表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら王子になっていました~予想外の事態にも、奮闘あるのみ~  作者: 銀雪
第二章  魔法と領地巡りの儀式
33/153

『リレンと収穫祭(1万PV記念ストーリー)』

なろう限定ストーリーです!

今回は3人称視点で書いてみました。

数日前から、どこか王都が浮ついた雰囲気になっているのを感じ取っていた人物がいた。

しかし、どうするというあては無い。


彼は王城から無許可で出ることを許されていないからだ。

そこで彼は尋ねたいことがあると言って、自身の執事を呼び寄せた。


「ねえ、何か王都であるの?やけに浮ついた感じがするというか・・・」

「収穫祭といって、その年の収穫を祝う祭りがあります」

執事の言葉に彼は納得したように手を打った。


「それで父上が警備の確認をしていたんだね」

「はい。そうだと思います」


彼の名前はリレン=グラッザド。この国の第1王子であり、次期国王でもある。

前世での名前は絹川空といい、両親を早くに亡くした孤独な高校2年生。


多くの人から指示され続けて人格が形作られたといっても過言ではないくらい、孤児院でも、引き取り先でも、学校でも人に指示され続けてきた人生だった。

交通事故で死亡し、転生する際に『指示する側になりたい』という要望をし、女神がその願いを叶えた結果、次期国王になったのである。


ちなみにリレンは、光を受けると輝くサラサラの金髪。海のように碧い瞳、整った顔立ちを持つ5歳の美少年だ。前世での容姿とは比べるばくもない。

優しい性格も重なり、彼の微笑みは『天使の微笑み』と言われているのは周知の事実。

知らぬは本人ばかりである。


「そうでしょうな。お祭りの日はほぼ全員が無防備になりますし」

「だよねー。やっぱりそうなんだ」

「まあ、この国は治安が良いですから、ここ10年は何事もなく終わっていますが」


そう言って微笑むのは、リレン付きの執事、カルスである。

黒曜石のような黒髪と黒い瞳を持つ人物で、気の利く執事としてリレンからの信頼は厚い。


「フェブアー、僕も収穫祭に参加してみていい?」

リレンはソファーに座っている女性に声を掛けた。

彼女の名前はフェブアー。元騎士団長で、今はリレンの護衛隊長を務めている。

燃えるような赤い髪と橙色の瞳を持ち、『太陽の騎士』という異名を持つ。

その異名には髪などの色に加え、敵を焼き尽くすという意味も含まれているという。


「いいですよ。護衛は私が担当しますし」

そう言って手元の剣を弄ぶ。

その剣は主従関係の証として、リレンがソラスという名を付けた剣である。

意味は光の剣で、先ほどの異名の認知度を高める原因にもなっていた。


「やったあ!フェブアー、ありがとう」

リレンが天使の微笑みを浮かべると、フェブアーはサッと視線をそらした。

その顔は赤く染まっており照れていることを現していたが、リレンは全く気づかない。


「それで・・・収穫祭はいつからいつまでなの?」

「1週間以内には行われると思いますが・・・。フェブアー、いつだったか覚えてますか?」

カルスも正確には覚えていないようだ。

フェブアーが首を傾げ、ズボンのポケットから手帳を出す。


「今夜ですね。今年の収穫祭は1日限りということで例年以上の人が来る予定です」

「今夜!?しかも1日限りって・・・。マズイ、早く仕事を終わらせないと」


領地巡りの旅がもう2週間後に迫っていたのが原因で、リレンは仕事に追われていた。

本来は5歳のリレンが仕事をする必要は皆無なのだが、彼が進んで行っているのだ。

前世の孤児院で体調チェックや皆の要望を纏めた書類を書いていたのが功を奏している。

リレンの書類は美しくて見やすいと大臣たちからも評判が高い。

だから父であるモルネ国王も悪いとは思いながら、ついつい頼ってしまうのだ。


「私もお茶を淹れたらお手伝いしますので、一緒に収穫祭に出ても?」

「おりがとう。もちろんカルスも一緒に来ていいよ。というかむしろ来て欲しいな」


リレンにとってカルスとフェブアーは特別な人物である。

それゆえ、彼の中では2人と一緒に楽しみたいという願望が沸き上がっていた。

普通、執事は置いていくのだが、リレンがそんなこの世界の常識を知っているはずもない。

カルスはお茶を淹れながら1人舞い上がっていたという。


「寒くなってきましたから魔導具をつけますね。くれぐれも風邪はひかないように」

「お願いするよ。旅をして国民たちを救うんだから、風邪なんてひいている暇は無いし」


フェブアーが気を利かせて魔導具のスイッチを入れた。

自分が寒かったからリレンを理由にして付けたのだが、リレンも同じ気持ちだったようだ。

その後は3人で協力して仕事を終わらせ、城下町に繰り出す。


「うわぁ・・・すっごい!普段見ている王都じゃない!」

あちらこちらに屋台が出ており、普段よりも多くの人が行きかっていた。

いつもは穏やかな空気が流れている噴水広場も今は屋台のせいか、活気づいている。

年相応にはしゃぐリレンを見てカルスとフェブアーは頬を緩めた。


(とりあえずこの近くを回るか。お腹も空いたしカルスたちとご飯を食べたいな)


そう思ったリレンは噴水広場に向けて歩みを進めていく。

屋台は串焼きが多く、お腹が空いている3人にとっては暴力的な匂いが漂ってくる。

腹の虫が鳴く中、リレンは王都散策の時に会った串焼き屋さんを見つけた。


「おじさん!今日はここにいるんだ!」

「おう、ぼ・・・リレン王子!また来てくれた・・・んですね。嬉しいです」


おじさんにとっては、数ヶ月前に来た少年がこの国最強の騎士を控えさせて来たのだ。

不敬罪になりやしないかと気が気じゃない。

慣れない敬語でたどたどしく再開を喜ぶと、リレンは頬を膨らませた。


「もう・・・おじさんはいつものままでいいんだよ。僕は不敬だなんて言わないし」

「安心してください。王子がこう仰ってるのですから、我々はそれに従うのみです」

カルスが言外に自分たちも見逃すよというフォローを入れる。

絶妙なタイミングで挟まれたため、信用したおじさんは相好を崩してリレンに笑いかけた。


「なら今まで通りにいかせてもらうぞ。坊主、今日は何を買いに来たんだ?」

「そうだね・・・ブァイスミノタウロスの串焼きを3本貰おうかな?」


脇にひっそりと置かれている串焼きを指さしながら言う。

レア食材のため値段が高く庶民で買うのはキツイが、貴族がそもそも来ないのだ。

彼らはここのような庶民街では無く、貴族街で祭りを楽しむ。

そんな状態であったため、リレンの申し出はある意味では僥倖であった。


「いいのか!?ありがとうな!」

「どうしてお礼を言われるのか分からないけど、その肉を食べて見たかったんだよね」


リレンにとっては見たことが無い食材である。

しかも少ししか無いため、美味しくて売り切れ直前なのではという勘違いをしていた。

値段が高いのも、人気の所以と思っている。


一方、カルスとフェブアーは脇に立ちながら冷や汗をかいていた。

ヴァイスミノタウロスがそこそこのレア食材であることを理解していたからに他ならない。

しかも自分たちも今に至るまで食べたことが無い食材だったのだ。


「ほい。ここにある残りの2本は後ろにいる人たちに上げていいんだよな?」

「そうして。気を利かせてくれてありがとう」

後ろに控えていたカルスとフェブアーを見ながら、リレンが屈託のない笑顔で言った。

2人はぎこちない動きで串焼きを受け取る。


「おお・・・ヴァイスミノタウロスの肉か。これまた随分といい肉をご馳走してあげてるな」

「父上!?どうしてここに?」


騎士5人を従えながら背後から近づいてきたモルネにリレンが驚きの声を上げた。

カルスとフェブアーは慌てて臣下の礼を取ろうとするが、串焼きのタレがそれを阻害する。

零れでもしたら護衛としては恥ずかしいことこの上ない。


「いい。せっかくご馳走してもらったレア食材だ。価値を知らなかったとはいえ、護衛に・・・」

「価値?この肉はそんなに貴重なものなのですか?」


串焼きを頬張りながらリレンが尋ねると、モルネに付き従っていた騎士が声を上げる。

嫉妬にまみれた目線がカルスたちに突き刺さった。


「その肉は1切れで大銀貨1枚ですが、肉厚で脂ものっているため貴族に人気です」

この世界の1切れは大体250グラムくらいだ。

そして、大銀貨1枚というのは日本円で1万円に当たる。


自分が買った肉がそこまでのものだとは思わなかったのか、リレンが瞠目した。

屋台を振り返り、銀貨4枚という値段を眺める。

騎士が言った価値と大体釣り合うということを確認すると誤魔化すような笑みを浮かべた。


「まあ、皆にはいつもお世話になっているから・・・」

「モルネ様、僕たちにも買ってくださいよ。カルスたちだけなんて不公平ですよ?」

「そうですよ。俺たちだって毎回国王様を護衛しているじゃないですか!」

リレンが言い訳をした途端、騎士がモルネに向かって爆弾を投下した。

顔を引き攣らせたモルネは、明らかに自分たちから視線を逸らしているリレンを睨む。


「おい、どうしてくれるんだ。儂まで買わなければならなくなったじゃないか」

「えっと・・・ご愁傷さまとしか言えないというか何というか・・・」

モルネが見せているハイライトが無い目を見たリレンは、冷や汗をかきながら後退る。

後頭部をカルスにぶつけたところでリレンは後退るのを止めた。


「はあ・・・まあいいや。確かにお前たちには苦労をかけているからな。特別だぞ?」

「ありがとうございます!リレン王子もあざっす!」

「何か僕に対してだけ軽くない?」

リレンの呟きに反応した騎士は不敬罪に当たると思い出し、途端に顔を青ざめさせた。

慌てて臣下の礼をして許しを乞う。


「失礼いたしました。どうか不敬罪だけは勘弁してくださいませ」

「おいラルゴ、その軽薄な言葉遣いを直さないと、いつかやらかすぞとあれほど・・・」

フェブアーが呆れたように言った。


ラルゴは以前にも、軽薄な言葉遣いでケイネというリレンの母に挨拶してしまったのだ。

当時は騎士団長だったため、背筋が凍る思いをしながら謝って何とか事なきを得た。

あんな思いはもう二度としたくない。


ちなみにケイネはリレンと似てそういうのを気にしないタイプなので、怒ってはいなかった。

当然、軽薄だと注意はしたが。


「本当に申し訳ありません!しかも王族の方に2回も・・・」

「僕にならいいけど、他の人にやらないでよ?――あ、イベントが始まっちゃうじゃん!」

懐中時計を見たリレンが身を翻し、噴水広場の中央に向かう。

カルスとフェブアーも、年相応に楽しむリレンを微笑まし気に見つめながら後を追った。


イベントとは、噴水がライトアップされるというものである。

勢いよく吹き上がる水とカラフルな光は街灯が少ない広場では良く映えるのだ。


(やっぱりイベントは祭りの醍醐味だよね!)


ワクワクしながら最前列に待機するリレンの前で、水が勢いよく吹き上がる。

周りのボルテージは最高潮に達しようとしていた。

そんな熱気に答えるかのように吹き上がった水は朱色に染まっていく。


大きな噴水を取り囲むように水の壁が完成し、それらが全て朱色に染まった時、一際大きな水の柱が中心部分から吹き上がった。

周りが朱色だからか、その水は仄かに白く染まっている。


「紅白をイメージしているのですね。このイベントは今からが見どころですよ?」

「そうなんだ。どうなるんだろう?」

フェブアーの解説に耳を傾けながら噴水を見ていると、色が段々と変わっていく。


周りの水の壁の色は黄、青、緑、紫と10秒間隔で変わっていた。

中央部分の色は白のまま変わっていなかったが、水量が増しているのを感じる。

やがて水の壁の色が金色になったと思ったら、中央部分から碧い水が噴き出してきた。

リレンを含めた、噴水の周りにいた子供たちに金の雨と碧い雨が降り注ぐ。


「綺麗・・・。それにしてもラストが金と碧って面白い組み合わせだね」

「あ、あそこにリレン王子がいる!だから最後の締めが金と碧だったんだ」


(俺がいるから締めが金色と碧色?)


首を傾げたリレンに答えを教えてくれたのは、意外な人物だった。


「このイベントは、噴水の周りにいる人たちの中で一番身分が高い人の髪と瞳の色で締めるのよ。今年は運良くリレンの色になったみたいね」

優しく微笑みながら現れたのはリレンの母、ケイネ=グラッザドである。

後ろには女性騎士4人が控えていた。


「そうなんだ。母上も収穫祭に来ていたんだね。もう終わるけど」

「そうね。うっかり時間を間違えちゃった」

ケイネは悲しげに笑うと、空に向かって手を掲げた。


「でも収穫祭最後の火魔法による天空ショーは見れるのだから構わないわ」

「天空ショーって・・・あれは花火という名前だと言ったはずだけど」

呆れたように肩を竦めたリレンの顔を、轟音とともに赤い光が包む。

花火が始まったようだ。


ケイネに体を預けながら、リレンは夜空に咲く花火を眺めていた。

前世では感じられなかった家族の愛情を感じながら・・・。

今まで、このような拙作を読んでくださりありがとうございます。

1万PVという節目を迎えられたのも、応援してくれる読者様のおかげです!

物語はまだまだ続きますので、これからもお付き合いいただけると嬉しいです。


面白いと思ったら、評価よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ