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女の勘には従いましょう。

「おはよ、優美、桃華。二人が朝から一緒にいるなんて珍しい」

「あ、真純おはよう。劇についての話をしててね」

「ああ、この前配役決めたんだって」

 真純には世間話のついでに生徒会について話せるところは少し話したりしてるのだ。主にキラキラ様たちに囲まれる私のメンタル救済の一環として。

「そうそれでね、桃華が」

「納得いかない!せっかくのチャンスなのに…」

「でも決まったことじゃない」

 それでも桃華は頬をぷくーっと膨らませたまま不満を述べている。それを見て真純は反射的に私の方を見て首を傾げた。

「?どういうこと?」

「実は…」




 その日の放課後、鈴乃ちゃん力作の台本は満場一致で可決され、そのまま配役も決めてしまうことになった。

「男の役が、王子、王様、宰相、姫の従者、王子の従者、女の役が姫、王子の許嫁。取り敢えず男子女子で分かれて配役を決定しようか」

 副会長の言葉とともに、二手に分かれて話し合うことになった。と言っても、

「優美ちゃん!私」

「姫ね、で私が王子の許嫁」

 話し合う必要性皆無だと思うんだよね、だって本当のヒロインとモブなんだから、そのまま当てはめればいいんだし。

「ちょっと待った!それじゃあ面白くないよ!」

「面白さより自然さでしょう」

 ここでいつものように流されそうになったらいけない、断固拒否の方面で攻めないと今まで流されて良かった試しなんて一度もないんだから。

 それでもやはり桃華は諦めきれないらしい。

「えー!!優美ちゃんのお姫様姿みたいよ!」

「王子の許嫁だってお姫様じゃない」

 本当なら私ナレーション志望だったのに!お姫様役なんてお呼びじゃないんだから!影役!影役所望だよ!せめて役でもちょい役とか!

「そんなの不公平だよ!せめてじゃんけんで決めようっ!」

「いいよ、じゃんけんね」

 結果、




「優美が勝ったわけね」

「うん、こういう時じゃんけんって言い出した人が負ける法則あるけどやっぱそうだよね」

「うぅ、それはもう気にしてないよ。でも!せっかくドレス着るのにお化粧も髪結いも何も無しなんて!」

「だって私飾り付けられる必要ないもの。「美人な」王子の許嫁とはどこにも書かれていないし」

 むしろ「馬子にも衣裳」の方が嫌なやつっぽくて上出来だと思うけどなあ。

 事実それを伝えたら、怜様達からはOKがもらえたのだ。

「かわりにドレスはちゃんと指定されたものを着るっていう約束はしたよ?」

「まあ、そこまで約束してるんなら許してあげたら?」

「役員が許しても優美ちゃんファンクラブメンバーが許さないからね!」

「それそっくり「渡辺桃華ファンクラブ」に返すわ」

 桃華のファンクラブは私のと比べると人数には2倍以上の差がある。多数決とったら確実に桃華のファンクラブの圧勝だ。

「今回は桃華が引くしかなさそうだね」

「よしっ!初めて流されずに済んだ!」

 今なら顔の周りにダイヤのエフェクトかけれる気がする!

 だって初めて!桃華を!言い負かした!

 私が今までにない自信に満ちていると、桃華は諦めたのか、

「うぅ、志穂ちゃんと慰め合ってくるー」

 と言って去ってしまった。

「それにしても、あんたなら化粧率先してやると思ってた。「あの美男美女達と劇だなんて隣に立つんだったらメイクしとかなきゃ逆に悪目立ちする!」とか言って」

「まあそれは思わないでもないけど、けど真純もなんとはなしに察してはいるんでしょ?」

「まあ「なんとはなしに」ね。でも本当に当たってるかなんて分かんないよ。」

「そっか」

 と言いながらサッシの良い真純のことだ、きっと核心まではいかないけど桃華の前でそれを言わない方がいい事情があることくらい分かっているはず。

「うーん、まあ理由は、」

 ごめん、言えないけど、でもこれは本当だから。

「私の中の「女の勘」かな?」


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