傍系王族が王族を名乗るのはおかし――くない! 実例に寄せて
「醜悪公と押しつけられ婚」でちょくちょくいただくこのご感想。
「傍系王族が王族を名乗るのはおかしい。不敬だ」
これは書いた当初からずっと言われておりましたので、かなり早い段階で二話目に注釈を入れておりました。
が、五年経った今でもずーっとこのデマが出回り続けているので、実例を挙げておきます。
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Louise Marie Adélaïde d'Orléans(ルイーズ・マリー・アデライード・ド・オルレアン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%87%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%AC%E3%82%A2%E3%83%B3
リンクはWikipediaのページです。実在の人物です。
読むのがダルいという方に向けて簡潔に…。
彼女はPrincesse d'Orléans(オルレアン王女)の称号を持っていた人物です。
「傍系王族」である「オルレアン公爵」の「王女」です。
???
オルレアン公の名はおそらく聞いたことがある方も多いと思います。
ルイ14世や15世の叔父(大叔父)で、フィクションだとだいたい悪役として出てきます。
なぜオルレアン公は「公爵」なのに、その娘の「公爵令嬢」が「王女」の称号を持っているのでしょうか?
答えはシンプルで、
普通に公爵や公爵令嬢の傍系王族もいる
からです。
フランス王家が歴史エアプだったから公爵の娘に王女とつけた……というわけではありません。
でも、なろうさんだったら絶対そう思われそうな設定ですね。
以下は少し踏み込んだ専門解説です。
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ルイーズ・マリー・アデライード・ドルレアンとは?
オルレアン公の娘で、ルイ13世の次男、つまりルイ14世の「王弟が高祖父」にあたります。
フランスの王弟に与えられる親王領がオルレアン公領だったのですが、それが世襲するようになってできた、いわゆる分家――つまり傍系王族の四代目の公爵令嬢です。
醜悪公に登場する主人公の妹・ローザは三代前が王弟なので、ルイーズ・マリー・アデライードはそれよりももう一世代下の「四代前が王弟」です。
彼女は当時のフランス宮廷においても正式に"princesse du sang" つまり「血の王女/血統親王」として扱われていましたので、当然のように王位継承権も保持していました。
つまり、ただの自認王女のヤバい子ではなく、自他共に認めるきちんとした王女だったのですね。
それでも普段の宮廷で「王女」とは呼ばれていませんでした。
彼女の称号は「シャルトル令嬢」です。シャルトルはオルレアン公爵家の後継者が使用する儀礼称号。公爵の息子が、サブの伯爵位を名乗るようなものです。
また、このへんフランス宮廷の独自ルールになるのですが、オルレアン家は「マドモワゼル」という呼称を唯一許されていたので、ただ「マドモワゼル」とだけいえば、オルレアン公一門の令嬢、つまり王女様、とみんな分かっていました。
当時の教会法においては日本の民放換算で八親等までが正式に親族ですので、彼女は国際的にも認められた、外国にも通用する、歴とした王族です。
傍系王族が臣籍に降下し、王族の籍から抜ける、というシステムは、日本の皇室となろうさんにだけ存在するものです。
もっと言うと、西洋に戸籍は存在しません。
なので、籍から抜けるもなにも、抜くための籍が最初から存在しないのです。
西洋における王族は血筋によって継承されるものです。
王族に生まれついたなら、公爵位を得ようが何しようが一生王族です。




