第二十六話 強襲
「……あるのか?」
「原因が原因なら、な。確証はないが」
腕を組みながらランポが考え込んでいる。
「本当にアンヴィがここに残るならちゃんと考えてみるよ。なんせ、大掛かりだからな。……ってそんなことを言っている場合じゃないな」
目で「後ろを見ろ」と指図される。
くるりと振り向いてみると、すぐに理由は分かった。魔鷹だ。
思った以上に早かったな。さすがはオーロといったところか。
魔鷹というのは、俗にいう偵察機だ。
だが、単なる偵察機ではない。攻撃特化しているいわば対人間用の魔法具である。
ここから見えているだけでも十数匹はいる。
とはいえ、今僕が出て戦うのはまずい。自ら場所を教えるようなものだ。
ちなみに、ここにいる二人はろくな魔法が使えない。初歩的な魔法と、パラライズだけなのだから。
「……呼び出すしかないな」
そういうと、カンカンカンカンと高い音の鐘を鳴らす。
この鐘は回数によって意味が変わる。四回鳴らす時は戦闘態勢に備えろという合図である。
これで何とか乗り切れればいいが……。
*
――黒いローブを羽織り、赤髪と銀髪の男が正面口で待ち構える。
「……珍しいじゃねぇかメルクリオ。お前が戦うなんて」
メルクリオは全く返事をする気がない。魔鷹を見つめ、射程圏内に入るまでじっとしている。
「はぁ、つれねぇなぁ。いつまで俺たちのこと恨んでるんだよ」
相変わらず見向きもしないし表情も変えない。手が焼けるやつである。
「あーもー関わる気はないってか? 別にお前なら一人で生きていけるだろうし、こんな血族見捨てたっていいんだぞ水銀野郎」
――パッと水銀を弾丸のようしてに空へと撃ち込む。
強襲してくる魔鷹は水銀に撃たれ、白い煙を上げて墜ちていく。
一匹ずつ、かつ的確に。
「はっ、見事としか言えないな。アマルガムになるのはつえーわ」
ぐちゃぐちゃに溶けた魔鷹を見ながら感嘆としている。
……が、しかし、それだけでは終わらなかった。
溶けた魔鷹の中から、ぬるぬるとした黒い苗のようなものが出てきたのだ。
「――っ!? これってデュンケルのやつじゃねぇかっ!」
ひゅーっと素早く対象物に触手のようなものが絡みつく。
真っ先に脚を捉えて動きを封じた後、腕にまで巻き付こうとしている。
「ったく偽装までしやがって……俺はコイツが嫌いなんだよ! メルクリオ、先に火傷の処置だけ頼んでおく」
触手は粘液を纏わせ体を這うように滑らせてくる。
とにかくむずむずしてくすぐったい。あまり長い間絡まれ続けると、正気を失わせる性質があるので早めに対処しなければならない。
「焼け死ね……この陰気野郎!!」
――グランディの周りが一瞬にして白い冷気に包まれる。
雄叫びをあげながら叩き割っているような音が響き渡るが、様子までは外から窺えない。
「あーっ痛ってぇ……焼けるから自分に対して凝華なんてやりたかねぇよ」
横から風が強く吹き、白い冷気が払われる。
そこには、ところどころ赤黒くなり蹲っているグランディと、凍りつけられてバラバラになった苗達があった。
「はよ治療せい……この痛みは慣れねぇんだ」
メルクリオは何も言わずガクガクと震えるグランディに触れ、凍傷の部分を治癒していく。
ものの数秒で元通り。健康そうな血色に戻る。
「ふぅ、ありがとよ。お前がいなきゃ俺は何回死んでいるんだか」




