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底辺と呼ばれた魔術師が、最強のロリっ娘魔術師を育てることになりました。  作者: 南郷 兼史


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第四十一話 思い出

 ……僕は暇すぎて虚空を見つめていた。

 寒いせいで頭だけは働く。どうせ明日処刑されるんだから意味がないと言えばそうだが、考えるのをやめることはできない。


 僕のことはどうでもいい。アンヴィがどうなっているか心配だ。

 あの様子じゃオスクリタの派閥で育てるのだろうか。

 いや、アイツに限ってそんなことはしないな。殺して血肉を道具として使うのだろう。そういう国王(レークス)だ。

 魔術師としては間違ってないんだろうけど、倫理的に幾分か度が過ぎている。

『災いをもたらす者』と呼ばれていたのもなんか納得できるなぁ。予言されたらたまったもんじゃないよ。死ぬんだから。


 ……しかし、僕は酷なことをしてしまった。

 これじゃあ、誰のためにもならないじゃないか。僕の独りよがりで終わってしまう。

 はぁ……馬鹿だなぁディマよ。殺すことしか出来ないんだから、人を生かそう何ぞ考えてはならぬぞ。

 分かってはいるけれど、そう信じたくはないんだ。僕だって誰かの役に立ちたい。

 ……出来れば死ぬこと以外で。


 後先を考えないような性格だとはメルクリオに散々言われていた。

 アイツは親みたいなもんだ。他の輩よりずっと関わりはある。

 指摘はいつも的確だ。憎たらしいくらいにはな。

 こんなことがいずれ起きることくらいは予測していたんだろうな。じゃなかったら、こんなローブよこさないよ。

 

 改めてローブを見てみると、裏の裾の方に鮮血のように赤いアルジェントの紋章が小さく書かれていた。ひし形の部分には赤い石がはめ込まれている。

 器用なことしてるなぁ。何の石だろう?



 ――そっと触れてみた瞬間、溶岩のように熱くなり思わず手を離した。

 


「あちぃっ!? な、なんだこれ? 待てよ、まさか使い方って――」

「そのまさかだディマ。その石は魔法道具だ」


 石の中からメルクリオの声が聞こえる。

 おぉ、凄いなこれ。ランポの知恵でも借りたのか?


「水銀を混ぜ込んで作ったものだ。残念ながら魔術による障壁を突破できないので、そちらに向かうことはできないが」

「声だけでも助かる。脱出させてくれるのか?」

「いや、その気はない。生存確認をしただけだ」

「……おいおい、ここまでして生存確認のためだけに使うのかよ。今、街はどうなっている?」

「どうもこうもお祭り騒ぎだ。()()()が処刑されると聞いて俺も酒を煽っている」


 メルクリオ……人の心が微塵もない。そこだけはオスクリタに同情するよ。


「……死にたいのかメルクリオ。それなら一緒に心中しようじゃないか」

「そいつは御免だ。俺はディマを使って研究したいことがあるから早く死んでくれ」

「おまっ……酷い奴だな……」


 皮肉って言っているだけだろうがやはり心に刺さる。

 昔は誰よりも僕を可愛がってくれて、遊んでくれたのに…….




「ディマ。嫌いなものでも全部食べなさい。この程度では魔術師になれないぞ」

「えー、メルクリオだって食べてないじゃん!」

「俺はもう魔術師としては一流だからな。絶食していても大丈夫なんだ」


 ――あれは僕が6歳くらいだったころだ。

 嫌いなニンジンを無理矢理食わされた苦い思い出。

 土臭くて、馬の臭いがするんだ。なんであんなものを食そうと人間は思ったのだろうか。

「じゃあ、食べたら俺と戦ってあげてもいいぞ?」と言ってニンジンを口の中に突っ込まれ、泣いた記憶がある。あんなの地獄だよ。


 不貞腐れて乱暴に魔法を放ったら怒られたっけ。木々に呪われるからさ。

 水銀しか使えない割には他の魔法を教えるのがうまくて大いに助かった。

 その時はまだケイ素を増幅できるなんて知らなかったしな。


「ディマは魔法の習得が早いから魔法使いには向いているな。ただ、魔術は……」

「まじゅつだってできるもん! 五芒星儀式だって覚えたし、ケラト十字だって――」

「基本中の基本だな。ホロスコープで使う星座の名前は覚えたか?」

「えぇーっと……」

「まぁ、使っていくうちに覚えるさ。誰しも通る道だしな」


 いつも頭をわさわさやってくれる。

 ……オスクリタの撫で方は雑だからちょっと痛い。もう慣れたがな。



「俺さえいれば、ディマは最強の魔術師になれるさ――」

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