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この復讐は、私が望んだ結末です  作者: 四葉美名


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32話 復讐の終わり

「ち、父上。とにかく約束通り謝罪をしましょう。誠意を込めて謝り、国を立て直さなくては」


 オーエン様が陛下の背中にそっと手を置き、何度も同じセリフを繰り返す。それでも国王は眉間にシワを寄せ、まるで体が固まってしまったかのようにその場に立ち尽くしていた。


「陛下! このままでは、私たちは城を追われますよ!」


 ここまで悪行が露呈し、目の前には被害にあった国民がたくさんいるのだ。彼らが私に謝罪しなければ、オーエン様の言うとおり暴れだしてもおかしくない。


 陛下もそれはわかるのだろう。グッと拳を握りしめると、小さな声で呟いた。


「……わかった。謝罪しよう」


 その言葉を聞いたオーエン様はすぐさま陛下を連れ、私の前にひざまずく。そして一番前に殿下と陛下、後ろには父とシャルロットが座り、頭を下げた。


「スカーレット、私は君という婚約者がいながらシャルロットと関係を持ち、君を傷つけた。本当に申し訳ない。許してくれ」


 最初に口を開いたのは、やはりオーエン様だった。気持ちの切り替えが早い彼は、さっさと謝罪の言葉を言うと、また頭を下げる。そしてその殿下の言葉に呼応するように、今度はシャルロットが立ち上がった。


「お、お姉様! それでしたらオーエン様よりわたくしを恨んでください! わたくしが世間知らずなばかりに、気持ちのままに動いてしまいました。お姉様を傷つけるつもりはなかったのです。許してください……!」


 なんだか少しずれた謝罪だけど、まあ想定内だ。最初から彼らが心から謝罪するとは思っていない。私はそのまま視線を隣に移し、父親の顔を見つめた。


「ス、スカーレット。私は娘を二人とも愛しているんだ! だからこそ二人にとって良い道を作ってやったつもりだ。おまえはあの時すでに王室に嫁ぐことは決まっていた。なら妹のシャルロットにも良い未来をと思ったまでで、悪かったと思っている」


(それならば、そもそも私に相談するのが筋なのでは? それに私の貴族籍を抜かす必要はなかったはずですけど?)


 結局謝罪している姿を見せれば、それで事態が収まると思っているのだろう。予想どおりの謝罪とはいえ、呆れ果てる。それでも私は最後の言葉を聞くために、陛下のほうに顔を向けた。


「……すまなかった。許せ」


 陛下はボソリとそう呟くと、もう役目は終わったと言わんばかりに立ち上がった。その様子にオーエン様たちはオロオロとしているけれど、私やシモン様はとがめるつもりはなかった。


(最初からあなた達が心から謝るなんて期待していないわ。私はただ彼らの罪を知ってもらいたかっただけ。あとの復讐は、他の人に任せましょう……)


 私だってそんなに暇ではない。カリエントでは私たちの結婚を祝福しようと、たくさんの人たちがお祭りの準備をして待っている。私は背を向けた陛下、そして座ったままのオーエン様たちを見つめ、にっこりと微笑んだ。


「皆さんの謝罪はたしかに受け取りましたわ。では、後の王族としての責任は、宰相様にお任せいたしましょうか」

「なんだと?」


 私の言葉をきっかけに、舞台の袖からこの国の宰相や高位貴族たちが歩いてくる。先頭にいる宰相様は青ざめた顔でうつむき、反対に背後にいる貴族たちは怒り狂った顔だ。そして私とシモン様の前まで来ると、当然のような態度でひざまずいた。


「聖女様、いえ、カリエント国の王太子妃スカーレット様。このたびは我が国シャリモンドが大変ご迷惑をおかけいたしました」


「まあ、宰相様。わたくしは目的を果たしましたので、そのような謝罪は結構ですわ。その代わり、後はお任せいたしました」


「はい。すべては私たちが終わらせますので」

「お、おまえらは何を言っておるのだ!」


 私たちの会話の意味がわからない陛下は、声を荒げ驚いている。オーエン様もキョロキョロと私と宰相様たちを見ては、困惑した表情を浮かべていた。


「スカーレット、では私たちはカリエントに帰ろうか」

「はい」


 シモン様にエスコートされ、私たちはその場を後にする。背後からは、貴族たちが陛下を追及する怒声が聞こえ始めた。


「すべてはあなたたち、王族の責任ですぞ!」

「領地の立て直しにどれだけの費用がかかるとお思いか!」


「そんなもの私には関係ない! 領主の責任だろう!」

「ふざけるな!」


 陛下の無神経な発言に、彼らへの罵倒は貴族たちだけじゃなく広場の民衆からも出始めた。


「そうだそうだ! おまえらのせいだ!」

「責任を取れ!」


 それだけじゃない。舞台を降りる頃には、遠くで「王政廃止の国民投票を行おう!」という声が耳に届いた。


「何を言っているのだ! そんなもの許されないぞ! オーエンもなんとか言え!」


 きっとオーエン様たちは呆然と青ざめているのだろう。民衆もその意見に賛同し「王室反対!」「王族には罰を!」という声がいっせいに上がり、私は思わずニヤリと笑った。


「いい笑顔だな」


 隣にいるシモン様が、私の悪い笑顔を見て言った。それどころか全てを見守っていたカリナさんやランディまで「素敵な復讐でしたね!」と笑い、護衛騎士ですら満足げな表情だ。


(私は幸せ者だわ。こうやってありのままの私を受け入れてくれる人に囲まれているのですもの)


 この国ではつらいことが多かったけれど、もう昔のことだと思って前を向いていこう。私はかすかに届いた「なぜこんなことになるんだ!」という悔しそうな陛下の声を聞きながら、悪女の顔でこの国を去った。

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