃがみ込み、シラセの両肩に手を添えた。

そして、目を真っ直ぐに見て、言った。

「…シラセ。大丈夫。私だって戦える。

 怖いけど…ここで逃げるわけにはいかないの。

 私たちの背中には、大勢の人の命が、乗っかっているんだよ。

 だからシラセ。私はあきらめない。」


そう言って、エイムは立ち上がり、巨狼を真っ直ぐと見据えた。


「ヴゥゥヴゥ…」

巨狼の喉奥から漏れ出た低い唸り声は、地の底から響き渡るような重低音となり、大気を震わせた。

その音はまるで大地そのものが恐怖に戦き、共鳴しているかのようだった。


次の瞬間、黒き巨影が疾風のごとく動き出した。

巨狼の巨大な四肢が地面を踏み砕き、響き渡る轟音と共に、まるで裂け目を走る稲妻のような速さでエイムとシラセに迫る。

大地はその一歩ごとに震え、周囲の世界がその圧倒的な存在に屈服していくように感じられた。


「ヒッ…」

あまりの恐怖に、シラセの口から思わず声が漏れる。

その瞬間、エイムは目の前の恐怖に立ち向かう決意を固め、深く息を呑んで巨狼を見据えた。

そして、叫んだ。


「行くよピーちゃん!!!」


エイムは、巨狼に向かって駆け出していた。

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