12.リリアンの憂鬱5
「リリアンの憂鬱」はこの話で終わりです。この話の時系列は第2話の後になります。
「ねぇ、アスラン。今日はもう休みましょうよ。」
街はすっかり暗くなり、閉店する店が増えていく。
「いや、まだあの店の店主に話を聞いていない。皆も向こうの店の店員に話を聞いてみてくれ!」
アスランはそう言うと、リリアン達に振り向きもせずに駆け足で店の中に入って行った。
「…はぁ、流石に疲れたぜ。」
ダンは疲れ切った様子でアスランが入って行った店を見つめる。
「そうですね。夕食も食べていないですし、お腹も空きましたね…。」
ブルーノは苦笑いをしながら場を和ませようとするかのように話す。だが、疲れ切っているのは様子は隠せれていなかった。
「…でも、これで今日の聞き込みは最後になる筈だわ。頑張りましょう!」
リリアンの疲労も相当だったが、ダンとブルーノ、そして自分自身を奮い立たせるように声をかけた。
アリーを探す為、アスラン達と村を出てから数ヶ月以上経過した。
アスラン達はアスランの村から距離が近い街や村に順番に立ち寄り、アリーとバロウの情報を集してきた。最初は中々足取りを得られなかったが徐々にアリーとバロウの情報が得られるようになってきていた。
今までの情報から、この街にアリーとバロウが居る可能性はとても高かった。
「今日の最後の聞き込みに行きましょう、二人共!」
リリアンの言葉にダンとブルーノも頷き、それぞれの店に向かう。
「…あっ。」
だが、リリアンが行こうとした店は部屋の明かりが消えてしまい、閉店の準備を始めてしまった。流石に今から話を聞こうとするのは迷惑になると判断したリリアンは諦める事にして、他の3人が店から出てくるのを待つ事にした。
「…皆、どうだった?」
数分後、店から出てきたアスランの問いに、同じく各々の店から出てきたダンとブルーノは首を振った。アスランも情報を得られなかった様子で残念そうな顔をした。
「リリアンはどうだった?」
アスランの視線がリリアンに向けられる。
「あ、ごめんなさい。入ろうとした店は丁度閉まってしまって、話を聞けなかったの。」
「…は?」
リリアンの言葉を聞いて、アスランは少し不機嫌そうな声を出した。
「さっき見た時は閉まる様子なんてなかったじゃないか。俺が聞き込みをするように行った後、すぐにリリアンは店に行ったのか?」
「え? …あ、その、少しだけ、2人と話をしたけれど。」
リリアンが気不味そう話すと、アスランは眉間にシワを寄せた。
「こんな事は言いたくないけど、話をしないですぐに行けば間に合ったんじゃないかな?」
アスランは不機嫌さを露わにしてリリアンを非難し始めた。
「あ、その…」
「アスラン、話したと言っても1分もかかっておりません。こんな時間なのですから、何時閉まってもおかしくないでしょう?」
リリアンの様子を見兼ねたブルーノは、リリアンを庇うようにアスランに口出しした。
「でも、あの時すぐに行っていれば間に合っていたとしか思えないんだが…。」
「っ、アスラン、いい加減に…。」
「ごめんなさいアスラン! 次はすぐに行動するから!!」
険悪な雰囲気になっていく2人の様子に焦ったようにリリアンは謝罪をした。
「…分かってくれたならいいよ。」
アスランはそう言って溜息を吐いた。リリアンは無理やり笑顔を取り繕うが内心は穏やかではいられなかった。
アスランは、アリーとの一件からリリアン達の前で笑わなくなった。アリーの事で頭が一杯なのか、リリアン達が言葉をかけても反応が薄かったり、街や村を一切観光する事なく、ただアリー達の情報の聞き込みをして捜索し、次の場所に移動する日々を送っていた。
それだけなら、まだ良かったのかもしれない…。
「…きゃあっ!!」
突然近くから女性の悲鳴が聞こえて、アスラン達は声が聞こえた方向へ振り向いた。
視線の先には躓いて転んでしまった女性がいて、派手に転んだのか中々立てずに苦戦している様子だった。
「っ、大丈夫ですか!?」
アスランは女性に駆け寄って声をかけると、女性は驚きながらもアスランの顔を見て頬をうっすらと紅く染めた。
「あっ…、そ、その…こ、転んでしまって…。」
「っ、血が出てるね、手当てをするよ。」
「えっ!? そ、そこまでして頂くのは…。」
アスランの気遣いに遠慮がちに、けれど何かを期待するように女性が言うとアスランは安心させようとするような、笑みを浮かべた。
「気にしないでくれ。困った時はお互い様だろう?」
「…っ。」
女性は顔を真っ赤にしてアスランを見た。
アスランはリリアン達に笑う事はなくなったが他の人に、困っている人達には以前と変わらずに笑みを浮かべて助けていた。
「……。」
リリアンは苦い顔をしてアスランを見つめた。
アスランはアリーの事で傷付いていても、困っている人を放っておけないのだろう。自分よりも他人を優先する心優しい人だ。
リリアン達にキツくなったり、笑顔を向けてくれないのは素を出している。つまり、甘えているのだろう。仲間として、恋人として信頼されているという事だ。
ずっと、リリアンはずっと心がモヤモヤした後、自分にそう言い聞かせていた…。
「ははっ、相変わらずアスランは優しいよな…俺達以外には。」
「……。」
ダンは皮肉を言うように冷笑を浮かべ、ブルーノは何も言わずにアスランに冷たい目線を向けている。
リリアンは、リリアン達はもうアスランに対して不信感を抱くようになってしまった。
甘えている、信頼されている。仲間だから、恋人だから。それが何だ、それでどうしてそんな態度を自分達だけがされなくてはならないのかと、理不尽な想いに駆られるようになった。
『アスランは村の人達からとても愛されています。誰にでも優しくて困っている人を放っておけずに助けてきたから。でも、私にだけは優しくないし私は彼に困らされてきました。』
アリーに言われた言葉が何度もリリアンの頭の中で再生された。今なら、アリーの言っている事がよく分かってしまう…。
リリアン達はまだ1人ではないし、周りからの圧力もないから遥かにマシなのだろう。それでもこんなに嫌な想いをさせられているのだから、アリーは大変だったのだろうと心の底から同情した。
「リリアン…。」
ブルーノがリリアンを気遣うように声をかけた。
「…大丈夫よ。」
リリアンは女性と和やかに会話をするアスランを見て、ブルーノとダンを見た。
「あのさ、2人に相談したい事があるの。聞いてくれる?」
「皆、何をしているんだ? 彼女を家まで送るぞ!」
アスランの声が聞こえて3人がアスランを見ると、アスランは女性をおんぶしていた。
3人は返事を返す事なく、黙ったままアスランの後ろに続いた。
「リリアン、相談は後で聞きますからね。」
ブルーノはそう言ってリリアンに微笑んだ。ダンもブルーノの言葉に同意するようにリリアンを見て頷いた。
「…有難う。」
リリアンも少し笑って感謝をした。
そして、背負った女性と世間話をしながら歩くアスランの後ろ姿を何とも言えない顔で見つめながら無言で歩き続けるのだった…。
中途半端な感じもあると思いますがリリアン編はここで終わりです。次回はアリーとリリアンの話の予定です(さり気なくネタバレしてます)
ここまで読んで頂き本当に有難うございました! もし宜しければ最期までお付き合い下さると嬉しいです(*^^*)




