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237話 魔法が使えない俺と歪みと白

ねじれ空間。


後ろに並ぶ緑の液体を内包したガラスケースまでもがぐにゃりと曲がり、空間そのものが螺旋を描いてるよう。


見てて気持ち悪い。


魔法による攻撃なのかと思い、床を斬ってはみるものの、効果は特にない。


つまり、この空間自体は魔法によるものではなく、単純な自然現象として起きている事になる。


そんなのありかよ?


しかし、分かったことがひとつだけある。


空間が捻れ、天地左右が逆転して入るものの、人間自体に影響はないということ。


つまり、空間が捻れているからといって、人は捻れない、ってことかな。


俺は動かないフィーリスを担ぎ、レミリアの元へと向かう。


近づかない。


走っても走っても、彼女の元へ行く事が叶わない。


恐らく、イジャの能力の影響だ。


奴がこっちに向かわせまいと空間を歪ませている。


めんどくせぇ奴だなぁほんとに。



「『ウィンド・パニッシュ!』」


レミリアから現れる大きな風の塊。


それが弾けたと思いきや、無数の棘となってイジャに襲いかかる。


だがそれは、奴にとって無意味に等しい。


風の棘はイジャの目の前で停止し、形が変形したと思えばそのまま爆散する。


この空間において、イジャへの攻撃は全て曲げられてしまうということだ。


「・・・っ!」


思わずレミリアの顔が引きつる。


「無駄だよ。僕に触れることは出来ない。なんたって、僕にたどり着く前に、空間が歪んでしまうんだからね」


イジャは腕を上げ掌を開く。


掌の先から黒い魔力の塊が現れ、それがどんどん肥大化していく。


「そら、君がやろうとしたことだよ」


肥大化した黒い物質が、レミリアの時と同様弾け、無数の棘となって今度は彼女に襲いかかる。


「なっ!」


一瞬彼女は怯んだが、直ぐに魔法を発動し自信の周囲を守るように、桐生が荒れ狂う風のバリアを作り出す。


しかし


「ダメダメ、そんなことしたら」


風が歪み、彼女を煽っていた風のバリアが消える。


驚愕の表情でその光景を目の当たりにするものの、短剣を手に取り魔力を集中させ、向かってくる黒い棘を弾く。


素早い動きで数々の棘を弾き続けるものの、何発かがすり抜け、レミリアの太ももと肩に刺さる。


刺さった箇所からは流血し、身体から赤い液体が滴る。


「ぐっ・・・!」


頬や脇腹を掠めつつも、棘の弾幕は終えた。


しかし、アドバンテージは明らかにイジャ。


その様子を見て、奴は歪んだ笑顔を見せる。


「いい顔だねぇ。ヒヒッ、死なないエルフに似て僕好みの表情だよ。さぁ、もっと見せて?」

「この、下衆が!」


黒い魔法陣がイジャの周りに展開され、魔法陣からは黒い閃光が何発も発射される。


レミリアは閃光を避けようとステップを踏むものの、黒い魔法は彼女の動きに合わせるように角度をクンと曲げ、腕を掠める。


他も同様に、彼女に直撃はしないながらも確実にレミリアを傷だらけにしていく。


服が破れ、かすり傷だらけになった肌が露呈する彼女の腕、脚、顔肩、脇腹、長い耳から血が滲む。


「はぁはぁ」と息遣いを荒げつつ、痛みを歯軋りで抑えるような苦悶の表情を浮かべる彼女。


それを見て舞い上がるクズ。


「いいね、いいねぇ!その目!その顔!その身体!あぁ、君最高だよ。もっと見せてよ。ぐちゃぐちゃにしたい、分割したい!!ありとあらゆる部位を痛めつけたら、どんな顔をしてくれるんだい!?!?」

「き、貴様の性癖に・・・付き合って、いられるか・・・」


き、きめぇ・・・


体の歪みは心の歪みとはいったものだけど、コイツの場合は空間が歪んじまってるもんな。


なら、性根が捻じ曲がってるからこんな能力を持っているんだな。


レミリアがどうにかなる前になんとかしてやりたいが、近づけないしなぁ。


剣を振っても特に何も変わらないし、さてどうするか・・・



俺は気付く。


あらゆる物体、空間が歪み、捻れている中、人以外にも影響がないものがある。


それは、フィーリスと関係があるらしい里と同じく漂ういくつもの光の玉。


これだけは、歪まず、絶対に消える事がなく、フィーリスの周りだけ異常に多い。


これは何か関係があるのか?


一度足を止めて、光の球を凝視する。


なんとなく、指先を光の球にそっと触れてみた。


すると


◇◆◇


白。


見渡す限り何もない、真っ白い空間についた。


んだここ?


地に足がついてるのはわかるけど、空中なのかどうかもわかんねえ。


ただただ白い。


俺さっきまであの気持ち悪い捻れ空間にいたよな?


んで、光の玉を触ったらここだよ。


何がどうなってんだかなぁ・・・


とりあえず歩くか。



・・・なんもねぇ、


歩いても歩いても、ただただ白一色。


ったく、大変な時だってのに、なんでこう意味不明な事が・・・うん?


奥の方。


膝を抱えて座っている人形。


近づいていくと鮮明になってく。


長い耳に、金髪を垂らして俯く恐らく女の子。


これはー、あれだな。


フィーリス?かな?


俺は目の前まで近づき、片膝をついて様子を見る。


うーん、息してる感じはあるかな?


なんとなく肩を揺すってみる。


「生きてる?」


エルフは俯きながらもピクッと動き、徐々に顔を上げていく。


目が大きく可愛らしい顔が現れ、無表情というよりは少し物悲しげな顔を向けている。


レミリアに少し似てるかも?多分フィーリスだよな?


なんでこんなところに・・・


「初めましてたくやさん、私はフィーリスです」

「え」


俺の名前知ってるってマジ?


一度も会ったことないんだけど?


「俺の名前、なんで知ってんの?」

「ずっと、見ていましたから。光の玉から外のことを」


なるほど?


ヴィルクザールとここら辺に浮いてたあれが、ファーリスにとっての目だったってことか。


まあそもそも、ここがどこか分からないんだけど。


って思っていると、フィーリスが俺の内心を読んだかのように話し始める。


「ここは精外空間、いわば精神の逃げ場所です」

「逃げ場所?」

「はい。私は奴に捕まり、長い時間苦痛を味あわされました。特殊な鎖に繋がれ、魔法も使えません。限界まで達した時、私の中の物がこの空間を作り出して、精神をこっちに避難させたのです」


うーん?


つまり、フィーリスの中にある刻桀石の力が、彼女の精神を別の場所に移し替えたってことか。


んじゃあ、肉体はマジで人形みたいなもんで、所謂空っぽって感じかな。


それにあの鎖ってあれだよな?


ニナと出会った時に繋がれてた鎖と同じようなもんか。


「そしたら、結構長い間ここに居続けたわけだな。・・・そういえば、俺たちを助けた雷ってフィーリスの魔法だよな?鎖に繋がれてたら使えないんじゃ?」


俺の問いに、フィーリスはコクリと頷く。


「普通ならば使えません。刻桀石と光の玉、森のマナ、そして私の精神力を利用して発動しました。精神力と魔力は比例しますので、刻桀石を利用すれば可能でした。・・・あの怪物を生み出したのは私のせいですから、倒さなければと思い・・・」


意味が少し分からんが、要するにめっちゃ手順踏んだら、使えたよってことか。


・・・マナってどっかで聞いたことあるような。


「別に、フィーリスのせいじゃないでしょ。悪いのは幹部のイジャなんだし。それに、鎖も壊したし、レミリアもこっち来るんだから、そろそろ肉体に戻ろうよ」

「・・・」


少しの間沈黙が訪れる。


無音の空間の中で、ゆっくりとフィーリスは首を横に振った。


なんで?


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