ナイトデパート
大学生になり一人暮らしの引越しでゴタゴタして投稿するのを忘れてました。ごめんなさい
外から見た時は市場が明るすぎて気付かなかったが、この街には三つの巨大な建物があった。
どれも他の建物とは一線をかくす大きさをしていた。
まるでそれぞれが自分の力を誇示しているようだ。
そして俺はそのうちのひとつに連れて行かれた。
「おかえりなさいませ!ボス!!」
大勢のいかついスーツ姿の男たちと黒を基調にしたメイド服を着ているメイドさんたち大勢に出迎えられた。
びしっと揃えられたお辞儀は壮観だった。一瞬の狂いもない。
「おう。変わりはないか?」
「一つお話があるのですが、そちらの方は?」
ボスの声に答えたのは挨拶をしていた集団で一番前に並んでいた老人だった。
真っ直ぐに伸びた背筋は老いを全く感じさせない。
その老人が俺を怪訝な目で見ていた。
「構わない。こいつは俺の客だ。」
「はっ。どうやら我々の武器庫の2人がでエルフにやられたそうなのですが、そちらの方でしょうか?」
「そうだ。ちょっとした行き違いが起きただけだ。問題ない。他には?」
「他にはございません」
そう言って去っていった。
それにしても連絡届くの早いな。けっこうすぐここに連れてこられたと思っていたんだが。
その後俺は特に何も起きることなくボスについていった。
「今から誰も通すな」
「「はっ!」」
連れてこられたのは建物の最上階の奥にある豪華な扉の前だった。
そこに警備としてたっていた2人にそう言って俺は中に連れられた。
「おお!いい景色だな!!」
壁一面が窓で覆われているため賑わっている市場がよく見える。
やはり上から見下ろして改めて実感したが、この市場健全な賑わいではないな。ところどころよからぬことが起こってそうな場所がプンプンする。
具体的にいうと大通りから少し外れた真っ暗なところとか。そういう場所がポツポツとある。
あと一箇所だけぼやっと明るいところとか。なんでそこだけ店が空いているんだろうか。
「だろう?自慢の景色だ。こんな景色を見ていると全てがちっぽけに感じる。」
「それで?どうしてここに?」
「お前さん、商人って自分で言ったよな?」
「おう。俺はいろんなところを旅する商人だ」
「そんなあんたと取引がしたいんだ」
「いいぞ。何が望みなんだ?」
そう聞くとボスは魔法を使った。これは音漏れを防ぐ魔法だな。
わざわざそんなことをしてまで秘密にしたいことか?
「さて、俺の望みの前に俺がお前に渡せるものを言おう。
まずここナイトデパートのこと。どういう土地なのかとか、どこが近い街なのかとか。
もう一つははここでしか取れないものだ」
「それって普通に街に持って入れるやつ?」
「それもあるぞ」
こわいな。持っていたら街に入れないものとかいらないんだが。
しかし、この街の情報と特産だけか?
「少なくないか?」
「そんなことないと思うが。まぁ気に入らないなら話はここまでだ。
ただ、ここから出ても平穏にここナイトデパートで過ごせるとは思わないぜ」
「おいおい、また俺にお前らが手を出すのか?」
「まさか。」
ふむ。よくわからない。
なぜこの建物から出たのに平穏に過ごせないのか?
いちいち騒ぎを起こされるのも面倒だな。
「わかった。物はようが済んでからでもいいが、ここについては先に教えてくれよ?」
「構わない」
「それで、欲しい物は?」
「護衛だ」
「いいだろう」
その程度朝飯前だな。
「命の危険があるぞ?」
「あいにく、そういうのは感じたことがなくてね。」
交渉成立となったところでここナイトデパートのことについて教えてもらった。
まず成り立ちから。
700年ほど前にここで栄えた都市があったらしい。
全てが黄金でできていると言っても過言ではなく、金と銀で溢れかえっていた。
なぜなら近くに金山と銀山さらには宝石の原石が埋まっている山が数え切れないほどあったからだ。
それらを掘り出し他の国に売り出すことで莫大な利益を得ていた。
あまりにも余ってしまい王の気まぐれで他の国に金をばら撒きに行くこともあった。
そんなにあると他の国から襲撃を受けることもあったが、その国は軍隊もめちゃくちゃ統率が取れていて強かった。
なので財産目当てで侵略しようものなら多額の賠償金を支払うことになるのだ。
しかし強力な軍隊と膨大な財産を持っていた都市が一夜にして砂の中に埋もれてしまった。
かつて人々が住んでいた家や膨大な財宝をそのまま。
700年後にそのお宝を見つけ出したのが、犯罪を犯し国から逃げていた男だった。
その後も男はここでお宝を見つけ大金持ちになった。
そのことを聞きつけた人は誰もがお宝を探そうと思っていた。
しかし、通称死の砂漠と言われているデザスターデザートの近くにある。
普通の人ならば、命の危険とお宝による利益を比べて諦めるが、お宝を探しに行く人もいた。
多くは犯罪者など、過去に暗い歴史を持つ人が多かった。
多くは道半ばで倒れることの方が多いが、偶然にもたどりつく人たちがいた。
常に命の危険と向き合いながらお宝を掘り出して、栄えた街。
それがナイトデパートだ。