9話 人里を見つけよう
昨日は愚かにもユニオ1体で人里を探させるという効率の悪い行いをしてしまったが、今日は違う。
操り人形など精霊6体でいくらでも作れるのだから、6体の精霊をまとめて1組にして外に飛ばしまくればいい。
幸い「魔法陣出るだけトレーニング」によって召喚できる数はかなり増え、50組くらいなら余裕を持って展開できる。
精霊自体は鳥くらいの速さで空を移動できるし、なんとなくの意思伝達も可能。
光精がいれば視覚的に情報を確認できるのだから、最初からこうすればよかったのだ。
くっそ。考えるだに昨日は無駄だった。
......ユニオの試運転と考えるしかないか。
実は操り人形の複数同時操作は難易度が高いという知見も得られていたから、前向きに考える他ない。
そんなこんなで、50組の精霊を展開して1時間、人里を見つけた。
直線的に移動できる空中移動はやはり最強か。
マジで昨日はなんだったんだ。
人里と言っても、里というかちゃんと街と呼べる規模だ。
空中から見ると、街の中心に大きな聖堂っぽい建物があり、司祭っぽい格好の人がたくさん歩いているから、宗教色の強い街なのだろうか。
万神殿の関係者だったら、そのうち見にきてくれる気がして大変助かるのだが...。
戦々恐々精霊を街に近づけ、人に精霊が見えるものか確認すると、幸いにも知覚できる人はいないようだった。
やはり精霊を見るのには何か条件があるらしい。
精霊が意思を持って情報収集できればよかったのだが、あいにく精霊はそこまで便利じゃないので、自分で情報を集める必要があった。
俺は聖徳太子じゃないので10人相手に情報収集はできない。
地道に情報を集める必要がある。
まずは危険を冒さず話の盗み聞きをしよう。
最低限この世界の情報を集めないと、ユニオが怪しまれて人形だとバレるかもしれない。
命の危険はないが、警戒されると面倒だ。
慎重に行こう。
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1日かかってしまった。
だが、ユニオを投入しても問題ない程度には情報が集まった。
まず、言葉は理解できる。
聞き取れる。読める。
文字は違うが、異世界転移特典的な奴だろう。
考えるだけ無駄なアレだ。素直に神に感謝しておこう。
知ってる神様のおかげかは知らないが、一旦元日本の学生らしく天神様かな。
ありがとう、菅原さん。
そして、街の名前もわかった。
スタッツというらしい。
案の定宗教系の都市で、スタリオンという戦神を信仰しているらしい。
万神殿はスタリオンに関係ないのか、あまり情報は得られなかった。
スキル、ステータスは認知されているようだが、あまりにも自然に利用しているのか特に情報を得られなかった。
話にもほとんど出さないからとても困った。
魔法は高等技術のようで、市井の人相手では情報が集まらず、教会の人間を観察するしかなかった。
人の治療を行う場所があり、魔法らしきもので治療していた。多分光精と同種のものだろう。
普通に治療していた怪我の度合いが光精<5>相当だから、俺の精霊が使う魔法はそんなに強力じゃないのかもしれない。
だが一方で、教会にも精霊を知覚できる人はいない様子だったので、精霊は魔法とは完全に別系統の可能性があり、「精霊召喚」は異世界転移特典の特別なスキルなのかもしれない。
まだ確たることは言えないが、珍しいのは確実だろう。
よかった。
寄る辺のない異世界人にとってなんらかの特別な力がないというのは、死を意味するからな。
やや安心だ。
動けないという問題はまだ解決していないがな。
次回からようやく異世界の人間と接触します。