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夜と月と星の道行き<3/3>

 日の落ちた庭では、松明や焚き火の明かりに照らされて、ルキルアの兵士やその客人達がそれぞれの仕事や休息の時間を過ごしている。

 窓際に置いた椅子に腰掛け、窓の縁に片肘をついて外を眺めていたエトワールは、ふと背後に現れた気配に、声だけを向けた。

「ちょっと痛い目にあってしまったようだね。町の中で、人に手を出してはいけないと言ったろう」

「……」

 どこから入ってきたものか、燭台の灯りから遠い場所で、片膝をついたアシオが控えている。

 暗がりの中、こうべを下げているので表情は見えない。もとより、エトワールは振り返りもしていない。だが、無言のなかに答えを得た様子で、エトワールはそれ以上咎めなかった。

「一日、彼を見ていて、どう思った? 悪い奴だった?」

「……いい奴は、違う」

 ぼそりと、アシオは答える、不機嫌が九割、残りの一割は、どうにも不可解そうに。

「変な奴だ」

「変?」

「おかしな奴。よくわからない」

 語彙を多く持たないアシオは、それ以上、自分が感じていることの説明ができないようだ。

 エトワールは窓の外を見下ろしたまま、苦笑いに近い笑みを見せた。

「そうだね、よくわからない。でも、敵では無いよ。それはわかるね?」

「……」

「私は今日はここから出ない、お前はもう休みなさい」

 不満そうな感情をにじませた気配が、また消失した。誰もいなくなった室内には、やはり目を向けず、エトワールは頬杖をついたまま改めて庭を見下ろした。

 白龍の守る焚き火の側では、エレムが連れてきたラムウェジの従者である神官達、それに、昏金の髪の娘が座り、ユカ、ルスティナを交えて言葉を交わしている。そのそばで、ランジュは白龍と一緒に、木の棒にさした芋を火であぶっていた。

 グランは少し離れた松明の側で、夜番の兵士達となにやら雑談をしている。視線に気づいたのか、ちらりとこちらを見上げたので、エトワールはひらひらと手を振った。グランはわずかに肩をすくめ、何事も無かったように会話に戻った。

 エトワールはあげていた手を頬杖の形に戻すと、星のように口元をほころばせた。

「なにやら、変わった風が吹き始めたな。先行きが楽しみだ」

 

 ※ ※ ※


 ためていた星のかけらが尽きてくると、巨人たちは町を襲うようになった。抵抗するものは殺され、殺されなかった王と民の多くは連れ去られた。

 残された民は王を救うため、残っていた星のかけらをかき集め、巨人の元に向かった。そして、星のかけらも、それを持っていった民も、戻っては来なかった。

 巨人たちは、自分たちの知っているほかの多くの集落も、同じように襲った。多くのものとひとを奪い、殺し、壊し、最後には去って行った。

 息を殺すようにして身を隠していたイミュの集落だけが、何も失わなかった。

 イミュの集落は、一番星の髪の男を王に立てた。

 イミュのこどもに一番星の色をした髪の者が現れたら、それは最初の王の生まれ変わりである。必ずその者を次なる王と立てるように。その言葉に従うように。



<明星の王と星躔の縒岐 了>

南西地区編完結です。次章からはオヴィル山脈編になります。

新章更新まで少しお時間を頂きます。おつきあいありがとうです。

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