第五十五話 目覚め
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「はっ――!?」
何かに触れられ咄嗟に飛び起きる。
……しかし、その反動で左腕が攣ってしまった。
「いっ…たい……」
「もう、いきなり起きないでよ! びっくりするじゃん」
そこには、手当てをしているジャーダの姿があった。
臭い的に、ここはジャーダの部屋だな。蝋燭に火が付いているし夜であるのは間違いない。
少しあたりを見回すと、机に寄っかかっているメルクリオの姿があった。
……夢で良かった。でも、普通に気持ち悪くて吐きそう……。
「まぁ、目覚めてくれる分には何も問題ないからいいんだけどさ。あまりにも来るのが遅いから薬草園に戻ってみたら、ヒイラギモドキに絡めとられてるし魔術師としてどうなの? 有名な植物なんだから――」
ジャーダの説教の最中であったが、吐き出さずにはいられずそばにあった壺に吐瀉した。
口の中が苦酸っぱいし、吐いても余計に気持ち悪くなる……。
「あぁ、吐けた? 吐くのは正常だから良かった。あと3回くらいは覚悟してね」
「は……辛い……」
「毒を抜くためだからしょうがないよ」
「もう少しまともな医療提供をしてくれ……」
「ヒイラギモドキに引っかかる人間なんてあまりいないから、治療法がよく分かってない。許せ」
メルクリオが煙管を吸いながら気だるげに会話に割り込んできた。
「おー! メルクリオが喋ったよ!? さっきまでわざわざ紙に書いて指示してきたくせに。やっぱりディマがいれば喋るんだにゃあ?」
「いいこいいこ」と言いながら、子供を愛でるようにしてメルクリオの髪を撫でている。
凄い不機嫌そうな顔をしているが、親猫のように必死にこらえている。
「……黙れ。そして触ってくるな」
「えー、これでも同じ血を分かち合った仲だよ? いいじゃん」
「はぁ……アルジェントの厄介者が揃うと殺したくなる」
「そんなこと言わないでよー? 僕はみんな大好きだよ?」
「目に見えた嘘をつくな。全く……」
仲が悪いのは事実だろうが、案外この二人はやっていけそうだよな。分野的にも近いし。
性格的には真反対でも、気が合う奴ってごく稀にいるよな。
そういえば、アンヴィの姿がない……?
「……アンヴィは大丈夫なのか」
「あぁ、幸いにもとげが深部にまで到達してなかったからすぐ目覚めたよ。今はフラックスのところにいるんじゃないかな」
「それなら良かった……」
その言葉と同時に力尽きて倒れこむ。
目は回るし吐き気は収まらないし、これなら死んだ方がマシだ……。
「あーあ、ディマが死んじゃったよー」
「夢の中でも死んでただろうがな」
「まぁね? ヒイラギモドキに刺されたら悪夢を見るっていうから、どんなものか聞きたいところだけど」
「……ろくでもないだろう」
「あれ、メルクリオって夢見るの? そもそも寝てるの?」
「……煩い。本当に煩い。俺はアイツとは違う」
「痛いって! 髪は引っ張らないでよー!」とジャーダが喚いている。
じゃれ合える気力があっていいな……。僕はこの段階で5回くらい死んでいる気がする。
突っ伏しながら彼らの会話を聞いていたが、これといっていがみ合っているような様子はなかった。
なんだ、普通にしゃべっているじゃないか。
あれはどう見ても本物のメルクリオだ。水銀で作ったもどきではない。
あの煙管だけは肌身離さず持っているもんな。理由は知らないけど、昔からやたら気に入ってるものだ。
一回口火を切れば話すんだな……。アイツにしては意外すぎる。




