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74:重い布で見えない空

まずった。

さっきお父さんと会えたタイミング。

あの時に、「戦いたいわけじゃない」ってひと言えてたら。

用意されていそうな、いや、間違いなく、お父さんは体にマナを集めていた。

考えたくないしあり得ない想像だけど、私を抱くついでに、一緒に自爆する、なんてことを考えてた可能性だってある。

お父さんに限ってあり得ないけど。

ともかく、もっと前向きな言葉が発せてたら・・・。

やりたくもない戦いを終わらせる絶好のタイミングを逃しちゃった。

なんで空に逃げた、私。

私は戦いに来たわけじゃない。

ただ、日常に戻りたいだけ。


でも、今は戦ってる。

ちょっと落ち着いて、状況を考えよう。


まず、みんなのスタンス。

思った以上にみんな好戦的。

特に、倉庫っぽいエリアでひと突き喰らうとは思ってもなかった。

多分、倉庫に居るメンバーは戦場の補助が中心のはず。

ちゃんと私に届いた初めての攻撃が倉庫のメンバーになるのは、多分、みんなもビックリしてるんじゃないかな。

魔法とか、戦車とかじゃなくて、ただの物理的な力。

対して、私の今の戦闘スタイルはかなり消極的。

流石にこれだけでみんなに話し合いたいっていう意図が伝わるとは思ってないけど、、、

いやむしろ、消極的だから積極的に攻撃して今のうちに倒そうみたいな考えで動いてるのかな。

そもそも私と正常に話せるなんて考えてる人のほうが少ないか。

今の姿見て、「仄葉、今話そう」ってなるわけないもんね···


以津真天はどう思う?


≪そうだね、正直、私たちに有効打が与えられてないから手出しの方法が分かってないだけなんじゃ、って気はしてる。今の仄葉は、魔法と魂力で圧倒してるから。実際、攻撃らしい攻撃ってしてないのに、一気に戦力を削った訳じゃん、相手目線に立ったら、『やばいぞ』ってなってても不思議じゃないよ≫


確かに。

私からした攻撃といえば魔素圧して、戦車を無効化しようとしたくらい。

でも、確実に70人くらいを戦闘不能にした。


  どぉぉぉん!!!


え。

ピンク長屋の方面から爆音。

さっき、支柱を爆散させたあたり?

あくまで、ちょっと気をそらして物資的な損傷を与えられたらいいな、と思った、そんな規模の大きくない魔法を打ったつもりだったけど、、、


誘爆、しちゃった?

ヤバいヤバい、以津真天、負傷者とかって分かったりする?


≪ごめん、私の眼の力は基本的に規模を計るのに向いてる力なんだ。感情とか、魂に近い概念の詳細ならまだしも、体の状態までは魂力検知では無理≫


あ、そうだったんだ、了解。


にしても、今更だけど、なんでピンクなの?

どう考えたって目立つ。

戦場で派手な色を使うなんて、ちょっと考えられない。

まして、大事な補給倉に使うなんて、意味が分からない。


≪確かに不思議だけど、今はそこじゃなくない?落ち着いて。

私たち無傷だけど攻撃されてるからね。≫


そ、そうだね、ありがと。


でも、なにもかも気になる。

いやむしろ、この戦いが始まる瞬間から、どれ一つとして何もかもが一致してない、噛み合ってない。

想定も気持ちも現状も意図も方法も。


≪仄葉、落ち着いて、目指してるのは平穏でしょ?

対話は手段でしかないじゃん。

一旦制圧して無理やり話をするでもいいんじゃない?というか、この状態で落ち着いて話せる状況は作れないよ。

戦いたくないのは分かるけど、もう戦火は上がってる。

戦ってるんだよ、私たち。決心して。別に殺すわけじゃないんだよ?

外見はれっきとした悪魔だけど、仄葉の意思はもはや天使超えて神。大丈夫。

身体的にも精神的にも能力的にも不安に思うことない。

作戦も想定も全部だめだったけど、そんなのは些細な事。

うじうじしてると、私たちの想像しないことが沢山起きるかもよ?

今でこそ、お互い激しくない戦いをしてるけど、突然本気出して来たら、持久戦とか言ってられないかもしれない。

悪魔は基本は不死だけど、かなり限定的な条件が揃ったら仄葉だけ死んじゃう。

そうなったら、せっかく仄葉が作ってくれた『悪魔が他の存在を傷つけなくても存在を確保できる構造』は消えちゃうし、私だって仄葉と紡ぐはずだった未来が消えちゃうし、もちろん、今頑張ってる仄葉の気持ちも理想も無駄になっちゃう。≫


う、うん、そうだよね、やらなきゃやられるんだよね、現状は。


≪そう。それで、ちょっと分かったことがあるの。相手にも、私たちと似たような存在がいる。≫


えっ?

つまり、悪魔が取り憑いてる子がいるってことっ?


≪そう。もし、仄葉が望むなら交信を持ちかけてみようと思うけど。どうする?≫


・・・


いまは、そこまで切羽詰まってないから、奥の手としては候補に入れたい、かな。

もちろんそれだけで、状況が一気に良くなる、とは全然思ってないけど、直接言葉を伝えられる可能性があるなら・・・。

そもそも相手の悪魔さんが以津真天の持ちかけに応答してくれない可能性もあるからなんとも言えないけど。


≪まあ、応答してくれないは全然ある。でも、候補には入れるんだね、了解。≫


なにか準備とか必要?


≪いや、それは必要な、、!!!、、仄葉、飛んでくるよ!!!!攻撃意志複数!!!!!≫


!?

魔力探知!


後ろだっ!


楯出す!


間に合っ


 ガィィィン



硬い装備同士がぶつかり、鈍い音が響く。


「仄葉!大丈夫!?すぐ助けるからね!!!」


この声は海璃和!?

あまりに、魔法少女過ぎる姿。

目線を上げると、翠と碧のオッドアイの強く美しい意思の視線と絡まり合う。

姿は魔法少女だけど、武器は何やら不思議な剣。

いや、刀?

とにかく近接武器で一気に、、、

っていうかここかなりの上空だけど!?


なにか後ろで飛んでる。

少なくとも悪魔じゃない。


あまりに急な接近戦で、あまりに急な知った声、あまりに知りすぎているその瞳。

急展開すぎる!

助けるからね、って何?!

私たち戦ってたんじゃないの?

どういうことっ、剣、重い!


っ!!


お、重いっ。


 ギンッ


くっ


≪仄葉、戦いながら聞いて。今戦っている子から2つの魂を感じる。でも悪魔じゃない。他にもいる。≫


情報ありがと、、、、ほんの少しだけ裏人格の出力上げることできる?


海漓和の剣と


 ジリジリッ


と楯と擦り合う。


≪了解。ほんの少しね…≫


・・・


≪OK≫


ん。

戦闘狂になったような感覚はない。

でもそれでいい。


必死に海璃和の重い剣を楯で受け流す。

少し、海璃和の動きが見切れるようになった、気がする。


脳内に広がる魔力検知魔法のレーダー図は、新たに私の背後の存在を描画する。


速い。

しかも複数。


持ってる楯をコピペの感覚で魔法的に増やして、身体の周りに浮遊させる。


パパパパっと楯に衝撃を与えられる。

音以上のダメージが楯にはいってひび割れる。


魔力の弾?


!!


ヤバい地上からバカデカ魔法くる!!


海漓和が離れてく?!

化蛇の権能じゃ間に合わない、避け―













「うっ、、、」


視界がホワイトアウトから少しずつ戻って来る。

単純な破壊的エネルギーも凄いけど、光になってるエネルギーもえぐい。

眼に回復魔法を掛ける。


裏人格は私の身体にぴったりとあう人型防御壁を張ってたみたい。

超技巧魔法過ぎる···

なかったら致命傷でアウトだったかもしれないってこと?

流石にオドの負担がエグい、相当消耗させられた。


強い魔法だ、それしかわからないくらいの威力。·

もしかしたら一人の魔法じゃない···?!


≪仄葉!!上!!!≫


えっ?!

急に現れた?!


また剣っ?!

まだ眼がチカチカしてて良く相手の顔が見えない。

でも見覚えのあるようなシルエット···


?!


ヤバい、相当魔力乗ってる!!


魂力で身体の定義、超固く、魔法で身体強化!!楯に耐久性付与ッッッッ!


 バギィィィン


た、楯割れた?!


ぅぅ、ぉ、重い、落とされるっ!!


「ゔ」











「がっ」


一瞬視界が暗くなる。

背中が痛い。

私は地面に落ちている。


≪仄葉、右に避けて!!!≫


!!!

重力みぎっ


ギ、ギリギリ…


≪危ないっ、な、ナイス···?≫


以津真天がなにかに困惑している。


顔を少し上げる。


視界の下端でうねる大きな影。


見上げると、視界を覆うのはスライムの牢屋。

灯紫川さんだ。


?!


手足が拘束されたっ。


バランス崩れて、地面とキスする。


この繊細な魔法は雪凪ちゃんだ。

あれから相当レベルアップしたんだね雪凪ちゃん、全く気づけなかった。

しかも繊細なのに強力。

ちっとも手足が動かせる気がしない。

全く見えないけど、身じろぎすらままならないということは簀巻きにされちゃってるかな。

魔法なら切っても意味ないだろうし、、、

やってくれるね・・・


そして。

スライム牢屋が体積を縮めている。

多分私を捕獲しようとしてる。


連携がすごい。

もしかして、2Aから結構メンバー参加してる・・・?


それよりも、これはチャンスかもしれない。


捕らえるつもりがあるなら、積極的な攻撃はないはず。

あまり消耗したくないけど、今度こそチャンスを逃さない。

半径1km球空間に重力1.3倍付与!

1.3倍は単に身体が重くなるだけじゃない。

動かなくても、臓器系に影響があるはず。


私を絡めてる見えない糸も私を覆おうとしてるスライムも身震いした。

2人にも確実に重力がかかったということ。

でも2人の力は解けない。


2人とも戦闘タイプの力じゃないはずなのに、すごい。


≪いや、感心してる場合じゃないよ!どうするの?この状態で。≫


裏人格、出力上げて。

なんか、誰かが強い魔法準備してる予感する。


≪!!分かった、一気に上げると意識飛ぶから段階的にやるよ。最大でも仄葉が侵食されない程度でやるからね≫


うん、お願い・・・


ん?しょ、正面?!


≪え、魔力検知に何か引っかかった?まって、今もちょっとずつ裏人格出力上げてるから。≫


うん。


···


来るっ!


『Σ※』

?!

何した私今、


・・・


局所防御魔法で魔法跳ね返した?!

しかも、反射させた魔法がスライム壁で消滅するようにマナの分解までした?!


≪ごめん調整、上げ、すぎちゃった、、、い、いつもの仄葉、だよね、、?≫


う、うん、でも飛びそうだった、かも?


≪よかった、、とりあえず、一旦上げるのやめる。そんなに上げたつもりなかったんだけど、、、ごめん≫


結果オーライ、かも···?

もしかしたら急所だったかもだし。


にしても今の、裏人格ちゃん、戦闘センス凄、、、

多分、以津真天の調整ミスじゃないかも・・・

ある程度上げると、もう半分自分で自分じゃない状態なのかもね。

裏人格のせいにしちゃったけど、実質私の本能での脊髄反射みたいなものじゃない?

気にしなくていいよ。


≪ならいいけど、でも実際意識飛びそうだったなら良くはないよ。ただの暴走女になっちゃうから≫


暴走女は確かに嫌だね、、、


っていうか、何この空気、一気に緊張感増した。


今は強いマナも感じない。


以津真天は何か強い攻撃意志感じる?


≪ううん、感じない。≫


そっか、な、なら、今なら話合いできるかな、以津真天、ちょっと交信してみて、、、


≪わかったやってみる。一番伝えたいのは?≫


···


伝えたいこと。


そんなのは考えるまでもない。


戦いに来たわけじゃないってことと、

こんな姿になっちゃって、もう元の姿には戻れないけど、咲たちとまた普通に暮らしたいってこと、話し合い出来るならこの魔法を解くこと、


そして、咲たちが、好きだってこと。


かな。


≪オッケー。仄葉の感情、全部伝わるように丁寧に交信することに集中するから、裏人格ちゃんと防御頑張って。≫


うん。


とはいえ、この張り詰め方は、ついさっきまでのつっつき合いが夢だったかのような変わり様。


お互いに死を覚悟した、そんな張り詰め方。


少しでも動こうものなら、それが次の戦闘フェーズの合図になりそう。


もし、誰かを治癒することで、戦闘の意思がないことを伝えられるなら今すぐやりたい。


でも、治癒魔法もデバフ魔法も対象者の直視なしには流石に無理がある。

負傷者の検知すら。

もし、オドそのものがとても疲弊したりしているなら、わかる可能性もあるけれど、それは負傷と関係ない。


以津真天お願い、交信、成功させて!!!


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