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第三章 ―リズ―

新キャラ登場です。

 赤毛の青年、リズは美人局の罪でこの町に入れられた。

 仲間の女はどこに行ったのやら、まったく見当もつかない。

 正直、リズにとってあの女は単なる商売仲間でしかなかったし、彼女が今どこにいるなんて、自分には関係ないことと割り切っている。

 リズたち、ハートのドックタグを付けられた罪人が行うことは“より多くの異性を惚れさせること”。

 ハートの町には囚人以外の“カモ”の人間が何人もいる。

 一体何処からつれてきたのやら……、その人々の“出所”を知る者は少ない。

 自分からこの町に入ってきたという物好きもいる。

 この囚人収容の町から出るには条件を満たし、国王直々に無罪にしてもらわねばならない。

 囚人収容の町は、トランプのスートにちなんで4つのブロックに分けられる。

 基本的にどのブロックの異性を口説いても良いというのがこの町のルールだ

 もし、オトすことが出来たら、相手からハート型のカードを渡される、

 その数で何人惚れさせたかを競う。

 まるでホストのようだと思いながらも、リズは案外うまくやっていた。

 もともと、こうやって人を騙す生活をしてきた。

 異性をオトすなんて事なんでもない。


 その日、リズはスペードの町を歩いていた。

 すると、前方に見覚えのある男女の影。

「お!ユダ!!」

 軽い調子で声をかけると、ユダは一瞬だけこちらを見ると、ぷいとまたそっぽを向いてしまった。

 ユダの隣を歩く青年、颯生はさっきから無視を決め込んでいる。

「つれねーなぁ。 同じ時期にこの町に入れられた同期ってヤツなのによう」

「時期は同じでも君と僕のやることは違う。 とっととうせろ。」

 ユダに絡もうと腕を伸ばすが、あっさりユダ本人に振り払われ、冷たい視線に「うせろ」という言葉。

 普通の人なら此処で諦めるが、リズはしつこいぐらいに彼女の周りをうろうろした。

「まあまあ、そんなにコワいカオしないで、オレと話さな……」

「死んでください!」

 ガン

 再度ユダに絡み付こうとすると頭上から拳骨が降ってきた。

 先ほどまで面白くなさそうに成り行きを見守っていた颯生だ。

 キッとリズをにらみつけるは、まるで夜叉のごとき憤怒の表情。いつもは怒りや悲しみといった感情は表に出さない颯生だが、ユダが関わっている時だけは別だ。

 まるで別人のように感情を露わにする。

「消えてください、むしろ死んでください。貴方がいると迷惑です。」

 一息にそう言った颯生の横でユダは小さく頷く。

 その様子に颯生が一瞬ホッとしたような顔をしたのをリズは見逃さなかった。

「ははぁ~ん。なるほどね。 大事な主様がどっか別の人間の方へ行くのが嫌なんだぁ~。」

「な、なにを!?」

「つまりは、嫉妬していたわけだろ? ユダを取られたくなくって。」

「うぅ……。」

 それきり、颯生は黙ってしまった。

 その様子にユダは小さくため息をつくと、口を開く。

「まったく、こんなバカな男の口車にのせられおって……。」

「バカは侵害だなぁ~」

 絡み付こうとするリズにけりを入れてから、ユダは続ける。

「心配するな、嫉妬しなくても僕はこんな男になんかなびかん。」

「お、お嬢!」

 なにやらきらきらとした瞳で颯生はユダを見つめる

 が、

「今はそうでも何れ本気にさせてやるからなぁ!」

 めげないリズにまた颯生は不機嫌になった。

「オレはユダのコト狙ってんの。アンタ、邪魔しないでくれる?」

 なおも近づこうとするリズを颯生は遠ざけた。

「ねぇ?忠犬クン?」

 リズは颯生のことを皮肉って「忠犬」と呼んでいる。

 バカにしたような呼び方に不快になった颯生は間髪無くリズに蹴りを入れようとしたが寸でのところでよけられた。

「おっと、忠犬クン。 そんなにご主人様取られたくない?」

「当たり前です。 むしろ近づいてほしくないんですよ。貴方のような輩には。」

「へぇ~、忠犬クン。 もしかして、ユダのコト好きなのぉ~?」

 その言葉にポンと音を立てて颯生の顔が赤くなった。

「な、ななな何を言い出しやがるのです??!!」

「ははっ、おっもしれぇ~、図星なのか?」

 けらけらとからかうように笑うリズに、しかし颯生は反論できなかった。

 見かねたユダは何を思ったのか、すっと颯生の腕に自らの腕を絡めた。

「は?ユダ??」

「お、お嬢??」

 二人の目が同時にユダに集中する。

「もし、僕とコイツが恋仲だとしたら、どうする?」

 妙に|婀娜≪あだ≫っぽい、艶めかしい笑みを浮かべながら、ユダは問う。

「え?もしかして、そういう関係?」

「そうだ、と言ったら?」

「……心も、身体も??」

「とっくにまぐわいあっているとしたら?」

 クスリと口元に浮かべた笑みと、そこから出される性的な言葉になんだか聞いているこっちが恥ずかしくなったリズは、苦笑いを浮かべ立ち去った。

 ふう、とリズが立ち去った後、息をついてユダは颯生から離れた。

「え、えっと、今のは??」

「狂言だ。あいつをうまく騙すための、な。」

「そ、そうですか。」

 落胆した。

 もちろん体の関係なんてないし、恋人同士になった覚えも無い。……そうなってほしい、と願ったことは何度もあるが。

 わかっている、事なのだ。

 ただ、意思を持ち、実体化して人形ひとがたと成すことはできても、自分は剣で彼女はその主。叶うことのない思いだと分かってはいたが、少しだけでも自分の方へ彼女の想いがあったのなら……。

「……と、言ったらどうする?」

 ユダの言葉に思考が中断される。

 彼女は一体なんと言った?

 その言葉の意味は??

 ぽかんと間抜けた顔で口を開いている颯生にユダは行くぞ、と手を差し伸べた。

「え、えっと、お嬢? どういうこと、ですか?」

「さあな、自分で考えろ。」

 すっと差し伸べた手を引き、ユダは腕を組む。

「さっさと行くぞ。いつまで待たせる気だ?」

 空が紅い所為か、逆光でよく見えない彼女の顔がわずかながら、赤らんでいるような気がした。

 叶わない思いと分かっていたけど。

 叶う時が来るかもしれない。

「ハイ!お嬢!」

 いつもと同じように颯生はユダの横に並んで歩いた。


 一方その頃―――

「あ~~、もうっ……くそ!!」

 リズは顔をゆがめ、その場にへたり込んだ。

「全然勝ち目ないじゃないか……。」

 ポツリとつぶやく。

 数年前までリズは城の使用人として働いていた。

 その時に出会った皇女と、その妹。

 儚げながらも、凛とした姿の“彼女”にリズは恋をした。

 彼女はその時のことなんて覚えていないが、リズは今でもはっきり思い出せる。

 あの日、リズが城を出る5日前、エールという少女が死んだと、国中に知れ渡る前までは



新キャラ リズくん登場です。

なんというか、彼は動かしやすいキャラなんで好きです。

絶対幸せハッピーENDになる気はしないのですがね。

彼の恋は実りそうにないです。


一応このあたりから少しだけ恋愛要素ありです。

書きやすいんですけど、書いているの恥ずかしいため、あまり出せる自信は無いのですが…

     ごめんよリズくん

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