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第二十一話『交渉と戦闘』

『名取か...名取は確か、そこだ。地図を送っておく、そこに居るはずだ。』

「ありがとうございます。

『では、私は忙しいのでこれで』

「お忙しいところありがとうございました。失礼します。」


 電話が切れる。その五秒後くらいにメールが届いた。仕事が早い。そこには地図が乗っていた。その地図には能力研究所という怪しげな場所が示されていた。俺の予想通り電車に乗った方が速い距離だろう。

 しばらく走り駅に着く。丁寧なことにどの電車に乗れば良いかも表示されている。改札にスマホをかざし、電車に乗る。


 電車に揺られて十五分、ようやく目的の駅に着いた。この駅からさらに徒歩十分の場所に能力研究所がある。まだ見たことのない街、見たことのない機械など一つ一つ見ていたら日が暮れてしまうだろう。薄暗く細い道を歩いていると妙に綺麗な建物を見つけた。この薄暗い中この建物だけが明るく光っていて異彩を放っている。かなり高く広い建物だ。七階はあるだろう。俺の目の前にある壁には表札の如く能力研究所と書かれた札が貼ってある。防衛省の看板を横にしたようなものだ。

ドアはもちろん自動ドアで特に何もなく入ることができた。中に入ると一般のビルの様な構造で正面に受付があったのでそこで色々聞いてみることにした。


「すみません。第五高校の者です。名取飛鳥さんってどこに居るか教えてもらっていいですか?」

「名取飛鳥さんですね。少々お待ち下さい。」


そう言うと受付の人はパソコンにカタカタ何かを打ち込む。


「お名前をおたずねしてもよろしいでしょうか。」

「辻見望です。」


俺の名前を聞きまた何かをカタカタとパソコンに打ち込む。ツターンとエンターキーを押し3秒ほど待って画面を確認して言った。


「三階の一番奥になります。エレベーターがあちらにありますのでよろしければご利用ください。」

「ありがとうございます。」


そう言って俺はエレベーターに乗り、三階の一番奥に進む。その場所まで来てノックをしようと思ったら自動ドアが開いた。白衣を纏った長身の男性が俺を見ている。


「名取飛鳥さんに用があって来ました。少しお時間よろしいでしょうか?」

「丁度この検査で今日は終わりだからもう少しまってくれるかな。急ぎなら構わないけど。」

「急ぎという訳ではないので大丈夫です。」


パッと見たところ名取先輩の姿は見えない。この部屋には幾つかのモニターがあった。そのモニターのうち1番大きなモニターに名取先輩の姿があった。他のモニターには俺には理解できないグラフが並んでいる。


「あの、今は何を?」

「今は名取くんの能力の状態をみているんだよ。仮想世界での戦闘でね。」


名取先輩はあの能力で影しかないような人間の形をしたものと戦っている。ということは俺の入って来たドアとは別にある奥のドアで名取先輩は仮想世界と繋がっているのだろう。


『計測終了。戦闘プログラムを終了します。』


アナウンスが流れ大きなモニターが真っ暗になる。しばらくするとドアが開き、気だるげな様子の名取先輩が出てくる。


「お疲れ様、名取君。今回も能力値はあがっていたけど大きな変化はないね。あ、それと君にお客さんだ。」

「確か君はアクシズの時の...」

「今は第五高校の生徒、辻見望です。今日は名取先輩にお願いがあってきました。」

「お願い?」

「実は......」


名取先輩に斯々然々(かくかくしかじか)説明をする。最後まで聞くと名取先輩はこう言った。


「なるほど。一応聞くがなんで俺を協力させられると思ったんだ?」


この質問がくることは想定内。きちんと答えも用意してある。


「言い方が悪いかもしれませんが、今回は先輩を釣るための餌があったからです。今、俺達が戦おうとしている組織はまだ(おおやけ)にされていません。これを無力化させることができれば中々の功績になると思います。これだけでは足りませんか?」


これこそ俺の作戦。名取先輩には功績、俺達には戦力とお互いウィンウィンな関係になることができるのだ。


「いや、十分だ。協力しよう。やっぱり君

は判断力に長けてるな。」

「ありがとうございます。」


なんとか戦力の確保を成功。思ったよりあっけなかったが。何よりこれでこっちの戦力はかなり上がるだろう。名取先輩にはアクシズの件もあり感謝してもしきれないな。


「作戦の決行はいつ頃だ?」

「今週一杯は協力者の募集、来週は作戦会議と武器調達、来週の週末が決行の予定です。」

「わかった。来週の週末だな。」


それから連絡先を交換し、用は済んだので帰ろうと最後の挨拶をする。


「何かあったら連絡します。今日はありがとうございました。」

「おう。」

「ちょっと待った。」


ドアの前まで来て帰ろうとした瞬間、あの長身の白衣の人に止められた。


「君、第五高校ってことは能力持ちだろう。どんな能力なんだ?」

「能力名はカーディナルメイク、自分の血で物を作る能力です。」

「カーディナルメイク......これから少し検査を受けてくれないかな?10分くらいで終わるから。」

「はい。わかりました。」

「ありがとう。じゃあ向こうのドアから仮想世界に入って戦闘してもらいます。」


言われるがままに別室に入る。そこには仮想世界に入るためのあの機械があった。

出たなMRI...そのMRIから仮想世界に入る。今回は武器なしだ。


『戦闘プログラム起動。計測開始。』


そのアナウンスと共に真っ黒な人の形をしたものが出てくる。虚空人間とでも名付けるか。虚空人間はよく見ると剣を持っている。対して俺は何も持っていない。こういう時のために鋭く尖らせていた右手親指の爪で左腕に傷をつくる。傷から血が出てきたのを確認し、右手でその傷に触れる。能力を発動し短いナイフを作る。この血の量だとこの大きさが限界だ。とにかく様子見としてこの装備で立ち向かう。

 剣術は真ん中レベルの実力だろう。普通のスペシャリスト東尾と良い勝負になるだろう。だがこのリーチの短いナイフでは攻撃を弾くので精一杯だ。手数を増やすため一旦虚空人間から距離をとる。ナイフで左腕をもう一度切る。剣一本作れるほどの血の量を確保し、ナイフを一本作る。そして残りの血でナイフを二本作る。これだけ血を使っていればいつ倒れてもおかしくはない。早く決着をつけないと。という焦りが自分の中で生まれてくるのが分かった。普段だったら作ったものを直接手から出すが、俺の能力カーディナルメイクは体の何処からでも出すことができる。勢いをつけて放出すればそれなりに威力は出るもう一つの攻撃手段となるのだ。


「ナイフ放出待機ツヴァイ」


作ってから出すまで最大一時間の間待機させておくことができる。よって今の俺は両手にナイフ一本ずつ、体内にナイフを二本待機させた状態になっている。これは第五高校に通い模擬戦を重ねることで身に着いた技だ。ちなみにツヴァイというのはドイツ語で二を表す。

 形勢逆転し虚空人間との勝負は現在俺の優勢となっている。ナイフの短さからなる速さと小回りの良さで虚空人間の腕を切り落とした。虚空人間は意外と脆い。すると切り落とした虚空人間の腕が沸騰したかのようにブクブクと音をたて腕が再生する。腕だけでなく、剣まで作り出した。しかも二本。完全に俺の能力の上位互換じゃないですかこれ。再生能力付きとはなんて豪華な。

 相手は再生するなら再生が追い付かないほどの一撃を打ち込めば良い。両方の剣で同時に切りかかって来たところを両手のナイフで弾くと思わせ後ろに飛び回避する。虚空人間の両手が下がったところで待機状態のナイフを放出する。直線に飛ばしたところで相手に刺さるだけ、一か八かやったことのない技を試す。


「ナイフ回転放出ツヴァイ!!」


俺の両肩から縦に回転する二本のナイフが勢い良く飛び出す。そのナイフは狙い通り虚空人間の両腕を切り落とした。虚空人間が再生しているうちに俺は限界まで距離をとる。そして行き場のなくなる一本のナイフを投げつけ、もう一本のナイフで左腕をさらに切る。ナイフを右手から左手に持ち替え、右手で傷に触れ、能力を発動する。作ったのは手榴弾だ。それと大きめの盾も作った。この手榴弾を虚空人間に向けて投げる!そしてすぐさま盾で身を隠す。爆発音と共に虚空人間が分裂する。勝ったのか....?再生する気配はない。そしてアナウンスが流れる。


『計測終了。戦闘プログラムを終了します。』


次に目を開いた時には元の世界に戻っていた。この部屋から出てあの長身白衣の男性がいる部屋に戻る。


「はじめて見た能力だ。この能力は鍛えればエンチャントもできるし、頑張れば進化だって!!」


もう専門用語が飛び交っている。半分くらい理解できていないような気もするが要はまだ伸びしろがあるということだろう。いつの間にか名取先輩は居なくなっていた。


「辻見君、君も定期的に検査に来てくれ。私は河辺信彦(かわべのぶひこ)だ。よろしく。」

「よろしくおねがいします?」


なんだかよく分からないが定期的にこの施設に検査に行かなくてはならなくなった。まぁ悪いことではなさそうだしいいか。更なる力を手に入れることができるかもしれない。

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