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転生したら王子になっていました~予想外の事態にも、奮闘あるのみ~  作者: 銀雪
第三章  銀髪の兄弟と国を揺るがす大戦
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『88、アスネお姉さまの模擬戦』

リアンたちとも仲良くなったところで部屋に戻ると、険しい顔をしたツバーナが待っていた。

ふかふかのソファーに座って、何かの資料を食い入るように見つめている。

遠目にだが『ライフ・バーン』という文字が見えて、思わず息を呑んだ。


「ツバーナ、何を読んでいるの?」

「えっ!?・・・ご主人様ですか。脅かさないでくださいよ」


呆れたように言うツバーナだが質問に答える気はないようで、資料をポケットに入れた。

俺も雰囲気がいつもと違うと感じ、それ以上追及するのを止めた。

何か・・・拒絶するような雰囲気を感じるんだよな。


「魔法について学んでいたんです。それより研究所みたいなところはありませんか?

「研究室?それなら外にあるはずだけど・・・」


直接行ったことはないが、確か温室の横に併設されていたはずだ。

温室で育てた薬草を調合したりするのに使うのだろうか。


「そうなんですか。分かりました。そこでご主人様に役立つ魔導具を作ってみせます」

「頑張って。それと間違っても城を壊さないように」


研究に失敗すると爆発するのは、もはやテンプレ的展開である。

しかしグラッザド王国は、各領地を戦争に備えさせるために減税を行っている最中だ。

だから修繕費を捻出できない。


もし破壊しようものならエルフたちに賠償金を払ってもらうしかないな。

ツバーナが元気に出ていってから数分後、ドアをノックする音が部屋中に響いた。

本を読んでいた俺はドアを開ける。


そこには見知らぬ女性が立っており、険しい顔つきをしていた。

先刻のツバーナを見ているようだ。


「あなたがリレン王子ですね。私は魔法局から来た大臣のアロンです」

「はい。それで何の用ですか?」


大臣ということは、この人はカルスやフェブアーたちと同じ地位だということだ。

見た感じは若いのに、なかなか凄いな。


「隣国で失われたはずの古代の魔法が再燃しているという情報を聞きまして・・・」

「古代の魔法?」


隣国というのはウダハル王国だろうか。

正直、その国であれば心当たりがありすぎて何とも答えづらい。


「ええ。アラッサム王国の話なのですが、音楽魔法というものをご存知ないでしょうか」

「アラッサム?僕は知らないけど、どんな魔法なの?」


聞いたニュアンスだと、音楽を利用して人々に何かする魔法というのは分かるが。

武器が楽器なのだろうか。


「特別な楽器を使って音楽を鳴らす魔法です。旋律によって効果が変わるみたいですね」

「まさか支配の効果とかある感じ?じゃないと大臣自ら動かないでしょ」


戦争で使われたら厄介だな。

まさか全員に耳栓をしてもらうわけにもいかないし、古代魔法だから解呪が効くか・・・。

機密情報だし、簡単には漏らさないだろうけど気になる。


「後で資料をお渡しします。そうそう、ウダハルでも妙な魔法が使われているんですよね」

「そうなんだ。調査頑張ってね」

「分かっております。古代魔法は厄介なものが多いですからね。早めに調べないと・・・」


アロンさんが出て行った後、俺は気晴らしにリビングに行くことにする。

どっちにしろ、情報が足りない。

その音楽魔法とやらも全体像がつかめないし、どんな効果があるのかも不確定だ。


全く・・・4国連合も厄介だな。

4つの国のうち2つの国が妙な魔法を復活させてやがる。

後の2つも秘密裏で研究を続けている可能性が高いし、油断ならない状況だ。


まあ、いい。今はまだ考えるときじゃないよね。

リビングに入ると、アスネお姉さまとアリナお姉さまが2人で本を突き合わせている。

一体、何をしているのだろうか。


「アスネお姉さま、アリナお姉さまは2人で何をしているんですか?」

「ああ、リレン。さっき廊下ですれ違ったリアンが意気揚々と訓練場に行くもんだから」


それで負けてられないと思ったらしい。

リアンは今まで恐怖感があったらしいのだが、どこにいってしまったのだろう。

もう払拭されたとかいうことは無いよね?


「そうなんだ。さまたちも訓練場に行ってみれば?リアムと戦ってみればいいじゃん」

「魔法で模擬戦をしろってこと?確かに実戦経験を積むのには最適なのだろうけど・・・」


どうやら王族に不信感を持っているリアンに攻撃するのを躊躇っているらしい。

ボーランとリアムの兄弟のように、戦うことで思いをぶつけて欲しいと思ったんだけどな。

そう簡単にはいかないようだ。


「でも訓練場に行くというのには賛成だわ。ここに書いてある魔法を撃ってみたいし」

「魔法の発動方法だけ知っていても使えないしね」


そういうわけで訓練場にやってきた俺たちだったが、先客が一心不乱に剣を振るっている。

いわゆる素振りというやつだろう。


リアンは目の前にある人形に向かって鋭い視線を向け、「ハッ!」という声とともに一閃。

人形は真っ二つに切り裂かれ、上半身が地に落ちた。

リアンは流れる汗を拭って一息ついたところで、俺たちが見ていることに気づく。


「・・・いつから見ていたの?」

「剣を構えていたところから。僕より鋭い剣筋だったんじゃないかな?」


俺はあまり得意では無いのだが、それを差し引いても彼は僕の3倍くらいは強い。

まともに戦っても歯が立たないだろう。


「僕は戦闘力が足りなかったから、戦いに負けて奴隷になっちゃった。だから強くなる」

「なるほど。お母さんと弟を守ってあげるってことか」

「そうだね。言っておくけど、僕はまだあなたを信用したわけじゃないからね」


そう言って戻ろうとするリアンの肩をアスネお姉さまが掴んだ。

お姉さまの目にはハイライトが無い。


「うちの弟に対してまだそんなことを言っているの?私と模擬戦しなさい」

「どうしてそうなるのぉ!?」


悲痛な叫びも激昂しているアスネお姉さまには通じず、模擬戦が始まってしまった。


序盤は剣を使うリアンが、詠唱に手間取るアスネお姉さまを圧倒する。

彼は最大で五ノ型まで使えるらしいが、弱い攻撃と強い攻撃を上手く織り交ぜていた。


中盤になってくるとアスネお姉さまが徐々に持ちなおす。

お姉さまの適正である火、土、風の魔法が次々とリアンを襲っていく。

防戦一方になってしまったリアンは歯噛みしていた。


終盤に差し掛かってきたころ、アスネお姉さまが杖を構え直して詠唱を開始。

いつもよりも長く、周りの魔力が次々とお姉さまが持つ杖に集まっていくのが分かった。

リアンもどうするべきか分からず、攻めるのを躊躇っている。


「これで終わりよ!私の魔力をほとんど集めた最強の一撃を喰らいな!」

「アスネ様、キャラ変わってないですか!?」


つい奴隷のような発言をしたリアンが後方に飛びのく。

先ほどまで彼がいた場所を白色の光線が貫き、地面がひび割れる。

その顔は悔しさと羞恥心で真っ赤に染まっており、目はお姉さまを睨みつけていた。


「あなたのせいで僕はっ!恥をかかせた罪を償えっ!」


剣に水の魔力を通したのだろう。真っ青になった刃を無茶苦茶に振るっている。

いや、君もキャラ変わっているから。


あれでは近づけないと踏んだのだろうが、お姉さまは意にも介さず風の魔法を放った。

剣に当たって水の魔力が霧散すると、その隙を見逃さず一気に攻撃。

見事、勝利をもぎ取った。


「これで勝利ね。やっぱリアンは強いわ」

「勝った人に言われてもね・・・。僕はまだ鍛錬が足りないのかぁ」


今の実力が分かったのか、リアンが清々しくも一抹の悔しさを滲ませた顔をした。

アスネお姉さまはその顔を見て安心したように笑うと、次の瞬間に膝から崩れ落ちる。


「お姉さま!?どうしたの?」

「魔力切れじゃないでしょうか。あの技は魔力をたくさん使いそうですし」


リアンがアスネお姉さまを見下ろしながら呟く。

俺はアリナお姉さまを読んでアスネお姉さまを介抱してもらった後、訓練に励むのだった。


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