第三十五話 国王との対話
門番は事を理解しているようで、特に何も言わず扉を開けてくれた。
鳥のくちばしを模した黒いマスクをしているため、表情は分からない。
今にも吹き出しそうな顔をしているんだろうな……処刑されにわざわざ来たんだし。
*
――入った瞬間に空気が変わる。
煌びやかな装飾、サンダルウッドの匂い、凍てつくほどの冷気。
赤黒い絨毯の先には、肘をつき堂々たる態度でオスクリタが鎮座していた。
金と鮮やかな赤であしらわれた玉座。その後ろから日が差し込み神々しささえ覚える。
……だが、側近のレオーネはいなかった。
「あぁ、遅かったじゃないかディマ」
先に口を開いたのはオスクリタだった。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべると、右手を差し出してこう言い放った。
「来たまえよ。いいものを見せてやろう」
こう言われては仕方ない。一応国王の命令だからな。
無言で礼をし、絨毯に沿って歩いていく。
……足が重い。近づけば近づくほど鉛が付け足されていくような感じだ。
オスクリタはゆっくりと立ち上がると、横にある棚から小瓶を取り出して見せた。
小瓶自体はシンプルなつくりで、中には透明な液体が入っている。
「……何だと思う? 博識な君なら分かるだろう」
「さすがに見ただけでは分からないな」
「先ほどペルマに会っただろう? これはああなった原因だ。三代前の国王が不老不死の実験として使ったと伝承されている。失敗作だがな。まぁ、副産物として治癒能力の向上が見られたから、改良して別の用途で使っているよ」
……なんて酷い奴だ。
こうやって血が受け継がれてこんな残虐な男が産まれてしまったのだな。
「そんな嫌な顔をしないでくれよ。飲ませるわけじゃないんだから」
「じゃあなぜ見せた?」
「……君の治癒能力が異常に速いからさ。この薬をくすめたのかと思ってね。君がなかなか死んでくれないのも筋が通る」
「本当は早く死にたいけどな。アンヴィがいなければ。というより、今まで俺に行った処刑方法は直接的に死に至るものではなかった」
あんなに恨まれているはずなのにどれも拷問程度で収まっている。あえてやっているようにしか思えない。
酷くても爪剥ぎとか釘を打ち付けられるとか……その程度だ。
「あっははは。今回は死ねるよ。猟奇的な処刑方法を思いついたんだ」
「……そうですか」
「だが、それを今言うのは惜しい。レオーネ、裁判官を」
ギィィっと右横に合った扉が音を立てて開くと、レオーネと裁判官らしき男が立っていた。
レオーネはオスクリタの前ではおとなしい。しゅんとしている。
……ほんと、猫被りな奴だ。
裁判官は重たそうな資料を持ってオロオロと戸惑った様子であった。
「さて、裁判官。私は世界初の猟奇的な処刑をしたいと考えている。資料の読み込みは済んでいるな?」
「は、はい! もちろんですとも」
「ふーむ、ただの火刑はもう飽きたんだ。だから、火を飲ませたい」




