第80話 クラウスの開催するパーティー
「それで、招待客についてなのだが……」
ルシアと打ち合わせをした翌日。俺はマルグリッドさんの下を訪ねていた。
「正直、クラウスと懇意になりたがる人物は多くてな、こちらの方である程度は弾くつもりだがそれなりの人数を招待して欲しいと思っている」
俺が従魔にしているモンスターの希少性から顔を繋ぎたいと考える貴族や商人は多い。今のところマルグリッドさんとレブラントさんが間に入ってくれているお蔭で助かっているのだが……。
「暫定だがリストになる。この中に呼びたくない者がいたら弾いてくれ」
早速渡されたリストに目を通す。とはいっても、貴族にほとんど知り合いがいないので見てもよくわからないのだが……。
「後見人には私の方から招待状を送っておくがいいかね?」
その手の手配は勝手がわからないので助かる。
じっとリストを見ていると……。
「何か不都合な点でもあったかね?」
「いえ、反テイマー派の方はいないんだなと思いまして……」
「そちらは私の判断で外してあるが、招待状を送ることは可能だぞ」
その言葉を聞いて俺は顔を上げる。
「本当ですか、是非お願いします」
マルグリッドさんの言葉に俺は反テイマー派を呼ぶように言った。
「……何か企みがあるのなら、事前に話しておいて欲しいのだが?」
彼は俺をじっと見つめるとそう告げる。
「それなんですけど、こういうパーティーを開こうと思ってまして……」
俺は彼にパーティー内容について切り出した。
いよいよパーティー当日になった。
ルシアの実家の業者による大掛かりな整備のお蔭で、庭は綺麗になっており植物や花が植えられパーティーを開くのに十分なスペースを設けられている。
顧客の要望通り、浄化の炎で材料をグレードアップさせた肉料理が大量に並び良い匂いを漂わせていた。
満足できるくらい準備を終えたパーティー会場には、
「なんで従魔が?」
困惑した表情を浮かべる招待客が集まっていた。
「皆さん、本日はお忙しい中、当家のパーティーに参加頂きありがとうございます」
皆の前に立ち、挨拶をする俺。
「若輩な身の上でありますが、こうして家を構えることができたのは、皆様の力添えのお蔭です。今後もご指導ご鞭撻お願いいたします」
挨拶の中身についてもルシアの父から内容を添削してもらっているし、事前に練習までさせてもらったのでスラスラ言えた。
「それでは、パーティーをお楽しみください」
言葉を締め、パーティーが開始になるのだが、誰もが困惑したまま固まって動こうとしない。
「私は現在、国家冒険者として活動をしておりますが、テイマーギルドの一員としても末席に名を連ねています。本日はテイマーギルドの方々をお招きし従魔を入れておりますので、日頃の疲れを癒してもらえればと思います」
俺は周囲の人間を指差した。そこら中に従魔が溢れている。
一応レブラントさんとの協議の結果、制御が難しいモンスターは呼んでいないが、小型の従魔などが多いくいる。
愛らしい姿をしており、招待客の子供もいるのでいけるかと思ったが、誰一人動かなかった。
(駄目か?)
今回のパーティーでの狙いは従魔との触れ合い。
貴族のパーティーでペット同伴というものがあったので、それを従魔にしてはどうかと考えた。
偉大なる先人はテイマーギルドを設立し、この国の貴族に従魔を認めさせることに成功した。
だが、それは表面的なものだけで国民全体に広がってはいない。
実際に従魔と触れ合う人間は少なく、モンスターを忌避する心があるせいか共存にはいたっていない。
だからこそ、こうして実際の従魔と触れ合うことで少しでも皆に従魔の良さを知ってもらおうとおもったのだが……。
誰も動こうとしない中、ロックが動いた。
シルバートレイを運び、近くにいる招待客に飲み物を差し出す。
「あ、ありがとう?」
招待客が受け取ると御辞儀をして次の客に渡す。しばらくそれを繰り返しており周囲の人間も自然とロックを視線で追いかけているのだが……。
「あっ……こけた」
『…………(照)』
ロックは恥ずかしそうに頭を掻くと起き上がり、セリアの下に走ると抱き着く。
「はいはい、痛くないですからね」
セリアがロックをあやすのを見ると……。
「可愛いかも……」
ポソリとそんな感想が聞こえる。
それを皮切りに良い雰囲気が流れ、パーティーが動き出した。
「へぇ、これがゴールデンゴートの乳を使ったケーキなんですね?」
「確かに美味しいかも」
「このモンスター可愛い。人懐っこい」
「幼少のころより育てたので家族のようなものなんですよ」
ところどころでテイマーと従魔が触れ合いをしている。彼らは俺が声を掛けて協力してもらっている。
「改めて国家冒険者試験合格おめでとう」
「おめでとうございます、クラウス様」
メリッサとロレインが話し掛けてきた。
「二人ともありがとう」
彼女たちには段取りをお願いする際にあっているのだが、公式の場で祝われると嬉しくなる。
「紹介は……必要ないかな?」
メリッサに向けて言う。
「ええ、まさかクラウスの妹だったなんてね」
「その節は、御世話になりました」
セリアは頭を下げる。二人は歓談を始める。
メリッサとセリアの関係も良好のようで、ここは彼女に任せておけばよいと思い、場を離れ周囲を見渡していると……。
『あれはなんだ!?』
誰かが叫び声をあげると上空に意識を集中する。
太陽を遮るように影ができ、巨大な何かが庭に降り立った。
『おい、あれって……もしかして……』
『ほとんど、屋敷から出てこないと聞いているが……』
『あんなものまで見られるなんて来た甲斐があったな』
赤い鱗と金色の瞳、家一軒よりも大きな身体を持つ――
「レッドドラゴン」
――この国で最強の従魔の姿がそこにあった。




