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これはとある昔のお話です。

優美達からは一旦離れて昔話でございます。

 とある国に、1人の王女様がおりました。


 国一番の美人というわけではありませんでしたが、皆に優しく、凛とした風格を持った美しい少女でした。


 王女様は王様と今の王妃様の前の王妃様の子供でしたが、前の王妃様は早くに亡くなってしまったため、王女様は王様と今の王妃様、現王妃様と王様の娘である2番目の王女様と王宮で暮らしていました。


 3人は王女様のことが嫌いで、王宮の隅の方に王女様を住まわせ、周りの家来達にも王女様を嫌うよう命令していました。


 そのため王女様は、特別な日以外は、たった2人の味方のメイドとだけ接していました。


 そして、王女様は結婚相手を決める頃になりました。


 しかし、王様達が家来達に王女様を嫌うよう命令していたので、誰も結婚相手になろうと名乗り出ません。名乗り出たら王様達に嫌われてしまうかもしれないと恐れたからです。


 そのため、結婚相手を決めなければならないのに、誰も候補がいないのでした。


 そんなある日、隣の大きな国の皇子が王国にやって来ることになりました。

 皇子様に気に入られようと王様達は精一杯皇子様をもてなしました。


 そして、王女様には自分の部屋に引きこもるよう命令していました。


 王様達は2番目の王女様を皇子様の結婚相手にと望んでいたからです。


 しかし、滞在して数日して皇子様は王宮で迷った際に、王女様に出会ってしまいます。

 王女様はちょうど城の奥にある唯一出入りを許された小さな庭に向かう途中でした。


 王女様は見目麗しい皇子様に一目で恋に落ちてしまいます。

 けれど皇子様は将来2番目の王女様と結婚することを王様も王妃様も望んでいることを知っていたため、自分の気持ちを押し殺し、皇子様への道案内を追えると名乗りもせず自分の部屋へと戻りました。


 王女様の気持ちとは裏腹に、皇子様は王女様へお礼がしたくて周りの人達に彼女は誰かを聞いて回りました。


 けれど勿論誰も答えるはずがありません。

 王様や王妃様に嫌われたくはありませんでしたから。


 そこで皇子様は王女様に出会った時のように、時間があれば城を巡り歩きました。


 そして3日後、皇子様はようやく王女様を見つけました。


 皇子様にとっては喜ばしいことでも、王女様にとっては喜ばしくないこと。

 王女様はすぐ逃げようとしましたが、結局皇子様に追いつかれてしまいます。


 皇子様は王女様に色々尋ねますが王女様は答えません。


 王女様の存在は国の中でも城にいるごく一部の者しか知らないので、当然皇子様が知っているはずがないからです。


 それでも皇子様は挫けず、せめてお礼と少し話がしたいと言いました。

 王女様も皇子様相手に無碍にできず、王女様が向かうはずだった庭で、ほんの少しの間2人は話をしました。


 皇子様はお礼として王女様に一つの木の枝を手渡しました。

 それは王女様の国では珍しい、サクラという花の枝でした。

 枝の先には綺麗なピンク色の花が何輪か咲いていました。


 そしてそのままお互いの国の話であったり趣味であったりを話しました。


 皇子様は少し話をしただけでしたが皇子様は王女様が素晴らしい人物であると気付きました。

 この人ともっと話をしたいとそう思うようになりました。


 王女様も皇子様が立派な人物であると気付き、この人ともっと話をしたいとそう思うようになりました。


 結局2人はお互い自分の気持ちを抑えきれず、毎日少しの間でしたが庭で話をするようになりました。2人は気付かぬままにお互い恋をしていたのです。


 しかし、その時間も長くは持ちません。

 王様達が2人の関係に気付いてしまったからです。


 このままではいけないと王様は皇子様が滞在する残りの時間には部屋から1歩も出るなと王女様に命令しました。


 王女様はとても悲しみましたが王様の言いつけを守り、次の日から1歩も外に出ないようにしました。


 皇子様はそうとも知らず庭に赴きますが、勿論王女様はいません。

 待てども待てども来ません。


 皇子様は変に思い城中を探しましたが王女様は見つかりませんでした。


 その次の日、王様は皇子様に2番目の王女様との婚姻を勧めました。


 しかし、その頃にはもう皇子様は王女様を好きになってしまっていたので、自分には心に決めた人がいると断ります。


 王様はそれが王女様であると気付き、このままでは皇子様は頑なに婚姻を嫌がるだろうと思いました。


 その日の夜に、王様は王女様を呼び出しました。


 そして、王女様に城を出るよう言いました。

 さもなくば命はないとも言いました。


 王女様はすぐに王様が、皇子様と自分の関係に気付いたのだと悟りました。


 このまま城を出たくないと言ったら王様に殺されてしまう。

 王女様は城を出る決断をしました。


 けれど、王女様の皇子様を思う気持ちまで消えてしまう訳ではありません。

 このまま城を出たらずっと自分は塞ぎ込みがちになる。せめて、何か伝えたい。


 夜中まで考え、次の日、いつも皇子様と会っていた庭まで向かいました。


 王女様の願いが通じたのか皇子様はそこで花を眺めていました。


 王女様が来たのに気付くと、勢いよく立ち上がり、今まで何をしていたのか、無事で良かった、と王女様に話しかけます。


 王女様はそれには答えず、柔らかく微笑みハンカチを差し出しました。


 そのハンカチには皇子様からもらったサクラの花を象った刺繍がされていました。

 その刺繍はその日の午前中にずっと王女様が作っていたものでした。


 驚く皇子様に王女様は、もう皇子様に会えないことを告げました。


 困惑を隠せない皇子様でしたが、王女様が凛とした様子でいるので、ただ静かにわかった、と答えました。


 そして、せめてこれを受け取って欲しい、と王女様にハンカチを差し出しました。


 そのハンカチには中心が黄色く花びらが白い花が刺繍されていました。

 その花はタチバナという、貴女にどうしてももらって欲しいと皇子様は言いました。

 王女様はありがとうございます、と受け取りました。


 そのまま2人は別れました。


 その日の夜、王女様はメイド達にも別れを告げ、1人で城を出ました。

 涙を拭くその手には白い花のあしらわれたハンカチを手にしていました。


 その後、皇子様は2番目の王女様と結婚しました。


 そして、王女様の行方は誰も分からないのでした。

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