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レジスタンス的 山賊集団”HEAPS”結成--!!

「それでは諸君!これより、我等レジスタンス的山賊集団:”HEAPSヒープズ”による”憎悪の極点王”討伐作戦を開始する!!……ハァ」


 “憎悪の極点王”を倒すために、メンバーを集めレジスタンスを率いる事にしたアカシック・テンプレート。


 今日は初の作戦を決行する記念日となるはずだが、朝からアカテンは憂鬱だった。


 何せ現在この地は末法の世というべき状態のため、人心は酷く荒みきっており、“憎悪の極点王”討伐を呼びかけたところでそれに応じる志の高い者は誰一人としていなかった。


 それでも、何とかアカテンの呼びかけのもと集まったのは、





・マイナーな自分の存在を多くの人々に知らしめるために、一旗揚げようと意気込む赤色に輝く蜂の妖怪:赤蜂あかはち


・アカテンの小説に影響を受けて、立派な山賊になる事を夢見る16歳の少年:田中たなか 裕也ゆうや


・毎日が日曜日で暇だったため、興味本位で参加した中卒無職のネコ耳を生やした少年:立花たちばな モミ()





 これら三名の戦士とも言えぬ面子であった。


 再び、静かにため息を吐くアカテン。


(超マイナー妖怪に、将来が少し心配になってくるガキ、何でかネコ耳生えているプー太郎………駄目だ!!成功のビジョンが全く見えん!)


 最初にアキラのような少年に仲間になってほしい、と言われたことで気を大きくしたアカテンは、仲間ならすぐに集まると考えていた。


 だが、これほど心細い結果になるくらいなら、あそこで変な見栄を張らずにアキラ達を仲間に加えておけば良かった……と今更ながらに後悔が募る。





 見事に不安しかない。





 それでも、王の打倒を決意した以上はやるしかない!とアカテンが自分を奮い立たせようとしていた――そのときである。


「アカテン君、何か携帯鳴ってんよ?」


 アカテンのスマホが鳴っている事に気づいた裕也が、アカテンにそれを投げ渡す。


「目上の者には敬語をだな……あと、無造作に投げんなよ……ハイ、もしもし!」


 ぶつくさ言いながらも、煮立ったような頭に残った僅かな常識と良心のもと、3コール以内で即座に電話に応じるアカテン。


 通話してすぐに聞こえてきたのは、気品あふれる一人の青年の声だった。


「コココッ、世が廃滅の一途を辿っておるというのに、貴殿は相変わらずのようでおじゃるな。……アカシック・テンプレートよ……!!」


「そ、その声は……藤原か!?」


 今更電話をかけてきたのが誰なのかを理解し、驚愕の声を上げるアカテン。


 この電話の相手こそが、誰もが知る天上貴族の末裔すえたる存在――藤原ふじわら 啓泉けいせんその人である――!!


 啓泉は生まれや境遇に驕ることなく己の力を鍛え上げ、世界中を旅して回りながら各国を代表する英傑達と死闘を繰り広げ、彼らからその信念の証ともいえる“ことわり”を託されたほどの益荒男ますらおでもある。


 真偽のほどは分からないが、命を落としかけたときに『異世界の調整と魂の新たなる転生を司る女神』という超常的な存在によって、異世界へと転生させられそうになったのだが、それを断り女神との死闘の果てに現世へと生還を果たした……というとてつもない逸話を持つことからも、天上貴族という枠組みに収まらない藤原 啓泉という存在の破天荒ぶりがうかがい知れる。


 そんな啓泉と縁あって知り合いになったアカテンだったが、かたや天上貴族、かたや無頼な山賊小説家気取り、という天と地ほども隔たりがあり、水と油とでも言うほかないほど性格が違う二人だったが、不思議と馬が合うのか、知り合って以来腐れ縁とばかりに付き合いが続いていた。


「そんで、高貴な天上貴族様とやらがこういう世紀末が来る事を漠然ながらも予見し、弱肉強食を見据えた超実践的山賊小説を書き続けてきた俺に何の用なんだ?」


「切るぞ」


「すまん」


 アカテンの戯言に対しても、即座に迅速かつ適切な対応をする啓泉。


 変に貴族としてもったいつけたりせずに、アカテンのようなしょうもない相手のあしらい方を心得ている辺りに、人の上に立つ者の風格が感じられるようであった。


「とにかくの……」と言いながら、啓泉が本題へと入り始める。


「ウム、実はの……此度の“憎悪の極点王”による地獄の到来を前に、そのような存在の台頭を許した我が国に対して世界各国から抗議や経済的圧力の猛攻が押し寄せておっての。今はまだ麿まろ自身の力や一族のコネクションで何とか抑え込めておるが、流石に“憎悪の極点王”討伐までは手が回らぬのでおじゃる」


「マ、マジかよ……怨嗟を招く呪詛(ヘイトスピーチ)ってのは、この国全体から命を奪い尽くすだけじゃなく、国際社会から非難されるようなおぞましい行為だったのか……初めて知ったぜ!!」


 ツカサからこの世界の成り立ち、啓泉から現在の深刻な国際情勢を聞かされ、一刻の猶予もままならぬ!とアカテンの闘志に火が灯る--!!


「正直、こんな寄せ集め感MAXのメンバーで達成するのは無理がある!と諦めていたけど……こうなったら、俺達で"憎悪の極点王"討伐をやってやらぁ!!」


 その発言を受けて、電話口の啓泉(けいせん)が優雅に笑う。


「コココッ、その意気や良し!!……けれども、普段から僻み根性丸出しで麿のような天上貴族や特権階級に噛みつくだけの貴殿に、集いし者達を上手くまとめあげたうえで、強大なる権能を誇る"憎悪の極点王"を討伐することが出来るかの?」


「えっ!?俺達"HEAPS"の力で、"憎悪の極点王"を討伐だって!?」


 そんなやり取りをしながら、啓泉より討伐依頼を受けるアカテン。


 それは史上初ともいえる国難を前に、『天上貴族』と『山賊なろう作家』という異なる立場の両者が手を結ぶ、という歴史的快挙であった……。









「というわけで王を倒したら、藤原からたんまり報酬がもらえる事になったんで、今まで以上に気合い入れて〜……いっくぞ〜〜〜ッ!!」


 大の大人とは思えないような、みっともないテンションではしゃぎまわるアカテン。


 対する仲間達の反応は冷ややかだった。


「見損なったぜ、アカテン君……山賊小説の最先端を疾走してきたアンタが天上貴族なんかと手を組むなんて!!」


「……てゆうか、これから生死をともにするって言うのに、平気で仲間達を寄せ集め呼ばわりとか、正直人としてどうなのさ?」


 裕也とモミ夜から激しい不満が噴出する。


 それに対して、アカテンもガツンと言い返す--!!


「うるせー!!男は金と女を前にしたら、頭が上がらん生き物なんじゃい!……男にとって本当に大事な事は、そんな女子供を苦しめたり、人の食い扶持や生活をブチ壊して好き勝手しよる"憎悪の極点王"みたいな奴相手に、一発ドデカイのをブチかませるかどうかだけじゃろがいッ!!」


 アカテンの暴論ともいえる理論を前に、なおも文句を言い続ける二人。


 それとは別に、妖怪:赤蜂が別の視点からアカテンに指摘する。


「でも、アカテンさん。"憎悪の極点王"のもとにたどり着くまでには、王がこの世界に呼び出した堕淫棲隷武ダイン・スレイブと呼ばれる強大な軍勢や、怨嗟を招く呪詛(ヘイトスピーチ)の熱烈な支持者などがたくさんいるんですよ?……ボクは身体を光らせるくらいしか出来ない妖怪だから戦闘は自信がないし、これだけの人数で何とかするのは無謀すぎると思います!」


 堕淫棲隷武ダイン・スレイブ


 それは"憎悪の極点王"が圧倒的な権能でこの世界へと呼び出した異形の軍勢である--!!


 漆黒の巨躯に大剣を携えた堕淫棲隷武ダイン・スレイブ達は高い戦闘能力を誇るだけでなく、通常兵器では傷一つつけることが出来ない存在であり、まさに『王の剣』と呼ぶに相応しい力を内外に誇示していた。


 また、王のもとにはこれら堕淫棲隷武ダイン・スレイブだけでなく、怨嗟を招く呪詛(ヘイトスピーチ)に賛同し、熱烈に"憎悪の極点王"を支持する者達が存在する。


 彼らは単なる人間ではあるがそれだけに、敵対してるからと彼らを罵倒したり武力で排除しようとすれば、これまでの怨嗟を招く呪詛(ヘイトスピーチ)と同じかそれ以上の障気で地上が汚される事となる。


 せめて、この国で生きる民衆の協力が得られれば話も違ってくるのだが、アカテンの呼び掛けに応じたのがこの三名のみという事からも分かる通り、人々は強大過ぎる"憎悪の極点王"の勢力を恐れてか、みな王の支配に対する本格的な反抗や離脱には及び腰となっているのがこの国の現状だった。


 "憎悪の極点王"討伐までに、積み重なる難問の数々。


 それに対して、アカシック・テンプレートが出した答えとは……。





「……いや、まぁ、何とかなるっしょ!」





 つい今しがた激情のままに力説していたのが何だったのか……と言わんばかりに、軽く応じるアカテン。


 ここまでくると、周りの者達は絶句するほかなかった。


 そんな彼らの様子に構うことなく、「大丈夫、俺達"HEAPS(ヒープズ)"は、この同じ時代に出会えた事が奇跡に思えるくらいの最高の布陣だ……!!」などと、軽薄としか思えない言葉を口にするアカテン。





 見事に不安しかない。





 異口同音ながらも、沈痛な面持ちの三名が感じたのはそのような共通認識だった。









 かくして、革新的を標榜しておきながら従来の日本人特有の無責任さ・勢い任せに突き進もうとする最低な指揮官・アカシック・テンプレートのもとに、三名の若者の命運と世界の行く末は託された。


 果たして、こんな状態で見事"憎悪の極点王"を倒す事が出来るのか……。


 その答えを知る者は、まだ誰もいない。

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