14 持つべき者は追放者?
ギルドの中に、野太い声が響いていた。
「いやぁー! シンさんが☆5ポーションを作れるなんて! あ、これお茶菓子です。へへへ、元パーティのよしみということで今後ともご贔屓にしてもらえれば……」
「んー、どうしよっかなぁーっ!」
俺は椅子にふんぞり返って、目の前にいる揉み手に笑みを浮かべモーモンへ向かってそう言った。
俺の作ったポーションはモーモンや周囲にいたギルド職員が証人となり、「おそらく☆5ポーションである」と認定された。
正確な鑑定をするのには錬金術師ギルドに引き渡しての調査が必要ということで、しばらくは時間が必要になる。
そうして残り二本のうちの一本は鑑定に回してもらい、もう一本の方をギルドに引き取ってもらったのだった。
モーモンは俺に向かってぺこぺこ頭を下げる。
「へへへ……ぜひ今度からはあっしにお任せいただければ、ギルドに引き取ってもらうよりも高く買い取らせていただきやすので……」
「ほうほう? どういうことじゃ? 申してみよ」
俺はまるで王様のような喋り方(偏見)で彼にたずねる。
「へいへい。☆5ポーションは並大抵の錬金術師には作れませんからね。いま売りに出るようなものはわずかに古代遺跡から発掘されるものばかり……その上、王侯貴族なんかが買い占めに走るもんで、市場にはまったくでてきません。冒険者たちは喉から手が出るほどに欲しいんでさぁ」
「ほう。では貴様、冒険者に伝手があるのか?」
「へい! ですので次からはあっしにお任せくだされば……」
「だがなぁ~! どうやら噂によると、俺の作るポーションはドチャクソマズいらしいしなぁ~!」
「そ、その件に関しては誠心誠意、謝罪させていただきやす! すいやせんでした!」
「あ~! 地面に叩き付けられたガラスの欠片、拾うの辛かったな~! あの時は涙が出たな~!」
「すいやせん! 本当に申し訳ございません!」
そう言ってモーモンは深々と頭を下げる。
そんな様子を見ていたリュッカが苦笑した。
「……そのぐらいで許したげたらどうッスか? シンくん、実はそんなに気にしてないッスよね?」
……リュッカにはバレていたらしい。
実はこれまで俺がクビになった100のパーティの中で、モーモンの俺への扱いは比較的マシな方だった。
俺はモーモンに念を押すように人差し指を突きつける。
「……俺の名誉を守る為に自分の腕に短剣までぶっ刺したリュッカが言うんだから、今回は許してやるよ」
「へ、へい! ありがとうございます!」
「だが! これからは弱い立場のもんに無茶言って、こき使ったりするんじゃねーぞ。……じゃないと、今回みたく不利益を被るのはお前自身なんだからな!」
「反省してます……。俺もやり過ぎちまったと思ってるんだ。冒険も上手くいかなくて……つい。だがお前さんに八つ当たりしちまったのは事実だ。……本当に、すまねぇ。改めて謝らせてくれ」
「……ま、いいよ。今ので許した。お前が自分の言葉で謝ってくれたしな」
おそらくモーモンはきちんと反省したのだと思う。
……俺がお人好しだと言われれば、そうかもしれないが。
俺がイスから立ち上がると、モーモンは少し考える様子を見せたあとで口を開いた。
「……な、なあ、シン。罪滅ぼしってわけでもねぇが、今後の冒険者付き合いの意味もかねて、船を紹介させてくれねぇか」
「……船? 新大陸に渡る船か?」
「そうだ。新大陸へは定期的に船が出ているが、どれも積み荷や冒険者の予約でいっぱいだ。新参者が予約しようとすると、半年ぐらいかかっちまう。だから俺の知り合いの船を紹介してやろうかと思ってな。もちろん、船賃もタダでいい」
「……本音は?」
「少しでも恩を売って、ポーションを卸してもらいてぇ」
「正直だな」
「☆5ポーションなんて冒険者にとっては命綱になるもんだ。高く売れるし、自分でも確保してぇ。もちろんギルドの買い取り価格よりも多く……いや、二倍出す」
「いいぞ、ノった」
金勘定で動いている人間なら、利益になるうちはそうそう裏切るようなこともないだろう。
……それは俺が100の追放パーティを経験して学んだ事でもある。
俺はモーモンに向かって肩をすくめてみせた。
「……まあとはいえ、船を用意してもらっても今すぐ新大陸へ行けはしないんだけどな。俺ら平均ランクが追いついてないし」
「おいおい、冗談よせよ。☆5ポーションが作れるってならそれだけでA、ヘタすりゃSランク認定だって受けれるだろ」
「錬金術師ギルドの正式鑑定には時間がかかるんだよ。それにイチャもん付けられる事もあるし、製法の検証なんかに来ることもあるしな」
俺がどうやって作ったかというのは、パーティメンバー以外には言わないでおこうと思う。
追放の祝福なんてあると知られたら、面倒な事この上ない。
「……まあ乗れるようになったら、その時はよろしく頼むよ」
「おう! 任せといてくれ!」
モーモンはそう言って親指を立てる。
……ひとまず船の心配はしなくて良さそうだった。




