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第四章 エールと守護(ナッシュ)と……

「やっほー! ユダ!!」

 元気良く声をかけると、黒白の髪を持つ人物の煩わしげな二つの目線。

「また、貴方ですか。」

 ため息混じりに言うは、銀髪の青年、颯生。

「ほうっておけ。」

 黒髪の少女ユダは、すっとリズから視線をそらす。

「冷たいことを言うなって。」

「消えろ、殺すぞ。」

 射るような視線を向けられ、リズはひっと顔を引きつらせる。

「(流石に、連続2日はまずかったかなぁ)」

 ユダの眼は本気だ。

「颯生。」

「はい!お嬢!!」

 涼やかなユダの声に、従順な颯生の声が答える。

 シュウゥゥゥと淡い光に包まれ、現れた剣、颯生の切っ先をリズに向ける。

「死ね。」

「え、いや……べつのタグ持っている奴は殺しても意味が無いんじゃ……。」

「だからといって殺してはだめというルールも無い。 煩わしいのは嫌いだ。」

「で、でも、無意味に人を殺して後味悪くなったりとかは……」

「しないな。」

 キッパリと否定した

「君など居ないほうが世のためだ。 無意味なんかではないしな。」

「いや、ひどくない?それ??」

「全然」

 言うが早いか首元を刃が掠めた。

 直撃しなかったのはとっさに避けたからで……

 それはつまり避けなかったら、首と胴がはれていたという事で……

 首と胴が離れるという事はつまり……

 そこまで考えてサァーっと顔が青ざめた。

 ―――ユダのヤツ、本気だ。

 直感でそう思った。

 逃げようにも、情けないことに腰が砕けて無理。

「(ええ!?オレ絶体絶命!!??)」

 剣を構えるユダが本気で悪魔に見えた。

「(ええい!こうなったら一か八か……!)」

 すう、と息を吸って、一つの言葉をつむぐ

「エール」

 その言葉にユダは一瞬固まる。

『お、お嬢』

 リズには聞こえないが、颯生も切羽詰った声を上げた。

「エール=レイ=ラザレンユ。 アリア=レイ=ラザレンユ皇女の双子の妹で数年前に病死した、とされている。」

「……。」

「ユダ、お前のことなんだろう?」

 ユダは目を見開いた。

「何故、それを?」

「調べたから。 後オレも昔は城に居たんだぜ?」

 お前は覚えちゃいないかもしんねえけど、といってリズは笑った。

「その入れ替わりに、皇女の影武者となる“少年”ナッシュが皇女の護衛になった。 これも、お前のことだろう?」

「……そこまで、知っているとは……。……弁解はしない。続けてくれ。……おまえの知っていることを話してほしい。」

「……オレの知っていろことはこのくらいさ。どうして、わざわざ死んだことにしたんだ? どうしてわざわざ男の振りをして……」

「僕は、」

 辛そうに顔をゆがめ、ユダは話す。

「僕は、アリアを……姉さんを守りたかったんだ。……でも、女である僕には剣は持たせてもらえない。王族であるとするなら、なおさらだ。……だから、身分を棄て、女であることを棄て、僕はアリアを守るために闘った。……そして、アリアも婚約者が出来て、最初は嫌がったけど、義兄になる人はとてもいい人で、アリアも幸せならそれでいいと、僕は二人の幸せを願ったんだ。でも……」

 ユダは言葉を区切った。

「僕がこの町に入れられる前、悪夢は起こった。 この町を作り、Aliceなんてばかげたゲームを造った大臣、ジークフリート=リンドブラード。 そいつが義兄を殺したんだ。 そして心を病んだ姉は幽閉され、ヤツはそれを良い事に、無理やりアリアと挙式をあげ、まんまと王の座に着いた。 僕はその時アリアを助けに行ったが、多勢に無勢、簡単につかまって今に至るというわけさ。」

 過去の自分を嘲るようにユダは笑った。

 いつの間にか|人形≪ひとがた≫をとっていた颯生は苦しそうに顔をゆがめるとユダにかわって続きを話した。

「でも、俺達はそれを好機と取りました。たとえ、反乱者をまとめて殺すための罠だとしても……。無罪となる時、俺たちは王に謁見を許される。 その時に……!!」

 なるほど、とリズは思った。

 ユダや颯生の抱えている大きな闇を見たような気がした。

「そうか、」

 つぶやくとリズは背を向け、言った。

「……言っても止めないだろうからオレは止めないぜ。だがな……」

 そこで区切ると、リズは振り返り、あろうことかユダの頬に口付けた。

「死ぬなよ。……アンタに心底惚れちまった男の願いだ。」

 言うとどこか上機嫌で、リズは去っていった。


「な、なあ、颯生。」

「なんですか?」

「僕に口説いていたのって……、今まで早くこの町を出るための戯言だと思っていたが……。」

「……?」

「本気、だったのか?」

 顔を紅くして言うユダに颯生は内心ため息を吐きたい気持ちに襲われた。

「(この人、鈍いんですよね~、こういうの。 今までいろんな男性女性に言い寄られていても、まったく気付かなかったんだもんなぁ)」

 はあ、と思わず口からため息が漏れた。

「お嬢、そういう事は俺に聞かないでください。」

「どうして?」

「俺は剣です。人の心のことなんてよく知りません。」

「……?」

 ユダは首をかしげた

「(颯生、もしかして、怒っている?? どうしてだ?)」

 考えても答えは出なかった









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