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迷惑異世界のんびり道中記~ちびっ子勇者とともに~  作者: 沢野 りお
イルブロンの街にて

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古城とドラキュラ ⑥

意外にもブランたちの食事風景は、シルビオさんたちに冷静に受け止められた。え、なんで?


「アオイやキッカのスキルに比べたら、従魔が食事をした程度、驚かん」


むしゃりとスパイスを塗して焼いた鶏型魔物の肉を齧るシルビオさんに、うんうんと頷いて同意する美女二人。そんな、まさか。


「別にこれぐらいは……」


「冒険者してたら不思議なことなんて山ほどあるわよ。まだ、解明されてない新種の魔物もいるらしいし……」


「えー……」


兄の生活魔法にはあんなにびっくりしたくせに、ブランたちのことはスルー。どうも、毛糸の塊から実体化するぐらいの不思議生物なら食べ物ぐらい消化できるだろうとのこと。

未知の魔法に常識は通じないは、異世界の合言葉。ちなみに未知の魔法とは「手芸創作」スキルのことである。


「ほら、ご飯を食べ終わったら、地下に行くために中ボスを倒すわよ。キッカとサクラでトドメを刺すんだからしっかりしなさい」


オリビアさん? そんなご予定は初耳ですか?


「菊華ちゃん。ちゃんと食べましょう。逃げ足に体力は大事よ」


姉の助言に「間違ってはいない」と思い、私はもう一つサンドイッチを手に取るのだった。























セーフティーエリアでの昼食を終え、食休みもそこそこに出発となってしまった。


「まだ、デザート食べてない」


中ボスとご対面したくない私は、ウダウダと文句を言い立ち上がろうとしない。だって、怖いじゃない。人狼……あれ? 狼男だったけ? そんなのと戦うのよ? まだ、瀕死状態のコウモリにナイフをプスッと刺すほうがマシです。


「ほら、菊華。いくらここがセーフティーエリアでも、みんなに置いていかれて一人になったら怖いだろう?」


兄が私の腕を取り無理やり立たせようとする。嫌だい! 行かないし行きたくないよー。


「あら、キッカ。ここは魔物は来なくても悪人は来るわよ? なにせ、ダンジョン内だったら死体はダンジョンが吸収して証拠隠滅できるもの」


オリビアさんは笑顔でえげつないことを言って、私の魔法鞄を見つめる。


ごくり。


これは、もしかして私の魔法鞄目当てに強盗が来るとの暗示? ひいいぃぃっ、残っても地獄、進んでも地獄だよう。


「わ、わかりました。行きます、行きますよっ。行けばいいんでしょ!」


私はやけくそな気分で怒鳴り、よっこいしょっと立ち上がった。


「んじゃ、玉座へと行こうか」


シルビオさん曰く、中ボスが出現するのは地下への隠し階段がある玉座に冒険者が近寄ったときらしい。……怖いなぁ。


「んじゃ、先頭は初撃が遅いアオイな」


「うええぇぇっ!」


兄、びっくり。そりゃそうだ。ここまで、私たちの前を歩いていた兄ではあるが、中ボスとの戦闘が百パーセント確定している場所への初めの一歩を譲られたら動揺するでしょう。間違いなく、狼男に攻撃されるもんね。


「葵さん、大丈夫ですか?」


小次郎が眉を垂らした顔で兄を見上げると、兄はブンブンと頭を勢いよく左右に振る。


「ダメ! 絶対にダメ! 来ると思っていても攻撃なんか躱せない!」


断言するか……。いや、橘家一同、狼男の最初の攻撃で全滅だな。トドメも刺せるかどうか、不安である。


「アオイ。お前は初撃が遅い。それは攻撃を躊躇っているからだ。ティトの攻撃魔法が苦手という弱点と共通している。それを克服するには、数多くの戦闘を経験し、魔物に対する認識を変えろ」


「……んぐっ」


シルビオさんにピシャリと言われて兄は唇を噛んで悶えている。流れ弾に被弾したティトさんも、ずううぅぅんと落ち込んだ。話しながらセーフティーエリアを抜ければ、たちまちに魔物が私たちに襲ってくる。


「ガウッ!」


兄の代わりにとブランが吠え、フォレスが上から急降下してブラッドウルフたちに反撃する。小次郎も聖剣を振り回してウルフを倒していく。うん、子どもの小次郎のほうが強いわ。


「せめてレオンさんをフォローに……」


兄は往生際悪くシルビオさんに訴えているけど、シルビオさんは首を縦に振らない。そりゃそうでしょ。


「アオイ、大丈夫だって。怪我してもサクラに治してもらえばいいじゃない」


カルラさんの軽い口調に、兄は珍しくキッと目を吊り上げる。


「サクラは擦り傷切り傷の軽傷しか治せないんです!」


「そんな、もう少し治せるわよっ。ちょっとレベルが上がったって言ったでしょ」


姉の抗議も無視である。まぁ、中ボスの狼男に一人で突っ込んでいけと命じられたら、兄みたいに必死に回避しようと思うだろう。


「うるさいっ。いいから、中ボス戦はアオイが初撃で前衛。同じく小次郎とぬいぐるみたちもだ。レオン、アオイのフォロー。ティトはアオイの初撃に合わせて魔法で攻撃。味方に当てないように気をつけろ」


「ひゃいっ」


哀れティトさん。ブルブルと震え、歩くのに右足と右手が一緒に出ている。


「キッカとサクラは私が護衛します」


オリビアさんがにっこり笑うと、カルラさんは悪戯っ子のように笑う。


「よっしゃ! じゃあ私は雑魚を片付けるよ」


「……少しはサクラたちにも獲物を分けてやれ」


いいえ、いいえ、結構です!


すみません……、ストックがなくなりました。

手首負傷も重なり、しばらく更新できません。

申し訳ございません……お休みします。

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