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犯人は誰でしょうか。

 急いで5組に向かうと、幸いにして鈴乃ちゃんは凜ちゃんと談笑していた。


「鈴乃ちゃん!!」


 良かったと思いつつ名前を叫ぶと、きょとんとした顔で鈴乃ちゃんと凜ちゃんがこちらを向いた。まあ、クラスのほぼ全員がこちらを向いたのはおまけかな。

 私のただならぬ様子を察したのか、急いでこちらに来てくれた。


「優美ちゃん、どうかしたの?」

「取り敢えずこっちに来て!!」


 残念だけど、今はそれに答えれる精神状態ではない。


 一刻も早く部室に彼女達を連れていくことしか考えてなかった私は、行く道中も何があったのかを訊く彼女達も廊下は走ってはいけないという校則もガン無視して走り続けた。




 演劇部の部室は3号館の4階にあり、中庭を通りつつ急いで向かったが、やはり距離が長く、着くと皆息を切らしていた。


 行くときは閉めたはずの部室の扉が開いていたことには少々疑問を感じたが、それも部室に入っての2人の表情を見てすぐに消えてしまった。


「こ、これは…」

 やはりこれは演劇部がわざとこうしたわけでは無かったらしい。

 私の勘違いでは無かったことへの安堵と同時に、こんなことをしたのが誰なのかという不安感が湧いてくる。


「今更だけど、これは演劇部でこういうのをやるとかでは」

「そんなわけない!」

 肩を震わせながら涙ながらに言う鈴乃ちゃん。その今にも崩れ落ちそうな体を凜ちゃんが静かに支えている。


「そもそも、優美ちゃんはなぜここに?」

 動揺していて動けない鈴乃ちゃんの代わりに凜ちゃんが静かに私に尋ねる。私は今朝の手紙を見せながら誰かに呼び出されたことを伝えた。


「おそらくこの手紙を出した人が犯人」

「私もそう思う。でも、今は犯人探しをしている時間はないから、昼休みにまたどこかで会って話そう。鈴乃ちゃんは…」

「取り敢えず落ち着くまで保健室でいるのがいいと思う。私が送り届けるから優美ちゃんは教室に戻って」

「うん、あ…」


 机の上にあった鍵を手に取り、鍵を閉める。

「私はこの鍵を職員室に戻してから教室に戻るね」

 鍵を持って別れようとすると、待って、と鈴乃ちゃんの声がした。


「鍵は私が管理してるから」

「あ、そうなんだ、じゃあ預けておくね。また昼休みに話し合おう」

「うん」


 笑顔でまたと言った私への鈴乃ちゃんの返しはとても弱々しいものだった。


 それにしても一体誰が…

 何故だか既視感のある手紙を見ながら、午前中の授業をBGMに私はそのことばかりをぐるぐる考えていた。




 そして昼休み。


「なんで桃華がいるのさ…睡蓮君まで…」

「えー、だって鈴乃ちゃんと凜ちゃんとは友達だし、私も一応生徒会役員だしねー」

「あ、私が呼んだんです。一応と思って…」

 今演劇部部室に私、鈴乃ちゃん、凜ちゃん、そして桃華と睡蓮君がいる。


 まあ睡蓮君は経験値が高いだろうし、桃華の担当の庶務はこういうのが仕事になってくるんだろうから凜ちゃんが呼んだのはまあ正しい判断だ。

 ただ個人的に金鳳君に「仲間はずれにしたでしょー!!」とぷんすか怒られるのは面倒なんだよなあ。


「まあいいや。それより昨日はどうだったの?」

「昨日は普通にセリフ合わせをする方と衣装・小道具を作る方に分かれて作業してて。もうあと少しで完成というところで最終下校の時間になったんで皆で一緒に帰宅したの。その時鍵はきちんと閉めて帰ったよ」

「ここの辺りの点検当番は私だったから確認したけど、ちゃんと扉は閉まってたよ」

 扉も引っ張って確認はしたから間違いない。


「ああ、そうか。昨日のここら辺は篠宮さんの当番か。確認は出来てるとしたら犯人は昨日の夜から今朝篠宮さんが来るまでってことになるけど…」

「でも、この学園夜は警備員さん巡回してるし忍び込んで荒らしてたら流石にばれるんじゃ…」


 そう、この学園夜は警備が厳しくて忘れ物してちゃっかり取りに来よう、とかそういうのをしてしまうと途端に不審者として捕まえられてしまうほどだ。まあ難関入試を乗り越えてきた生徒達ばかりだし、常日頃から教員達が口を酸っぱくして言ってるから被害者は年に1人いるかいないかだけど。


 もし忘れ物をしてしまった場合は、学校に直接連絡して警備員さんと教員の誰かを伴って取りに行く形になる。

 私も過去に一度だけ次の日提出の宿題を忘れて取りに来たことがあったけど、刑務所に連行される罪人さながらだった。もう2度と忘れ物はしまいと誓ったのもこのときである。


「とすると朝方だろうね。6時半には門は開いてるから荒らして靴箱に手紙を入れる時間は十分にある」

「うーん、でも犯人探しは難しそうだよね。朝早いと人いないから誰がいつ来たかなんて分かんないし…」

 うーん、詰まった。これからどうすべきか、と皆で悩んでいると、最初の一言以外全然しゃべっていなかった桃華があれ、と声を上げた。


「優美ちゃんこの手紙…」

「ん?手紙がどうかしたの?」


 朝入っていた手紙はノートの切れ端で書かれており、筆跡にしても校内全員の筆跡を調べるなんて途方もない作業になってしまうため犯人の手掛かりにはならないだろうと思っていたのだが。

 急にトーンを落として眉を顰める桃華に皆もどうしたのかといった様子で見守る。


「優美ちゃん、これが下駄箱に入ってた手紙で合ってるんだよね」

「もちろん、肌身離さず持ってたから間違いないよ」


 確信を持って頷くと桃華の顔はさらに険しくなった。

「でも、優美ちゃん……」

 神妙な面持ちで桃華は衝撃の言葉を放った。


「この字、優美ちゃんの字だよね」

「えっ……」


 その言葉に私は言葉を失ってしまった。


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