31.バロウの過去2
バロウの過去編です。これで終わります!
「お前さ、俺と一緒に居て楽しいわけ?」
バロウがイリヤと友達になってから1ヶ月が経過した。バロウとイリヤの関係は、バロウからしてみれば何も問題なかった。
「う、うん。」
イリヤは自分からバロウに話しかけてくる事はなく、バロウの話を聞いて返事をしたり頷くだけだった。バロウが誰かの悪口を言っても「そうなんだ」と頷くだけで、一緒に悪口を言う事もなければ否定される事もなかった。
「…あのさ、俺以外に友達を作ろうとは思わないのか?」
嫌味でも親切心でもなく、バロウはただ疑問に思って聞いてみた。
「…っ。」
イリヤは何故か気不味そうな顔をして黙り込んでしまった。
「…はーぁ。」
バロウはイリヤに呆れたような、つまらないといった様子で溜息を吐いた。
「…出来ないの。」
「は?」
イリヤの声が小さすぎて聞き取れず、バロウは片手を自身の耳に添えて聞こえなかったとアピールした。
「っ、わ、私、友達が出来ないの…皆に嫌われちゃってるから。」
イリヤは涙目になって答えた。
「はぁ? どういう事だよ。」
「っ、バ、バロウ君のお父さんは、私のせいで死んだって…み、皆言うから…。」
「…。」
イリヤの言葉に、今度はバロウが黙り込んでしまった。イリヤのせいで父親が死んだのは間違いではない。だが、バロウは別にイリヤを責めようだなんて思った事はなかった。
「…そりゃあ、大変だな。」
「っ…。」
だからと言って、別にイリヤを庇おうとも思えなかったバロウは面倒臭そうな顔でそう言った。イリヤは何も言ってこなかったが、バロウをチラッと見た後に俯いてしまった…。
そんなある日、バロウは孤児院の奉仕活動で村の草取りに参加した…いや、参加させられた。奉仕活動は孤児院にいる子供達は全員参加しなければならず、バロウは嫌がったが院長に引っ張られて仕方がなかった。
他の子供達が真面目に草むしりする中、バロウは1人で少し離れた所に移動してサボっていた。院長はバロウの態度に思う事はありそうだが、他の子達の様子も見なければならない為か今のところ注意して来ない。
「早く終わんねぇかな…ん?」
バロウが退屈そうにしていると、バロウの視界に見知った後ろ姿が入ってきた。
「…イリヤ?」
イリヤの後ろ姿と、イリヤに何かを言っている同い年くらいの男と女が3人居た。
「…。」
何となく気になったバロウは、イリヤ達の所に近づいて行った。
「よくのうのうと外を歩けるよな?」
「アンタのせいでさ、1人死んでるって分かってるの?」
「可哀そうだよな…その人。」
「…。」
どうやら火事の件でイリヤは責められているようだ。イリヤは何も言い返せないせず、震えている様子だ。
「前も聞いたけどさ、あんなに家が燃えちゃう前に外に出られなかった訳?」
「…わ、私、ね、寝ちゃってたから。」
「いや、普通気が付くだろう? どんだけ鈍いんだよ!」
「…。」
バロウはイリヤ達の様子を見て、イリヤが言っていた“友達が出来ない”という実態について理解した。イリヤに非があってもなくても、1人を複数で責めるというのはバロウも良い気持ちがしなかった。
バロウは嫌な気持ちで胸が一杯になる前に、この場から離れようと思って後ろを向いた。
「あーあ、死んじゃったおじさんの息子…バロウだっけ? 可哀想になぁ〜。」
「本当にね。あんなに素敵なお父さんを失ってしまうなんて…どれだけ辛い思いをしているのかしら?」
「おじさんとバロウに、申し訳無いって思ってるのかよ?」
「…おい。」
だが、勝手にバロウを同情する言葉を言い、父親を素敵だと褒めた言葉が癇に障ってしまい、気が付くとバロウは声を出してしまっていた。
「っ…、バロウ君!」
3人は誰だ、というような顔でバロウを見ていたが、イリヤが目を丸くしてバロウの名前を呼んだ事で、とても驚いた顔をした。
「…お前等うるせぇよ、勝手に俺の事を喋ってんじゃねぇ!」
「なっ!?」
バロウからの罵倒に、3人は目を見開いた後にバロウを睨み付けた。
「な、何よ! 私達は貴方と貴方のお父さんの為に言ってあげてるのに…。」
「頼んでねぇよ。それに、俺にはお前等がソイツを虐める為に火事の事をネタにしているとしか思えねぇけどな?」
「っ、なんだと!」
「ふんっ。」
憤ってくる3人を、バロウは鼻で笑った。そして、イリヤの方を見た。
「…親父は勝手に助けに行ったんだ。そんで勝手に燃え尽きた、自業自得だ。それなのに好き勝手言われて、お前も気の毒にな?」
「えっ?」
「なっ、じ、自分の父親の事をそんな風に言うだなんて…。」
バロウの発言に、イリヤだけでなくて3人も絶句してしまう。
「バロウ! 一体何をしているのっ!?」
バロウ達の様子に気がついた院長が大声を出してやって来た。
「…別に、話をしていただけだ。」
「イリヤちゃんと…貴方達は?」
「…い、行こうぜ!」
院長に声をかけられた3人は気不味そうな様子を見せると、そのままその場を去ってしまった。
「全く…バロウ、帰りますよ!」
「おい、腕掴むんじゃねぇよ…おい!」
院長はバロウの腕を掴んで歩き出した。バロウは院長に文句を言うのに必死で、イリヤの事を忘れてしまった。
この出来事を例の3人は自分達にとって都合が良いようにバロウの悪口を広めたのだろう。“父親とは違い性格が悪い”、“心配してあげたのに悪口を言われた”等とあっという間に広まってしまった。
孤児院で浮いているバロウを庇う存在はおらず、バロウも否定しなかった為、バロウの評判は悪いものとして広まっていった。
イリヤとイリヤの母親は何時の間にか、村から姿を消していた。何の挨拶もなく居なくなった事にバロウは正直驚いた。村に居辛かったから居なくなったのだろうなとは思うが、それならもっと早く引っ越せば良かったのではないかとこの時は思った。
後になって、イリヤ達は被害者の息子であるバロウと友人となる事で悪い印象を無くそうとした。イリヤが悪口を言われたら友達であるバロウに庇ってもらう事で事なきを得ようとしたのではないか、とバロウは考えたが真相は分からない…。
その後、バロウは成長して孤児院を出た。孤児院を出た後は好き放題するようになった。人の気持ちは考えずに思った事を口にし、悪口は当たり前。人助けなんかせずに放置し、文句を言われれば言い返す。
『人助けはとても気分が良いんだぞ、バロウ』
『いいかバロウ、人を傷付けるような行為や悪口を言ってはいけない。分かったな?』
かつて父親に言われた事と反対の事を行い、“嫌われ者のバロウ”として村で有名になった。そんなバロウを更生させようと喧嘩を売ってくる者もいたが、バロウは誰かに教わった訳では無いのに喧嘩が強くて誰も敵わなかった…。
「そんなムカつく奴、死んじまえば良いと思わねぇか?」
村の外からやって来た女の中にはバロウの事が気になって、言い寄ってくる事があった。バロウが村人達を罵倒しても本心はどうであれ頷いていた女達だが、バロウが相手の死を望む言葉を笑いながら言うと皆表情を引き攣らせて離れていった。
「…ふん、どいつもこいつも一緒だな。」
バロウはショックだとは思わなかったが、心の何処かで自分と同じような考えを持つ誰かを求めていたのだろう。自分から離れていく姿に失望した。
誰も助けず、悪口を言って害を与える。そんな人間が好かれる筈はないとバロウも分かっていた。けれど父親のような偽善者になるのは御免だった。
「…つーか俺、そもそも誰かを愛するとか出来んのか?」
バロウは別に結婚願望がある訳ではない。ふと思って言葉にしただけだ。
「…ま、どうでも良いか。」
バロウは自分自身に失笑した。1人で居るのが苦痛なわけじゃない。バロウを嫌う人達がバロウの言葉で悔しそうに、嫌そうな顔をするのは気分が良かったりもする。このまま生涯を終えても問題はなかった。
「…。」
…ただ、少しだけつまらないなと思う気持ちが、バロウの心の片隅にあっただけだった。
バロウの過去編でした。父親の出来事をきっかけにバロウは捻くれました。しかしバロウの元々の性格も、善良ではない存在という設定にしたかったのでこんな性格にしました。イリヤは気弱な性格で、クズではないけれど、打算的な理由でバロウと友達になったりという、現実で一番居そうなキャラにしてみました 笑 最後は結果的にバロウに庇って貰ったにも関わらず、父親の死を自業自得だと言ったバロウに引いてしまった…という感じです。
次はアリーとバロウのその後の話を書いて、終わりにしようと思います!
ここまで読んで頂き、本当に有難うございました!




