ハーピーの集落
久しぶりに日曜の昼投稿
翌朝、俺は長のところまで訪れた。
正確にいうと客人が来たときに迎えるための建物で待っている。
ハーピー族の家は全て木の上にできているので他種族の客が来たときに迎え入れるための建物を一軒地上に作った。
俺は勝手に座布団を倉庫から引っ張り出して座った。結構前に作ったものだからぼろぼろだな。
この建物はパーピー族たちが天井から降りてくるためぽっかりと穴が空いている。そこから差し込んでくる木漏れ日に当たりながら森の匂いを全身で感じることができるため、お気に入りの場所だ。
ポカポカと太陽に当たっているとだんだん眠くなり、うつらうつらと船を漕ぎ始めた頃だった。
「遅くなりましたのぉ」
大きな翼を仰ぎながら長老が降りてきた。
「お久しぶりです。子供の時以来ですかね?」
「そうだのぉ。わしが子供の頃に遊んでもらった時以来じゃ。もう千年も経つというのにアストラの姿は変わらんのう」
「あの暴れん坊だった子供が今や部族の族長とは。時の流れは早いものです」
「それはお前さんだけじゃろ。流石に千年のわしの人生、短いとは思わん。それとその話し方はよせ。背中が痒くなる」
「わかったよ。それでゴウから聞いたんだけど冬を越えるには物資が少し足りないそうじゃないか。」
俺は少し前まで魔都に滞在していたこと、そして魔王ゴウに言われたことなどを伝えた。
「全くその通りだ。ゴウ様も今までの魔王様も皆我々のことを気にかけておられる。しかし辺境の土地に住む我々に大掛かりな援助は難しいのだ」
雪も降り積もるこの地域では冬にできることがないので冬が来るまでになんとか貯めなければいけない。
今年は自分たちが育てた植物が蟲の影響でかなりの数やられたらしい。
「蟲?あぁ。あいつらに襲われたのか。それは災難だったな」
「我々も応戦したが怪我人が続出してしまってな。これ以上はやむを得ないと思い、持てる量だけ持たせて避難させた。今までの備蓄はあるがそれで冬を越えられるか怪しかったところだ。危険は承知だが皆で山を越えるかどうかすら考えていた」
「大変だったな。とりあえず俺に欲しいものをどんどん言ってくれ。」
「その気持ちはとてもありがたいのだが我々はアストラに払えるお金を持ち合わせていないぞ」
「そんなものはいらない。ここは俺にも思い出のある場所だ。なくなってしまうのは困る」
それに昨日金になりそうな物がこの集落にもあることが判明した。うまくいけばガッツリ稼げる。だから今金は要らない。
もちろんスカーレットとの思い出の地でもあるためという俺の言葉は本当だ。
「そういえばカルローズをあんまり持って来れていないけどいいか?」
カルローズ
穀物の一種
豊富な栄養が売りだが味が他の穀物に比べて良いとは思えない。
風に強い、ベタつきが少ないなどの特徴がある
ハーピー族が育てる穀物はカルローズと言われる穀物だ。
この地域はかなり風が強くおまけにさまざまな方向から吹き付けてくるため防ぐのが困難である。
そのため風に強いカルローズは栽培に向いている。カルローズの欠点は成長にかなり太陽光を必要とすることだが山の斜面に作ることでその問題を解決している。
ベタつきが少ないという特徴もハーピー族には都合がいい。なぜなら羽にくっつくことが少ないからだ。
「構わん。羽にくっつこうが飢えに比べたらマシよ」