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底辺と呼ばれた魔術師が、最強のロリっ娘魔術師を育てることになりました。  作者: 南郷 兼史


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第三十話 閃光の雷馬

 ――その日の夜のこと。

 案の定夕食を荒らし、騒ぐだけ騒いでアンヴィは寝てしまった。

 イペリットがいなければどうなっていたことか……。

 子供をあやすのはとても大変だというのがよく分かったよ。

 もうすぐ一人増えるというのに、こんなので大丈夫なのだろうか。

 いや、悲しいことに明日には死んでいる。愛でるだけ愛でておかなければ。


 ベットですやすやと寝ているアンヴィの横に座り、そっと頭を撫でる。

 ……可愛い姿を見るのもこれで最後だ。

 あのまま見殺しに出来ないと思って助けたものの、これじゃ悲しませるだけだな。

 布団をかけ直し、様子を伺う。

 ……幸せそうな寝顔である。

 この子はもうオーロには戻れない。だからといい、アルジェントにも――



 実を言うと、オーロとアルジェントの元々の血族は一緒であり、『ミラグロ』という。何なら、プラーミャ以外は混じっているといっても過言ではないだろう。

 ミラグロは「魔術の祖」とも言われている。500年以上前に兄弟で仲違いしてしまい途絶えてしまったが。湖の伝説の話もこの兄弟にまつわる話である。

 ちなみに、兄の方がオーロで、弟の方がアルジェントだ。


 だから、アルジェントがオーロの子を育てても問題はない気がする。だが、A.a.が記した歴史書には「オーロとアルジェントは全くの別物」と書かれており、「邪悪な秘儀を追い求め弟は兄と決裂した」ことになっている。

 アルジェントの歴史書には逆に兄の方が悪く書かれていて、「暴君な兄についていくのが苦になり自ら湖に飛び込んで死した後、新たな血をもって転生した」ということになっている。


 ミラグロの血が濃く出ているのは紋章を見れば分かる。アルジェントの紋章にある剣と杖はミラグロから受け継いだものであるからだ。オーロの紋章には記されていない理由は、単にミラグロの歴史とは違うことを示したかったからである。

 


 ――ふと、左腕に痛みが電流のように走りこんだ。

 嫌な気配を感じ外を見ると、草木がざわついており怪しげな青白い光がこちらに向かって物凄いスピードで近づいていた。


「――来たか」


 僕は急いで戦闘用のローブを着こみ、机にしまっておいた魔力を増幅させるアンプルを飲み干した。

 効果は絶大だが、反動があまりにも重い。一度使ったことがあるが、3日程意識が飛んでいた。並大抵の人間では制御できず即死するだろう。

 今は何せ非常時だ。メルクリオが手伝ってくれれば少しは楽にいなせるが、あの様子じゃ無理だろう。


「……アンヴィ、行ってくるよ」


 これで最期なのだから、盛大に暴れてやろうじゃないか――



 乱暴にドアを開けると、メルクリオが横で待ち伏せしていた。


「機嫌は持ち直したのか?」

「別に。でも、今回ばかりはヤバそうに見えたからな」


 真新しいローブを押し付けると、メルクリオはすぐさま自分が生み出した水銀の中に飛び込んだ。

 メルクリオは水銀が溜まっているところであればワープすることができる。いつも庭に溜めているところがあるのでそこに移動したのだろう。


「……しかしこのローブ、死に装束にしては立派すぎるな」

 

 効果は分からないが、いつも着ているものとは違う何かを感じる。

 まぁいい。それより、早く追いつかねば――

 魔力で走力を補強しつつ、舞うように階段を駆け下りていった。


*


 案の定、僕とメルクリオ以外アルジェントのやつはいない。

 正確には、見える範囲にいないだけであるが。ジャーダは隠れて反響定位(エコロケーション)を使い敵の位置情報を教えてくれるし、統率者(ドゥクトル)とランポは魔術で補強してくれる。


「2時の方向からリーダー格っぽいのが来るよ。あと10秒くらいかな」

了解(ヴァ・ベーネ)


 メルクリオは水銀を纏い、戦闘態勢に入った。

 いつも以上に彼の殺気が増している気がする。

 それもそうか。アルジェントの存続がかかっているようなものだから。


 僕は小粒の水晶を錬成し、辺りにばら撒いた。

 簡単に言うと、相手だけに反応する地雷である。殺せるかは微妙だが、足を刺せば必ず動きが鈍くなる。

 さぁ、いつでも来るがいい。



 ――そう思った瞬間、けたたましい轟音と共に閃光が放たれる。

 あぁ、こんな雷馬(らいば)を乗りまわすやつなんて一人しかいない。

 騒然とした中、優雅に雷馬から降り立つ黒髪の男――


「ははっ、久しぶりだなディマ……。あと、()()()()()も。」

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