97話 魔法が使えない俺と野次馬幹部
「『炎撃絶影剣!』」
炎を纏った5体の分身が、すごい速さで一斉に突っ込んでくるね。そんじゃ俺も見せてやろうか?分身。
「『瞬幻蹴』」
「・・・あ?」
なに、簡単な話。早く左右に動きながら、ちょっと間を取ったりペースを変えると・・・相手から見たら分身してるように見えるわけだね。
「な、お前!!体が・・・!」
「そんな寝ぼけた分身、通用しないね。分身はこうやるんだよ」
アイツか的には、俺が10体くらいに見えてるんじゃないかな?んで、この状態を維持しながら、はい『縮地』。
「ありえない!魔法ではないのに、そんなこと!!」
「鍛えてますから。『鳥襲刹牙』」
エジールの分身より2倍の物量で、高速剣術を喰らわせにかかる俺。
「たくやさんが分身してますよ!!!」
「ご、ご主人様がいっぱいなのです!!!」
「あなた様!ああ!なんて神々しいのですか!!!」
そんなに興奮する事でもないし、魔法でもないからそこまで凄いもんでもないんだけど・・・
はい、じゃあエジール本体と分身まとめて、一閃!!
角が折れて、翼もボロボロ。会心の一撃をもらった元団長はその場に倒れちゃったね。アデュー?
「はぁ、ぅあぁ、コフッ」
「頭に上った血、少しはなくなったんじゃねえの?」
他に伏せたエジールは、ぶつぶつ小さく呟きながら、血反吐を吐いてるよ。
リーナがこっちきて、エジールの大剣を重たそうに持ち始めたけど、自分の手で首を切るのかな?
「リーナ、やめた方がいいよ。その手を汚すんじゃあない」
「なんで。この人は仇。許せない」
泣きながら手を震わせてるね。可哀想に。
まあしょうがないよなぁ、父親殺されてるし、ここまで街をズタボロにした奴に対しての怒りなんて、計り知れないよな。
「んー、リーナの手は、街を導く為の手だからね。一回汚しちゃうと取れないもんなんだよ、人殺しの汚れってさ。俺的には、綺麗な手のまま街の人の手を取って、引っ張ってほしいかなぁ」
なんとなくのニュアンスでリーナに伝えたけど、伝わった?
念押しに、大剣を持ってる手を握って、やめるように促そうかな。
ちょっと考えたあと、両手の力が抜けて、大剣を落とした。
よしよし、無駄な殺生をさせずに済んだね!
「処刑すんのは俺の仕事でしょ?」
「・・・うん、そうだった。お願い」
俯いて首を垂らして震えてるけど、まあ飲み込んでくれたみたいだね。
さて、と。こいつを粛清しますかね。
「あ、あぁ、雰囲気。そうか、お前は・・・あの人の」
「なに?死ぬ前に一言か?」
エジールがほっそい声で喋り出したぞ?あと、俺のこと喋ろうとしてんのか?
「あの人に、小さい頃・・・助けられたから、正義の道を歩んだ筈が、何故こうなったのだろうなぁ・・・」
「そうだなー、思想に囚われすぎたんじゃない?決めつけは良くないのよ」
「そう、かもな。はぁはぁ、似てるな。あの人に」
「あの人って誰さ?」
「ゆうた・・・」
ゆうたったら英雄のアイツでしょ?
前に確か、俺がゆうたの息子か孫説出てたっけ?
他人の空似なんじゃね?
・・・あ、なんか来るな。
この感じは、あいつだ。
急に黒い楕円の空間が出てきて、男が1人出てきたよ。
「あーあ、ダメだなぁ。こんなんじゃあ」
そうだね、魔王幹部のイジャだね。なんでここに来たんだ?野次馬?
「何しに来たのかしら?あいつは」
「ミシア、そんな眉間に皺を寄せるなよぉ、厚塗りが台無しだよ?」
「うるさいわよ下衆」
相変わらずミシアとイジャは仲悪いなぁ。とりあえず斬っとくか。よっと!
「うお!危ないなぁ!たくや君はほんとせっかちだよなぁ」
「敵なんだから当たり前でしょ。で?なんか用?」
ご自慢のワープでかわされちゃったよ。
ほんとイラっとするやつ。ニコニコしてきもちわりーし。
「うん、見に来ただけだよ。こいつがどうなってんのかなーってさ。そしたらもう全然ダメだね。面白くなーい」
「・・・は?どういうこと?」
ニタニタしながら元騎士団長を見下すイジャ。
こりゃ、なんか裏がありそうだな。
「だって、こいつ唆したの、僕だもん」
だそうです。
曰く、エジールに色々と入れ知恵したり、憎悪を増幅させる様な事をして、この計画を仕向ける誘導をしたんだって。
傍迷惑なやつだなぁ。
「そんな事した理由が一切分からないんだけど?」
「簡単さ。面白いだろう?僕の手のひらで転がり、もがくサマを見るのがさ?んで、魔力増強石の偽物で、テロスのパンデミックが起きたら、もう腹抱えて笑っちゃうくらい、楽しいんだよ」
あ、はいはい。ミシアが言ってたクズだのなんだのって、こういうことね。
シンプルに性格終わってるじゃん?
よし、殺そう。




