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初めまして、私は勇者の…。【連載版】  作者: 徒然草


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27.勇者とお姫様4

 アスランのその後の続きです。


「何を、言って…。」


 アンジェリカの主張に、アスランは表情を引き攣らせた。アンジェリカはそんなアスランの様子に気が付かないのかにこやかに話し続ける。


「アスラン様のような方が、こんな村で平凡な生活を送るだなんて絶対にあり得ませんよ。アスラン様は私と共に王家の一員として優雅に暮らすのです。」


「こんな村って…ここは俺が生まれ育った故郷の村ですよ!?」


 アスランは自分が生まれた村を侮辱されて口を挟んだ。しかしアンジェリカは気に留めない。


「何より、アスラン様が他の女と結ばれるだなんて…赦される事ではありません!」


「っ、俺の意見を聞いて下さい! どうしてそんな事を言うのですかっ!?」


 自分の主張ばかりでアスランの意見を聞こうとしないアンジェリカに、アスランはとうとう怒鳴り返してしまった。


「だって、アスラン様に相応しくありませんもの。」


 だがアンジェリカは怒鳴り声を気にするどころか、微笑みながら返答した。


「…“相応しくない”?」


 アスランがアンジェリカの言葉を繰り返すと、アンジェリカは頷いた。


「平凡な生活に平凡な女、そんなモノが世界を救った勇者様に相応しいと思えますか? 勇者様には相応しい地位と権力、そして相応しい女性が…私が傍に居るべきです。」


「っ、…。」


 アンジェリカが何度も言う“相応しい”と言う言葉に、『バロウなんかがアリーに相応しい筈がない』というアスランが何度も思い続け、アリーにも言った言葉が頭の中を過った…。


「…でも、私がアスラン様に想いを寄せた時にはリリアン様がアスラン様の隣に居ました。リリアン様はアスラン様と同じように、命を懸けて魔王と闘って下さった素晴らしいお方です。だから私、リリアン様がお相手なら仕方がないと諦めたのですよ。」


「っ…。」


 リリアンが相手だったからアンジェリカは諦めた…。それはつまり、リリアン以外の誰かをアスランが好きになってしまったら…。


「…うふふっ。」


 アンジェリカは可愛らしく微笑んだが、アスランはその笑みに悪寒が走った。


「どうしてそんな事をするんだ。そんな事を言われて…!」


 アンジェリカを好きになると思っているのかと、アスランは言葉を続けようとした。


「私がそれだけアスラン様の事を考えているという事です。でも、それだけではありません。」


「…どういう事ですか?」


 怒りを向けようとしたアスランだったが、アンジェリカが今までの笑顔を消して、真剣な表情になった事で勢いを無くしてしまった。


「大国から遠いこの村で過ごされていたアスラン様は知らないと思いますが、今の王妃であり私のお母様であるルビアは数年前までは側妃だったのです。」


「側妃…?」


 アスランはルビアの顔を思い出しながら少し驚いた顔をした。


「そして、バーランドとルビアとの間に生まれた子供は私だけです。」


「えっ…、た、確かジェラルド…という名前の王子がいるとバーランド王は言っておりましたよね?」


 用事があって来れなかったという事で、アスラン達が会えなかった存在。そしてバーランド王はアスランに、“アンジェリカと結婚したら義兄となるジェラルドを支えて欲しい”と言っていた事をアスランは覚えていた。


「はい。ジェラルドお兄様は私の異母兄です。ジェラルドお兄様の母親は、前王妃様なのです。前王妃様は数年前に病気でお亡くなりになりました…。」


「…そ、そうなのですか。」


「ジェラルドお兄様からしてみれば、お母様も私も面白い存在ではないと思うのは当然ですよね。」


「えっと…。」


 悲しげな笑みを浮かべるアンジェリカに、アスランは何と答えれば良いのか分からなかった。


「お母様はお兄様に冷たい態度を取った事なんてありませんし、私もお兄様の事を家族として大切に想っております。でも…。」

 

「…ジェラルド王子は、アンジェリカ王女に冷たいのですか?」


 言葉を濁したアンジェリカに、アスランが心配しながら続きを促すと、アンジェリカは落ち込んでいるような、沈んだ表情をした。


「お兄様はどうやら、前王妃様の死はお母様の仕業だと思っているみたいなのです。」


「えっ!?」


 アスランは目を丸くして驚いた。そんなアスランにアンジェリカは慌てたように首を振った。


「も、勿論お母様はそんな事をしておりません! でも、お兄様は側妃であったお母様が王妃になる為に…そう思っている様子なのです。だから、お母様だけではなくてその娘である私の事も恨んでいるみたいなのです。」


「っ、まさか、命を狙われているのですか!?」


 アスランの言葉に、アンジェリカは泣きそうな表情になった。


「お兄様の立場になって考えてみれば、そう考えてしまう事も分からなくはありません。でも、お母様はそんな事をしていないのに…私も、怖くて…。」


「っ、…その、バーランド王に相談はしたのですか?」


 バーランドとアンジェリカは仲睦まじい親子のように見えたし、ルビアとの仲も良好だとアスランは思った。アンジェリカ達がバーランドに相談したら、何か手を打ってくれる筈だとアスランは思ったのだが…。


「相談なんて出来ません。お父様は私とお母様の言葉を信じてくれないでしょうから…。」


 アンジェリカはすぐに首を振ってしまった。


「お父様は私やお母様よりも、前王妃様との子供であるお兄様の方が大切なんです。“ジェラルドはそんな男ではない”と言って、寧ろ私達が非難されてしまうかもしれません…。」


「そんな…。」


 アスランは何とも言えず、ただアンジェリカの話を聞く事しか出来なかった。アンジェリカの言葉を否定出来るほどバーランド達の事情は理解していないし、アンジェリカを慰める言葉も思い付かなかった。


「お父様が王であるうちは無事に過ごせるかもしれません。でも、ジェラルドお兄様が王になってしまったら、私とお母様がどうなってしまうのかを考えると不安なんです。」


「アンジェリカ王女…。」


 王になったジェラルドが、前王妃の仇討ちとしてアンジェリカとルビアに権力を行使して危害を加えるかもしれないという、アンジェリカの不安を理解したアスランは、先程までアスランの今後の人生を勝手に決めようとしてきた事への怒りを忘れ、心の底からアンジェリカの事を気の毒に思った。


「だからアスラン様、私が次の王位を得られるように協力して欲しいのです。」

 

「…へっ!?」


「ジェラルドお兄様ではなく私が王に…女王になりたいのです。」


 アンジェリカの言葉にアスランは今まで以上に驚いてしまった。今までの話から何故、アンジェリカが女王になりたいという話になるのかが理解出来なかった。


「アスラン様は私達人類を救ってくれました。私達の英雄であり、私はアスラン様の事を平和を齎す象徴だと思っております。」


「へっ!? いや、えっと…。」


 色んな人達からアスランは褒められ、感謝されてきたが“平和を齎す象徴”等と言われた事は初めてだった。褒められているのは分かるが、嬉しさよりも戸惑いの方が大きかった。


「私は、王になる人間が自分の都合で誰かを裁き、排除する事は赦されないと思っております。」


「っ!?」

 

 真剣な眼差しで話すアンジェリカに、アスランは思わず息を呑んだ。


「お兄様は、私とお母様の事が気に入らなくて何かを企んでいる事に間違いはありません。誰だって、気に入らない相手を排除したいと思う気持ちは芽生えますし、仕方がないと理解はしております。でも王になる人間は、私情でそんな事をしてはならないのです! 王は、全ての民を導く存在なのですから…。」

 

「アンジェリカ王女…。」


 今のアンジェリカは、アスランに強い想いを寄せる少女でも、危害を加えられる事に怯えるか弱そうな少女でもなかった。王家の一員、王女としての姿がアスランの目に映った…。


「勿論、ジェラルドお兄様が改心し、自分の都合で私とお母様に危害を加えないと誓ってくだされば私は女王になろうだなんて思いません。でも、このままお兄様が何も変わらないまま王位を継いでしまえば…暴君になってしまう可能性もあるのです。」


「っ! し、しかし…。」


 ジェラルドが気に入らないと思っているのはアンジェリカとルビアだけで、他の人達にも影響はあるのかとアスランは疑問に思った。


「私とお母様に危害を加え終えたら、他の人には手を出さないとは言い切れませんよ。むしろ自分の力で相手を排除する事が一度でも成功してしまったら、今後も同じ手段で気に入らない存在を排除していこうとするものではありませんか?」


「っ…。」


 アンジェリカの言葉をアスランは否定できなかった。


「アスラン様、私とお母様を救う為に力を貸して下さい。魔王を倒し人々救った貴方を慕う者達は大勢おります。そんな貴方が私の伴侶になって下されば、次の王に私を支持する声が増えると思うのです!」


「…。」


 アンジェリカが何故、ここまでアスランとの結婚に拘るのかを理解してアスランは黙り込んだ。


「私とお母様の為だけではありません。ジェラルドお兄様の為にも、大勢の人々の未来の為にも、アスラン様が必要なんですっ!!」


「…!」


 アンジェリカは瞳を潤ませてアスランの手を両手で強く握った。アンジェリカの手は、小刻みに震えていた。王女らしく振る舞っていても、不安でたまらないのだろう…。


「アンジェリカ王女…でも……。」


 しかし、アスランの頭の中にアリーとの約束が過った。村を離れてしまえば、アスランはもうアリーと仲直り出来なくなってしまう。

 それに、アンジェリカと結婚してしまえばリリアンとの復縁もあり得なくなる…アスランは苦い顔をして黙り込んでしまった。


「っ、アスラン様お願いしますっ!…どうか、助けて下さい。」


「っ…!」


 助けを求めるアンジェリカの声に、アスランははっとしたように顔を上げた。助けを求める人を放り出そうとするなんてあり得ないと、アスランは心の中で自分を叱責した。


「………………分かりました。」


 暫く考え込んだアスランは覚悟を決めて、アンジェリカを助けると口に出したのだった。



 アンジェリカのキャラが強烈でアスランが薄くなってしまいました 笑  次で『勇者とお姫様』は終わる予定です。

 ここまで読んで頂き本当に有難うございました! もし宜しければ評価して頂けると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
えっと、村に戻って何日目? アリーもさすがにこんな早く約束破るとは思ってないんじゃないかなぁ。 こいつ詐欺師が涙ながらに助けてくださいって言ったら詐欺師の手助けしそうだよね……あっ、いえいえ! まさか…
もしかしてアスランって「人助けをする→感謝される→正しいこと」って固定観念ができちゃってる? 席を譲ろうとしたら年寄り扱いするな!ってキレられるような事がなくて、成功体験しかないから善行が当たり前にな…
王女が言い分が事実かは不明ですが、こうして憐れみを誘ってアスランを引き込もうとするのが狡猾だと思いました 何かアスラン王女以前にも似たような手口で唆されてそう…
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