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あなたの一度の口づけで、どうにか生きてる私の話  作者: 桜井ゆきな


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「真琴っ!!」

振り向いた先生は私を見て驚きの声をあげた。

だけどすぐに優しい笑顔で言ってくれた。

「会いに来てくれたのね。」

その顔は、私がいつもどの瞬間ももう一度会いたくてたまらなかった、だけど、先生が私を捨てたんじゃないかという恐怖でどうしても会いに来れなかった、愛しい愛しい先生の昔のままの優しい笑顔そのものだった。

「先生。‥‥‥私、先生をずっと、信じていられなくて‥‥‥。私‥‥‥。」

「あのビラについて真琴は何にも悪くない。だからせめて山田先生の発言を撤回させたかった。

あんなひどいことをする犯人も探したけれど、どちらも私には力不足で‥‥‥。

学校にいられなくなってしまったのは本当だけど、真琴に何も言えずに、そうね、逃げてしまったの。

真琴が私を疑っていることに気付いて、真琴と向き合うことから逃げてしまった。

本当にごめんなさい。」

「先生は何にも悪くないです。私が勝手に先生を疑って、私が先生から逃げたんです。

それでも私が今日まで生きてこれたのは、先生がいてくれたから。先生の残してくれたものがとても暖かかったから。だから、私は生きていられました。先生、ありがとう。たとえ間違いだったとしても、先生と過ごせてとても幸せでした。」

「真琴、私たちの関係はまちがいなんかじゃなかったわ。」

「先生!私は、たとえ間違いだって良かったんです!間違いだって先生を好きでした!」

「真琴といるときは、いつもとても幸せだったの。そんなに幸せなのに間違いなはずないでしょう?」

先生は、私がたまらなく愛した優しい顔をして言ってくれた。

そうか。間違いなんかじゃなかったんだ。

私も幸せだった。先生と一緒だといつもどの瞬間も幸せだった。

そうか、そんなに幸せなのに間違いなはずなかったんだ。

先生は私をまた救ってくれた。

私の生きてきた人生は、先生とのことは、何も恥ずかしいことなんてない。

私は、先生を見つめた。

先生も、私を見つめてくれた。

3年間なんて一瞬だ。

私の気持ちはきっと全部伝わったし、先生からの愛情も確かに感じられた。

私はきっと、これから一歩踏み出せるだろう。


カランカラン。


その時、入り口のベルが鳴って、私は龍だと思って振り向いた。

だけどそこにいた人は、私の想像をはるかに越えていた。

「お父さんっ。」

それは驚きのあまり思わずではあったけど、私は十何年かぶりに父をお父さんと呼んだ。


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