表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この復讐は、私が望んだ結末です  作者: 四葉美名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/27

18話 最後に痛烈な一言を

 

「しかし陛下。わたくしは今回のことを罪に問いませんが、ただひとつ、お約束して頂きたいことがあります」

「なんだ? なんでも言ってくれ」



 うつむいていた顔を上げ、陛下が私を見つめる。オーエン様は私を援護したいのか手を差し伸べようとしたが、私はそんな彼を素通りし、陛下と元父親である侯爵の前に立った。



 きっと後ろのシモン様が怖いのね。二人は私が近づくと少し警戒した表情で、チラリと背後を見た。



(きっとこれから私が言うことは、彼らの(かん)に障るでしょうね。以前は怒らせるのが怖かったのに、今はそれが楽しみになるなんて。私も立派な悪女になってるわ……)



「陛下、侯爵、オーエン殿下、シャルロット。わたくしが皆さんに約束してほしいこと。それは――」



 ぐるりと部屋を見回し、その場にいる全員の顔を見つめた。私の大げさな立ち居振る舞いに陛下と侯爵は眉をしかめ、殿下とシャルロットはポカンとした顔で見ている。



 私はそんな身勝手で人の気持ちがわからない人達を前に、にっこり笑って宣言した。



「もう二度と、わたくしの前に顔を見せないでほしいのです」

「な、なに!」



 わざと無礼な言葉を使った。私が失礼で怒らせることを言えば言うほど、彼らは自尊心が邪魔して会いに来られないだろう。



 ――たとえ、私の助けが必要な時が来ても



 狙い通り、陛下と侯爵は苦虫を噛み潰したような顔で私を睨んでいる。元父親なんて顔を真っ赤にして、ぶるぶると体を震わせていた。



 文句を言いたいのだろうけど、私は今や大国カリエントの第一王子の婚約者。しかも弱みを握られているのだ。二人はぐっとこらえた表情で、握った拳を震わせていた。



「……わかった。そうしよう。カリエントとの国交はあるが、まだ私もそちらの国王も若い。君たち夫婦に会うこともなかろう。安心してくれ」



 ようやく口を開いた陛下の顔は、言葉とは裏腹に私への憎しみでいっぱいだった。だけどここで終わらせるわけにはいかない。私はさらに(あお)るように、陛下に話しかける。



「そうですね。もしわたくしが去った後に何かあっても、聖女として助けを求める事などしないでくださいね」



 ふふっと笑ってそう言うと、陛下のこめかみがピクピクと動き唇が歪んだ。そしてギリリと歯がきしむ音が聞こえたあと、陛下は笑い始める。



「はっはっは! スカーレットは冗談がうまいな! 君一人がいなくなったくらいで、この国に不幸など起こらんよ。心配せずにカリエント国で幸せになってくれ」



 陛下の空笑いが部屋に響き、侯爵も私の言葉を馬鹿にするように笑う。二人にとって私にしたことなど、罪とも思っていないのだろう。顔を見合わせニタニタとにやけている。



(彼らにとっても私に会わないですむなら、そのほうが好都合ですものね)



 反対にオーエン様は青白い顔でうつむいていた。隣にいるシャルロットの表情は読めない。どこか上の空のようなソワソワした様子だ。



「スカーレット、行こうか」



 シモン様の手が腰にまわり、私はにっこりと微笑む。そして仕上げだという気持ちで、陛下に最後の言葉を言った。



「もしわたくしの聖女の力を求める時は、今回のことを民衆の見守るなかで公にしますわ。そして、私の前に(ひざまず)き、許しを請うてくださいませ」



 私の言葉に陛下の怒りも最高潮になったようだ。スッと冷たい瞳になり、ピリピリとした威圧感を肌に感じる。それでも私はひるむわけにはいかない。私はじっと見つめ返し、陛下の返答を待った。



「……ああ、わかった。誇り高き聖女スカーレットよ。この国は何十年も災害にも遭わない恵まれた土地だ。君の聖女の力は不要だ。これからはカリエントで毎日祈るといい。きっとあちらの国民も災害に遭わず平和になるだろうよ」



 カリエント国では毎年、嵐が訪れている。昔ほどではないが去年も家が壊れるなどの被害があったはず。国民を大事に思っているシモン様にとっては、今の発言は腹立たしいものだったろう。



 それでも彼は眉一つ動かさず、にこやかな表情で一礼した。



「ではわたし達はこれで」

「ああ、カリエントまでの道中、お気をつけください。シモン殿下」



 緊迫した話し合いが終わる気配に、ずっと黙っていたシャルロットがほうっと息を吐いた。シモン様はその姿を横目でとらえ、思い出したように振り返る。



「おっとそうだった! オーエン殿下にも忠告があったのです」

「な、なんでしょう?」



 突然話をふられたオーエン様は、椅子から腰を浮かす。シモン様はオーエン様に近づくと、その場にいる皆に聞こえるように話し出した。



「君の婚約者のシャルロット嬢のことです」

「え? シャルロットですか? 彼女がなにか……?」



 シャルロットは突然自分の名を呼ばれ、ビクリと肩を震わせた。オーエン様は怪訝そうな表情で、二人を交互に見ているがわけがわからないらしい。シモン様はそんな二人を残念そうな顔で見たあと、オーエン様の肩にポンと手を置いた。



「彼女が夜の相手をしていたのは、君だけじゃない。王族ならばしっかりと調査しておくべきだよ」

「な、なんだと!」



 いっせいに、皆の注目が妹のシャルロットに集まる。当の本人は椅子から立ち上がると、すぐさまオーエン様にすがりついた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ