SCENE 44
まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい。
荷造りを中断してレイシーたちと一緒に自宅に戻ったあと、リビングでディナーにと注文したピザを食べながら談笑しているところを抜け出して自室へと戻ったジャックは、閉めたドアにもたれてうずくまり、両手で頭を抱えて、真っ暗な部屋のテーブルの上にあるはずの紙袋を見つめた。
もうすぐ二十時になる。今から行っていいものなのか? そもそも、パーティーは何時までだった? ランチ・ブレッド・カフェは何時までの営業だった? いや、だが、時間など言っていなかったような。
ああ、もう、考えるだけ時間の無駄だ。会ったら会った時だ。
数時間ぶりに携帯電話の電源を入れると、ジャックはタクシーを呼んだ。クラクションは鳴らすなと言った。誰にも見られたくない。訊かれたくない。これは、自分だけの秘密だ。少なくとも、今は。
タクシーを待つ数分のあいだに、オレンジ色の紙袋からマイクにもらった白い封筒と便箋を取り出し、ペンを使って、簡単な手紙を書いた。好きだと書いてしまいたい気持ちを抑えた。封筒に入れたそれを包装紙にはさんだ。
外は雨が降っていた。タクシーが家の前に停まったことを確認すると、紙袋を抱えて一階におり、そのまま玄関を飛び出した。
雨足は強まる一方のようだった。タクシーに乗り込むと、完璧に暗記しているジェニーの住所を運転手に告げた。
タクシーが彼女の家に近づくにつれ、心臓の鼓動は大きくなった。せめて箱が濡れないようにと身体に押しつけた紙袋を抱える腕に力がこもる。
気持ちを伝えたい。だがその前に、レイシーとちゃんと話をしなければいけない。
「着きましたよ」
タクシーの運転手の声で声ではっとし、ジャックは顔を上げた。
──ここが、ジェニーの家。
運転手に待っていてくれと伝えると、箱を抱えて車を降りた。
芝生。白とオレンジ色のライトが照らす花鉢。玄関へと続く、敷き詰められた赤いレンガ。玄関ポーチに木製のポストが立っていて、ジェニーの名前も確認できた。濡れたオレンジの紙袋から手紙を挟んだ箱を取り出し、ポーチに置いた。
ベルを鳴らそうかとも思ったが、ジェニーはまだ帰ってきていないかもしれない。運がよければ、彼女がいちばんにこれを見つけてくれるかもしれない。
ベルを鳴らそうとした手を止め、ジャックはタクシーで家に戻った。
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自宅玄関の扉を開けて中に入ると、リビングに入ろうとしていたレイシーに見つかった。
「やだ、ずぶ濡れじゃない。」
見つかった。
「ちょっと待って、タオル──」
「いいよ、大丈夫。心配ないから。すぐにシャワー浴びるし」
気まずそうに微笑むと、ジャックはジャケットを脱ぎながら彼女のほうへ歩きだした。
彼女の横を通り過ぎようとしたところで、彼女が腕をとった。
「あとで部屋に行ってもいい?」
──レイシーとちゃんと、話をしなければならない。
「うん、あとで」




