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初めまして、私は勇者の…。【連載版】  作者: 徒然草


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11.リリアンの憂鬱4

 アスラン、リリアン編の4話目です。


 何とも言えない雰囲気のまま、村人達と話終えたアスラン達はこのまま村に留まる事にした。

 アスランは病院にいるレコに付き添う事にして、ダン、ブルーノ、リリアンの3人は宿で泊まる事にした。


 3人それぞれ別々の部屋にチェックインした後、ダンの部屋に3人は集合した。


「はぁ~、なんか色々と複雑だよな。」


 ダンは椅子にドカリと座り込んで難しそうな顔をした。


「えぇ、解決できるとは思えない問題ですね。」


 ブルーノも複雑そうな顔で同意する。


「…。」


 リリアンは何も言わずに2人の会話を聞き流していた。

 

 村に着くまで、いやアリーと会うまではアスランは幸せそうで、リリアン達も喜びと達成感に満ち溢れていた。それが今となってはアスランの表情は魔王討伐の旅の最中でも見せた事がないくらい暗くなってしまった。

 そしてリリアンも、市場でのアスランの言葉がずっと引っ掛かり、胸の中がモヤモヤとしていた。


「リリアン、どうしたのですか?」


「…えっ?」


 ブルーノの声に我に返ったリリアンが少し驚いて顔を上げると、ブルーノとダンが心配そうにリリアンを見ていた。


「そうだぜリリアン。どうしたんだよ、何にも喋らねぇじゃねぇか。」


「あ…ごめんごめん、アスランの事が心配でさ!」

 

 リリアンは取り繕うように笑みを浮かべる。アスランの言葉に傷付いただなんて事を相談出来る筈がなかった。

 あの時はアリーとの事で必死だったからと言われるだろうし、実際にそうなのだろうから気にしては駄目だとリリアンは自分に言い聞かせた。


 ブルーノは、そんなリリアンの様子に眉を顰めた。


「まぁ、そうだよなぁ。俺はさ、アスランとは長い付き合いだし仲間だ。何かあればアスランの味方をするべきだと思うぜ。けど、アリーも可哀想だったんだなと思うと上手くアスランを励ませねぇんだよな…。」


「…えぇ、そうね。」


 ダンの言葉にリリアンも頷く。アリーの父親や村人達の話を聞いて、アリーに何も問題がなかったのかは分からないが気の毒な境遇にいたのだと分かり、少し同情してしまった。

 

『…謝ってくれるならお願いがあるの。アスランの本心なんてもうどうでもいいから、私を幼馴染だなんて二度と言葉にしないで。』


 アスランを拒絶するアリーの言葉が脳裏に浮かんだ。正直リリアンとしては、アリーの事は放っておいた方が良いと思っている。アリーがアスランや村人達との関係改善を望んでいるとはとても思えない。それにこれ以上アリーと関わっていくと、リリアンのアスランに対する想いが何だか変わってしまいそうで…。


『きっと仲良くなれるよ。俺はアリーに、リリアンは自慢の彼女なんだって紹介したいよ。』


 しかし、村に来る前に嬉しそうにアリーの話をしながらもリリアンを彼女として紹介すると言ってくれたアスランの笑顔を、リリアンは思いだした。


「…でも、私はアスランの決めた事に協力するわ。」


 アスランは共に旅をした仲間であり、リリアンの恋人で一番大切な人だ。彼女であるリリアンが、アスランの力にならなくてどうするのだと気持ちを切り替えた。


「そうだな、俺も同じだぜ!」


「…えぇ、そうですね。」


 ダンは笑顔で、ブルーノもリリアンの様子に安心したように頷き、3人はアスランの力になるのだと気持ちを一つにするのだった。




◆◇◆



「皆、準備が出来たらおじさんとおばさん…アリーの両親に挨拶をしてアリーを探しに行こう!」


 翌日、リリアン達が病院へ行くとアスランが待合室でリリアン達の事を待っていた。病院に着いてそうそうに言われるがリリアン達は驚かない。

 アスランはアリーを探す選択をするのだろうと予想していたからだ。


「アスラン、レコさんの事は大丈夫なの?」


「婆ちゃんは今日も1日入院して問題なければ明日退院だってさ。婆ちゃんの事をおじさんとおばさんにお願いしようと思ってね。それに、アリーを探しに行くと伝えたいし。」


 アスランはレコさんと話をつけたのだろう。本当は家族同士、もっと話したい事もあった筈だ。しかしアリーの件が解決しない限り、アスランとレコが心から笑い合う事は出来ないのかもしれない。

 それに、今度は魔王討伐という命を懸けた戦いの為の旅ではない。レコも以前ほどアスランを心配する必要はないだろうし、体調管理に気をつける筈だとリリアンは思った。



◇◆◇


 

「おじさん、おばさん。暫く婆ちゃんの事を宜しくお願いします。」


 アリーの家に着いたアスランは、アリーを探しに行く事と、その間レコを頼むとお願いした。


「…あぁ、分かった。」


 アリーの父親は何とも言えない顔で頷いた。


「一つだけお願いします。アリーを連れて帰ってきたら、アリーの事を責めないであげて下さい。」


「っ…。」


 昨日の一件で思う事があったのだろう。アリーの父親は返事はしないが否定もしなかった。


「…アスラン、アリーの事と私達の事を気に掛けてくれて有難うね。」


 アリーの母親はお礼を言うが、その表情は暗かった。


「でもね、あの子の事はもうそっとしてあげた方が良いんじゃないかって、私は思うのよ…。」


「えっ?」


「っ、な、何を言っているんだお前は!?」


 驚くアスランとアリーの父親に、アリーの母親は苦笑いをした。


「私達はね、昔アリーに“私達はアリーを軽んじている”、と言われた事があったの。私はそんなつもりはなかったわ。でも、アリーの話を真剣に、親身になって聞いてあげた事もなかったと気がついたの。それは、アリーを軽んじていたという証拠なんだと思うのよ…。」


「な、何を…っ!?」


 アリーの母親の目が潤んでいき、何かを言おうとしたアリーの父親は口を噤む。


「アリーの幼馴染である貴方と比較して、アリーの態度を非難した。アリーが悪口を言われているなんて知らなくて…いえ、言ってくれたのに覚えてすらいなくて、あの子を助けなかった。私達は、最低な親よね。」


 後悔と悲しみからか、涙を袖で拭うアリーの母親の姿に、アスラン達の胸が締め付けられた。


「昨日、アリーが結婚の報告をする為に帰ってきたの。アリーは、私達と会えても全然嬉しそうじゃなかった。あの子、律儀なところがあるから最低限の挨拶をしに来てくれただけなのよね。でも、結婚相手の…バロウ? とかいう男の事を話す時は、とても嬉しそうで、幸せそうだったの。」


 悲しげに話を聞いていたアスランは、バロウの名前を聞いて表情を強張らせた。


「アリーの事はとても心配してるわ。でも、あの子の幸せを考えたら、私達の元に、村に連れ戻す事が良いだなんて、もうとても思えないのよっ…。」

   

 両手で顔を覆って泣き始めたアリーの母親に、リリアン達は何と声をかければいいのか分からない。

 だがアリーの父親は怒ったような、焦ったような顔をした。


「ば、馬鹿な事を…。」


「そんな訳がないっ!!」


 アリーの母親の考えを否定しようとしたアリーの父親の言葉を、アスランの大声が遮った。全員が目を丸くしてアスランを見た。


「アイツは…バロウは碌でもない男なんです! あんな奴と結婚してアリーが幸せになんかなれる筈がないっ!! アリーの為に、そしておじさんとおばさんが幸せになる為にもアリーは必ず連れて帰りますっ!!」


 アスランは意地になっているかのような態度で、真剣な顔で2人を見た。2人はポカンッとした顔でアスランを見返している。


「あっ…、どれくらい時間がかかるかは分かりませんが、信じて下さい。」


「あ、あぁ…有難うな、アスラン。」


「アスラン…無理は駄目よ。」


 アスランは我に返ったように微笑んだ。2人は戸惑いながらもアスランに感謝した。


「…吃驚したぜ、いきなりアスランが大声出すとは思わなかったぞ。」


 そんなアスランの後ろ姿を見ながら、ダンはボソッと呟いた。


「…そう、ね。」

 

 リリアンは昨日感じたモヤモヤ感をまた感じて、複雑そうな顔をした。


「…。」


 ブルーノは何も言わず、心配そうにアスランの後ろ姿と、リリアンの横顔を見ていた…。

 


 ようやく村を出ます。徐々にアスランに対して色々な事を考えるようになるリリアン達です。

 更新が不定期ですが、何時も読んで下さる皆様、本当に有難うございます。そして、誤字脱字も本当に感謝です。

 ここまで読んで頂き有難うございました!!

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― 新着の感想 ―
アスランを肯定すれば「調子に乗ってる」 アスランを嫌がれば「何様のつもり」 アリーちゃんはどないせぇっちゅうねん!って立場に立たされて何年も孤立……(涙) 想像以上に村の同調圧力って酷いですからね。…
俺もバロウはろくでもないとは思ってるしアリーがチンピラのような男に騙されて引っかかってるようには見える。 バロウは皮肉屋というか天邪鬼というか、中身と本心は知らんが冷笑癖のある嫌な男な外面ではあるしな…
アリーを連れ戻す!って言ってる所、本当にゾッとしました。 ホラーかもしれないですね。 元勇者現ストーカーキツすぎる。思い込み強すぎてバロウの生死が心配です。逃げ切って欲しいですね。本当に無理……
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