名君の着ぐるみ作戦と、帯紅の精神崩壊
冷たい雨が降り続く曹操軍の本陣。 総大将・曹操と客将・劉備は、余裕の表情で戦況を眺めていた。
曹操は笑う。
「ふはは、劉備殿。勝負は決したな。呂布め、陳宮の『掎角の勢』を却下して城に引きこもったそうだ。 あの男は武勇ばかりで、本当に頭が回らん猪武者よ」
劉備は静かに頷く。
「……ええ。身内を疑い、城に閉じこもる。あれでは自滅を待つばかりですな」
その時――
ドゴォォォォン!!
地平線の向こうから地鳴りのような爆音が響いた。
■ 赤い流星、爆誕
城門が内側から吹き飛び、 一騎の“赤い流星”が猛烈なスピードで突き進んでくる。
赤兎馬に跨り、方天画戟を振り回す男――呂布である。
曹操:「な、何ごとだ!? 呂布が出陣してきただと!? 妻に引き止められていたはずでは……!」
斥候:「ほ、報告します! 呂布軍、精鋭の騎馬隊を率いて突撃してきます! しかも……将軍の様子が変です!」
劉備:「変とは?」
斥候:「ものすごく嬉しそうなんです! 『俺は名君だー! 天下無双の名君だぞーーー!!』と叫びながら、 満面の笑みで我が軍を真っ二つにしています!!」
曹操・劉備:「め、名君……!?」
■ “褒められたい呂布”の宇宙規模モチベ
普段の呂布なら、イライラしながら暴れるだけだ。 だが今日の呂布は違う。
貂蝉に「世界一カッコいい名君」と褒めちぎられた結果、 モチベーションが宇宙規模まで跳ね上がっていた。
呂布:「ガハハハハ! 見ろ曹操! これが名君のライトニング・アタックだーーー!!」
(※そんな技名はない)
呂布が武器を一振りするだけで、曹操軍の兵士が十数人まとめて空を舞う。
夏侯惇:「うわあああ! 防げ! ……って無理だろあんなの! 聞いてた話と違うぞ! なんであんなに元気なんだ!!」
■ 城壁の上:陳宮、冷徹に指揮しつつ胃痛
城壁の上では、陳宮が冷徹な目で指揮を執っていた。
「ふっ、筋肉ダルマ……いや、呂布様の操縦法を覚えた我が軍に死角はない。 全軍、突撃! 曹操の補給部隊を背後から遮断せよ!」
高順率いる最強歩兵「陥陣営」が出撃し、 曹操軍を後ろから挟み撃ちにする。
完璧な『掎角の勢』が完成した。
陳宮(心の声): (……貂蝉殿の“天然の皮を被った怪物性”がなければ、呂布様は動かなかった…… やはり恐ろしい……!)
■ 曹操、完全に誤解する
曹操:「馬鹿な……陳宮め、どんな手を使って呂布を説得したのだ!? あの猜疑心の塊が、これほど完璧に陳宮の策を信じて動くなど……!」
劉備:「(……いや、斥候は『ヒーローになりたい』って言ってたが……)」※心の声
呂布:「逃がすかぁぁ! 曹操! お前の首をデコレーションケーキにして、 愛しい貂蝉にプレゼントしてやるーーー!!」
曹操:「デコレーション……何だと!? 訳の分からんことを言うな! ひぃぃ、引け! 全軍退却だーーーっ!!」
曹操軍は、ただただ「話が違う!!」と悲鳴を上げながら敗走するしかなかった。
■ 戦後:控室にて
呂布が豪快に笑いながら部屋を出ていくと、 貂蝉と陳宮は控室に残された。
貂蝉はにっこり笑う。
「とりあえず第一関門突破ね、陳宮先生」
陳宮は胃を押さえながら書類をめくる。
「……しかし『名君のライトニング・アタック』とは何だ。 私の完璧な戦術に、アホな名前をつけないでほしいのだが」
「いいじゃない、勝ったんだから」
貂蝉は軽く笑い、次の作戦を語り始めた。
「それより先生、次が本番よ。 徐州の民たちに『呂布は素晴らしい名君』って思わせる広報戦略を練りましょう」
陳宮は頷きつつ、ふと控室の隅を見る。
そこには、呂布の正妻・厳氏の侍女であり、曹操の密偵でもある帯紅が座っていた。
■ 帯紅、惚気で精神崩壊
貂蝉は帯紅に向き直り、恋する乙女のように語り始めた。
「ねぇ帯紅さん、昨日の戦いの前にね、将軍様にこう言ったの」
帯紅:「……なんと、申し上げたのですか?」
貂蝉は頬を染めて言う。
「『将軍様に落ち込んだ姿は似合いません。 私のヒーローのカッコいい姿がまた見たいです……』って、 涙をポロポロ流しながらすがりついちゃったの」
帯紅:「(……は?)」
「そしたら将軍様ね、 『おう! 俺が本当のヒーローってやつを見せてやる!』って出陣されたのよ。 もう、将軍様って本当に可愛いの!」
帯紅(心の声): (……惚気!? 惚気で戦局が動いたの!? 曹操様の離間計が……惚気で……? 天然って……怖い……!)
(※違う。怪物だ。)
■ 貂蝉の殺気、帯紅には“天然の圧”にしか見えない
貂蝉:「帯紅さん、将軍様のこと……単純って思った?」
帯紅:「ひっ……!? い、いえっ、滅相もございません!!」
貂蝉:「(にっこり)単純って言っていいのは、私だけなのよ?」
帯紅(心の声): (天然のくせに……なんか圧がすごい……! 天然の圧ってこんなに怖いの……!?)
(※違う。怪物の圧だ。)
■ 廊下の陳宮、貂蝉の怪物性に震える
陳宮(心の声): (……やはり噂は本当だったのか…… 董卓政権を潰した影の女……!)
貂蝉:「陳宮様、聞いてるんでしょう? 呂布様のことを悪く言ったら……刺しますわよ?」
陳宮:「ひっ……!? き、聞いておらぬ!!」
帯紅(心の声): (……貂蝉様は天然なのに……なんで陳宮様があんなに怯えてるの……? 天然って……すごい……!)
(※違う。怪物だ。)
■ 帯紅、完全に壊れる
帯紅(心の声): (……だめだ……! 私は今、呂布軍の“天然惚気の渦”に飲み込まれている……! 曹操様にどう報告すれば…… 『呂布はヒーローになりたくて出陣しました』なんて…… 死ぬ……絶対死ぬ……!)
貂蝉:「帯紅さん、お団子でも食べて元気出しましょ?」
帯紅:「(ひぃぃぃぃっ!!)」
帯紅(心の声): (……天然の優しさが……逆に怖い……!)
(※違う。優しさじゃなくて監視だ。)
(第2話・了)




