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第十九話『決心』

 俺がショッピングモール改めアクシズに到着した時には既に唯美と幸嗣が居た。こんな時間しかも屋上となれば人は言うまでもなく俺達以外誰も居ない。ここアクシズの屋上は誰でも入れるようになっていて、アクシズで買ったものを屋上でそのまま食べられるようテーブルやら椅子やらが設置されている。その一番奥に唯美と幸嗣は居た。


「望が来たか。あとは夏海だけか。遅いな。」

「仕方ないだろ。夏海は鈴に言い訳するとか誤魔化したりして鈴を連れてこないように出かけなきゃいけないんだからな。それなりに時間はかかるだろう。」


屋上に設置されているのは初めて見たが自動販売機があったのでホットコーヒーを買った。体も冷えていたので丁度良い。缶の蓋を開け、椅子に座りコーヒーを飲む。ここは屋上、しかもこのショッピングモールは五階まである。この屋上からはいつも暮らしている街を一望できる。

 景色を眺めながらコーヒーを半分くらい飲んだところでドアが開く音がした。ドアから夏海が出てきた。


「ごっめーん。遅くなっちゃった。」


時刻は十八時五分。五分しか遅刻していないし事情が事情なので仕方ないだろう。俺はコーヒーの残り半分を一気に飲む。


「夏海もきたということで本題に入るか。」

「なんで鈴ちゃん連れて来ちゃ駄目だったの?」


夏海がただ純粋な疑問を問いかけてくる。この様子だと疑ってもいないようだ。


「それは話を聞けば分かる。今日ここに呼んだのは、鈴が敵、アルカナである可能性がある事だ。」


俺がそう言うと三人は硬直する。言葉も出ないように。


「な、何言ってんの?そんなわけないじゃん。」


最初に硬直から抜け出し、発言したのは夏海だった。この二日間鈴と一番関わって来た夏海が反論する。その声は震えていて、涙目になりながらもそう言った。ここまで理解が早いということは一度はそう考えてしまったのだろうか。俺だって夏海のこんな顔は見たくない。だが鈴によって全滅なんて未来はもっと見たくない。ここは心を鬼にして夏海に、この場に居る全員に伝える。


「俺がそう思った根拠は三つある。一つ目、これも可能性の話だが七森鈴の姉、七森文が現実にそもそも存在していない。俺達は七森文の存在があったことを確認できていない。二つ目、何故文だけが誘拐された?誘拐するなら本命が文だったとしても、後処理が楽になる、この年から教育すればかなり戦える、鈴を誘拐するメリットは十分にある。なのに何故アルカナは誘拐しなかった?」

「それは......」


夏海が反論するように言う。だがその後に続く言葉はなかった。そして俺は最も有力的である第三の根拠を発表する。


「そして三つ目。何故、アルカナは鈴の能力を知っていて一人では何もできない鈴にわざわざメールを送った?」


仮に鈴の能力を事前に知っていたとしても先に鈴を誘拐するなどの手段があっただろう。そしてあのメールから戦力を求めているということは誰にでも分かるだろう。だがアルカナには完全に証拠も残さず、安全に戦力を獲得できる手段がある。では何故アルカナがリスクを負ってまでその手段に(こだわ)る理由は何か。答えは簡単だ。アルカナの完全犯罪は元から存在せず、七森文という人物も最初から存在していなかったのだ。だから俺達を(だま)し戦力として引きずり込む必要があったのだ。

確かに前は


「ここからは俺の推測なんだが、この塔が見つかりネットにあがったのは一週間前、そして今年の四月から五月にかけて能力高校の生徒数名行方不明になっている。ちなみにそこから先は行方不明の記録はない。どういう事か分かるか?」

「四月から五月の間に記憶改竄の能力を持った生徒を誘拐し、戦力にしたということか?」


なんて会話をしていたがこれは俺の推測でしかない。つまり五月から今まで単純に誘拐をしていないとしたら、全ての辻褄が合う。最初から記憶改竄の能力を持った奴も、七森文も存在していなかった。これが完全に正解だとしたら俺達は今アルカナが張った蜘蛛の巣に自ら飛び込もうとしているのだ。


「でも、鈴ちゃんは本当に辛そうな顔してた!あれは嘘じゃない!!」

「まぁあくまでも可能性の話だ。少しは注意してくれって話だ。鈴を信じたいなら俺は構わない。」


何故だろう。別に俺は悪いことはしていない筈なのに、罪悪感が湧き上がってくる。いや、これは罪悪感ではない。まるで心が乾くように感情が無くなっていき、代わりに何とも言えない感情湧き上がってくる。その感情をグッと心の奥に押し込み、話を再開する。


「ここまで聞いてもまだ、鈴を助けようと思えるか?」

「私は助ける。誰が何と言おうと、一人でも助ける。絶対に。」

「俺も助けたい。夏海を一人で行かせる訳にもいかないしな。」

「私も鈴ちゃんを助けたいです。やらずに後悔するよりやって後悔した方が良いと思います。」

「鈴のために命を懸けられるということだな。」

「うん。」


どうしてここまで他人に感情移入し、命を懸けてまで助けたいと思えるのだろうか。俺には分からない。でも彼らには借りがある。俺は借りはしっかり返さないと気が済まないタイプだ。


「それなら俺も全力で協力しよう。」


全員の決心はついた。ここから俺達とアルカナとの全面戦争が始まる。こちらは四人敵は未知数、明らかに戦力が足りないので彼らの力を借りるとしよう。

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