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79: ベールで遮られる聲

魂力で変質・変形させた爪で異形達を切り裂いていく。

手応えはあまり感じない。

異形は倒されると、物理魔法で作られたものがマナに戻るのと同じように、空間に溶けていくようなやられ方をする。

見かけは確実に肉の塊っぽいのに、倒れた瞬間、そこにそんな存在は居なかったかの様に霧散する。

まるで、RPGゲームの雑魚敵を蹂躙しているような感覚。


≪異形、そこまでやっかいな存在じゃないね。仄葉のお父さんがいうほど手を焼かずにサクサク倒せていると思うけど≫


そうだね。

私もそうだけど、周りのみんなもそんなに苦戦しているようには見えない。

一対一か、多くても三対一でやり合って倒している。

でも、倒せてるだけ。

勢いは止まってない。

耐久戦を強いられてる。


≪確かに。ここまでサクサク倒されてたら相手の親玉も撤退を視野に入れて良さそうな気はするよね。かれこれ30分は倒し続けてる。≫


うん。

倉庫からもちょくちょく人が出てきてて、戦場に復帰しているけど、戦況は全くと言っていいほど変化してないからね。


『宮椋博士より、全体に向けて連絡です。自衛軍が応援に駆けつけるようです。遊撃部隊を含む飛行能力をもつメンバーは軍機に誤射しない様、少し気を付けて防衛線を続けてください。現在、宮椋研究室の一部メンバーは異形の発生源と周辺の被害情報を集めている様です。』


おお、軍が応援に!?

それは期待が出来る!


・・・


もしかしたら本当は私を倒すために準備されていた部隊かもしれない。

異形殲滅の手伝いといいつつ、私を攻撃しに来る、なんてことはないと思いたい。


ともかく、いまお父さん達が調べてくれているこいつらの出所を、軍の皆さまが破壊してくれる、そんなイメージを持っている。


!!


視界に機械の鳥が映る。


軍用機だ!

流石の速度で近くの基地から颯爽と来てくれたらしい。

3機も来ている。


2機は同じ姿、1機は違う姿だが、軍用機の種類に関する知識は私にはない。


そして、それらは私たちのいる高度よりはるか上の方で旋回している。

多分、お父さんたちと連絡を取っているのだろう。


私はそんな様子を傍目にしながら、余裕で異形を捌いている。


うん、やはり、単体の力からは絶望を感じるほどの恐怖は感じない。

いつ終わるのか、そこに多少の恐怖はある。

今は魂力という要所要所でしか消費しない力だけの運用で倒せている。

悪魔となって体力が無限な今、魔法を使わないと対処できない状況にならなければ、私は問題ない。

でも、このままでは、全体の戦力は落ちるばかりで、戦線が崩壊するのも時間の問題。


もともと私と既に戦闘していたメンバーは既に消耗しているところに、この異形との耐久戦が始まってしまった。

一応、戦争学部から借りている重機達も今問題なく動いているとはいえ、それも砲弾とかの備品が無くなれば、戦力外になる。


戦闘機はまだ上空で旋回している。

そしていつの間にか、ヘリコプターも来ていて、戦闘機の旋回円の中心でホバリングしている。

自衛軍に状況が伝わっていないのか、研究室の皆さんがまだ異形の発生源を突き止められていないのか、何が別の問題があるのか。


一向に戦闘機達が動く気配はなく、私も周りのメンバーも変わらず、いや、周りのメンバーは少しずつ戦闘持久力を削られつつ、大して変わらない状況が続く。


ねえ、以津真天、以津真天の能力で何か分かったことある?


≪うん、なにも分からないことは分かったよ。≫


??

どういうこと?


≪えっとね、魂がないの。≫


???

ど、どういうこと???


≪普通の生き物なら魂がないと存在できないはずなんだ。私たち悪魔も基本魂だけの存在とはいえ、魂はあるから。でも、それがない。だから、少なくとも普通の生き物ではない。ということは何もわからなくない?≫


なるほど?

それは確かに何も分からないということは分かる、というしかないよね、、、、


普通じゃないから倒されると空間に溶けるということならそこは納得できちゃうけど。


だからどう、ってことは何もない。


そして、このままだと皆が戦闘出来なくなった瞬間にすべてが崩壊する。

私も力に余裕があるうちに発生源とかの情報探索に参加した方が良さそう。

このまま異形を一定位置から倒し続けるだけじゃ何も変わらない。


陽田さんには一方入れておかないと。


『陽田さん、お父さん達に言伝をお願い。』

『はいよ!』

『私はまだ魔法じゃなくて、悪魔由来の力、魂力っていう、継続的に消費されない力を使って戦闘をしてて、余力があるから、異形を倒しつつ私も発生源の探索をします。』

『了解!伝えておくよ。気を付けてね。』

『ありがとう。』


よし、これで少しでも早くこの騒動を終わらせて、新しい日常を始めよう。


さて。


“翼面積拡大”

“爪バルディッシュ化”


これで、大きく前進しつつ、一気に異形を蹴散らそう。


≪すっかり魂力の扱いも慣れたよね。流石だよ。≫


いやいや、先生の教え方が良かったからですよ、っと。


明らかにデカくて強そうなヤツがお出ましかな?


今目の前に居るのは、クマにハチの翅の巨大版が付いた謎の生き物。


強そうなクマ手を振り下ろしてくるけど、避けるのは簡単。

普段の私ならともかく、裏人格が動きをサポートしてくれるおかげで、最強な気分。

サクッと胸部に爪バルディッシュを振り回して、空間におさらばしてもらう。


明らかに、探されるのを拒むようにクマハチ?が登場した。


これは探すべきだ。


とりあえず、異形がこの街、稲崎台、にどれくらいどんな感じでいるか、それを把握したい。

異形に魂がない以上、以津真天の力を使うことが出来ない。

軍の方が上空からすでに把握して、お父さんたちに伝えている可能性もあるけど、情報共有がないあたり、単純な話じゃないことは想像がつく。


強めの異形も魂力だけで薙ぎ伏せながら可能な限りのスピードで徘徊すること数分。


異形がこの戦場付近にしかいないことが分かる。

市街地で進行している異形はいるけれど、それの幅はそんなにない。


そして、異形がどこから来ているかは分からない。


まるで、地面か無から生まれているかのように、無限にうじゃうじゃ湧いてくる。

一定のポイントから湧いているというより、一定の戦線で描く円、もしくは、その円から成る半球面から侵入してくる、そんなイメージ。

わたしが球から出ることは叶わなかった。

わたしが飛んだ分、球にたんこぶが出来るかのように、わたしから一定の距離の面から強めの異形たちはわたしに襲い掛かってきた。

だから多分、球から出ようとすればするほど、強い異形がわたしを襲いに来るのだろう。

つまり、私たちは異形と戦い続けるしかない、という状況が作られている、そんな風に感じる。


そして、自衛軍の戦闘機やらヘリコプターやらはその範囲に含まれていなく、戦闘機などが得意とする、広範囲高威力な殲滅がそもそも不可能であること。

市街地は壊されずに、異形は戦地に向かうが、根元の集中砲火すら許されない。

戦闘機として出る幕が無さすぎる。

動かないというより、動けない。


異形を派遣している相手は間違いなく意志がある。


≪ねえ、仄葉、なんか嫌な予感するよ≫


え?


あたりを見渡す。


なにも変化は、、、



上空、それも、戦闘機が旋回している高度よりも遥か上空。

もはや、宇宙と思われる場所に、形容しがたい亀裂のようなものが生まれている。


明らかに異形ではない何かがやってくる。

そんな前兆。


『みなさん気を付けてください!上空に新たな異常が確認されました!なるべくグループを作って異形の処理をしつつ、上空からのアクションに気を配れる体制になってください!』


陽田さんからの無線。


地上のみんなも速やかにグループを作っている。


「仄葉!」


この声は。

聞き慣れた声。


「海璃和!」

「今、楓ちゃんからグループを作ってって無線あったから合流しに来たよ。…にしても、仄葉、がっつり悪魔、だね、、、」

「そんな顔しないで、、、私だって戻れるなら戻りたいんだから。」

「そ、そうだよね、ゴメン。でも、元気、なんだよね?」

「う、うん。元気ではある。というか、そういう海璃和こそ、がっつり魔法少女、だけど。おまけに、グリフォン?みたいな生き物に跨っちゃって。」

「え?あぁ、もう慣れちゃった。話すと長くなるけど、私が魔法をしっかり使いたいとき、この姿じゃないとダメなんだよね。グリフォンも魔法を使える生き物で相棒だよ。」

「ま、魔法!?海璃和って異能者、だよね?」

「これも話すと長くなるけど、異能も魔法なんだよ。いろいろ落ち着いたら多分博士が説明してくれる。それより、仄葉はまだ戦えそうなの?」

「異能は魔法、そうなんだ。。。うん、戦うのは悪魔由来の魂力っていうのを使ってるからまだ余力あると思う。」

「そっか、じゃあ異形倒すの任せてもいい?ちょっときつくなってきたんだよ」

「いいよ、じゃあ上空の異常、見てて」

「うん!」



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