第四十二話 付きまとう代償
「お前の方がよっぽど酷いさ。どれだけの人を殺してきたんだか」
「メルクリオだってだいぶ殺してるだろ? 一般人まで殺してるじゃないか」
「あれは……事故だ。仕方ないだろう」
「まぁ、水銀がいかに有毒か知らしめることにはなったがな」
メルクリオが何をしたかって? 水銀を飲ませて治癒しようとしたら中毒死が相次いだんだ。
結局100人くらい死んだんだっけ。なかなか惨い死に様だったよ。
実験だから……では許されないような行為ではあるが、お咎めはそんなになかった。
理由は単純で「魔術に犠牲はつきもの」だからだそうだ。
「理論上、正しく使えばいかなる病でも治せるものだ。改良してスリムな体型を作る薬を作れたんだからそこそこ良かっただろう」
「はぁ、そんなことはいいんだよ。明日僕は死ぬんだぞ? なんか慰めてよ……」
「どうやって処刑されるか聞いたか?」
「火を飲ませるってよ。阿保なんじゃないかアイツ」
「火……ねぇ。フッ、なるほど」
明らかに含み笑いをしている。
メルクリオよ、絶対に殺す。血肉を喰らってから死んでやる。
……冗談だけど。
「一人で感心してるなよ! 教えてくれ……」
「痛くて苦しいだろうね。処刑として見た目は地味だが、人肉を食す時には便利な方法だ。君はさぞかし美味であろうから……」
「なんだ、お前も僕を食べたいのか!? これだからオスクリタに似ているって言われるんだぞ」
「……魔術師としては当然の考えだろう。混血の青年を喰らえば永遠に若さを保てると信じられているのだから」
そんなの嘘だってみんな知っていることだろう。虚実だ虚実。
メルクリオをこんなに恨めしいと思ったことはない。全く、どういうつもりだ。
僕がわざと聞こえるように大きくため息をつくと、メルクリオは意味深長な言葉を発した。
「一つ言っておこう。向かい風が吹いていれば月に行けるかもな」
「嫌だよあんなところ。太陽の方がマシさ」
「オスクリタは、どんな相手であろうと葬るときは礼儀正しい奴だ。安心しろ」
石越しに高笑いする声が聞こえる。
コイツは酔っぱらってるな……。話にならない。
「まぁまぁ、ディマが死のうと俺は愛しているからな」
「えっ、ランポに脳内調教された?」
「バカか? 俺があんな野郎に屈するわけがないだろう。同じ血族として愛してるってことだよ」
「……なんか寒気がする。気味悪い」
そんなこと滅多に言う奴じゃないのに……。やっぱり僕は殺されるんだな。
「俺も処刑は見に行ってやるから楽しみにしてろよ」
「はいはい」
バキッ、と足で石を踏みつけ粉々に砕いた。
呆れた。なんというか、僕の周りは痴呆しかいないのか。
……余計に辛くなるだけだ。




