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底辺と呼ばれた魔術師が、最強のロリっ娘魔術師を育てることになりました。  作者: 南郷 兼史


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第三十四話 老婆の詞

 ――体が動かない。


 老婆のしわがれた声と、木が燃える時に鳴るパチパチとした音は聞こえるが、目を開けることはできない。

 意識はあるというのに、これでは死人と同じだ。伝える手段がない。

 このままでは、冷たい土の底に埋められてしまう。

 「死にたがってたから良かった」って? 

 ……こういう死に方は最悪さ。死に方は選べないと。


「……まぁ、元気な男だねぇ。死ぬにも死に切れぬ男は伊達じゃあない。少しお待ち」


 っ!? 思考を読み取られたのか?

 一体どんな魔術を使っていやがるんだ……。

 まぁ、ともかく都合がいい。水を……くれ。


「勘が鋭い男は嫌いじゃないよ。さすがは陛下(レークス)の寵愛を受けた者。私を娶ってくれないかねぇ。おほほほほ」


 なんだこのクソバ……。

 いや、なんでもない。命は老婆の手の内だ。下手なことは言えない。

 

 ……そういえば、思考速度だけは異様に早くなっている。これも魔術の類なのか?


「えぇ、そうよ。全身硬直状態にしているだけ。この現状を見て暴れられても困るからねぇ。ほら、お口に流してあげる」


 強引に口を開けさせられると、とろりとした液体を注ぎ込まれた。


 うっ……!? に、苦い……それにエグイぞ。最高にまずい、初めての味だ。

 ジャーダの方がまだ美味しい薬を作れるよ。

 吐き出したいが吐き出せない。これ、気管に入ったら死ぬんじゃないか。


「これは生のホウレンソウにクレソン、秘密のスパイスに馬の精液と嬰児の臓物をブレンドした回復薬ですよ。なかなか効き目が良くてねぇ。次第に体が動かせるようになるはずだから我慢してて」


 ……色々聞かなきゃよかった。吐きたい。

 ゲテモノしか入ってないじゃないか。どんな気持ちで作っているんだか。

 

 そう思っているうちに効果は現れ始めた。

 自分の意思で若干だが手が動かせるようになっていた。

 それに、目も開く。首は動かないが。


「おぉ、起きたか()()使()()よ。体は見ない方がいいよ。ほっほっほ」


 腰の曲がった老婆が杖を突きながらこちらにやってきた。

 ……体を見るな、と言われてもこの角度から十分見える。

 なんで、()()()()()()()()()()()()。それに相変わらず全裸だし。


「私はそのモノがないから分からんが、大体麻痺(パラライズ)をかけるとそうなってしまうのよ」

「うっ……ジャーダの麻痺とは違うようだな。あくまでも生理現象であると弁明しておこう……」

「搾取して秘薬でも作ろうかとも思いましたが、陛下に怒られてしまいますからね。ぜひ、ご機会があれば、私目に……」

「そういった趣味はないんだ」


 残念そうな顔をして老婆は近くの椅子に腰を掛けた。


「まぁ、戯言はさておき、私は『ペルマ』と申します。こう見えて230歳なのですよ。以後、お見知りおきを」

「230歳って……不死の妙薬でも飲んだのか?」

「さぁ、どうでしょう? なぜか生きてしまっているんですよ。困ったものです。不老不死は我が国にもいますけどねぇ。そちらの方が良かったものよ」

「あれは魔術人形だろう。命は存在しない」

「おっほっほ。そのうち分かりますよ……」


 意味ありげに笑い、可愛がるようにわさわさと僕の髪を撫でた。

 危うく殴りそうになったが、ここにいる間は手出してもいいことは何もない。やめたやめた。


 ペルマはゆっくり立ち上がると、麻布に包まれた袋を取ってベットの横に置いた。


「はい、()()()()()()()だよ。お似合いのだと良いけれど」

「はぁ……治癒してもらった矢先に処刑か。よく分からん血族だな」

「大丈夫、死にませんよ。陛下の寵愛を受けた者なのだから。アルナシオンだって手加減してましたもの。骨折すらさせないなんてそうそうありませんよ」


 とはいえ、手加減であそこまでやるか……? 僕は十分ダメージを受けたが。

 ……そんなこと考えても無駄だな。とりあえず着るか。


 麻袋を開けてみると、レオーネと戦っていた時に来ていたローブがそのまま入っていた。

 国王(アイツ)にしては粋な心掛けだ。何もかも歪んで腐ってやがる。


「あぁ、そういえば、アクセサリーと杖は没収されましたよ。魔法を使われては困りますからね。でも、()()()()()()()()()()は、取りませんでしたけど」


 ――なるほど。僕の魔法のトリックを知っているわけか。

 単純だからバレても仕方ないことだが。それでも水晶だけは使わしてくれるなんて優しいやつだ。

 ……おそらく、この状態じゃ使えないけどな。



 僕は確かにケイ素を含む物質を操れる。正確には『ケイ素を含む物質に触れているとき、そのものを増殖させている』。なかなか難儀な魔法だ。

 だからブレスレットやペンダントを身につけ複数肌に接着させている。

 だが、こうやって剥ぎ取られる可能性を加味して腹の中に水晶を埋め込んでいるのだ。入れる時は失神した記憶があるよ。

 

「ローブを着たら陛下のもとに案内いたします。さぁ、さっさと着なされ」


 ペルマにせかされながらローブ一式に着替えると、彼女は方解石を取り出し軽く息を吹きかけた。



 ――一瞬にして時空が歪む。

 そして、目の前に門番と重厚な扉が現る。

 冷気が足元を縛り付け、恐怖が一段と増してきた。


 しかし、国王に会う以外道はない。


「ほれ、行ってきなさい。私の役目はこれでおしまいだからね。達者でなぁ」

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