第二話
「あぶねー、ギリセーフ!」
中庭から全力で走ったことで何とか3分前には指定された教室に着くことができた。
乱れた息を整えながら空いてる席を探す。
前の方はほとんど埋まっていたが、扉の近くで誰も座っていない席があった為、アカネと二人で座ることができた。
私は首席なこともあり成績優秀者の集まる1-Aクラスだったのだが、何とアカネも同じくAクラスだった。
クラスはAからFの6クラスあり、入学時の成績でクラス割りが決められる。
つまりAクラスは成績上位者40名が入っている事になるはずだ。
教室を見渡してみると、教卓には先生らしき人物がたっている。
クラスメイトは今のとこ人族と色んな魔族が半々ってところだ。巨人に妖精、獣人など色んな種類がいる。
あっ!?あのウザったいサイユもいるのか、取り巻きが1人もいないからか、機嫌が悪そうだ。
アカネはここまで魔族がいるとは思ってなかったみたいでかなり驚いていた。
「えー、所々空席がありますが…もうホームルーム始めちゃいます!
私はセルリア・ウインスト。このクラスの担任になります!都市出身の人族で、歳は22歳。担当する授業は自然魔法学です。
なにか質問ある人いるー?」
私達の担任になるセルリア先生は茶髪のポニーテールで、綺麗な白い花の付いた髪ゴムを使い、髪をまとめている。親しみやすそうな人で、身長が高く運動もできそうだな…
そんなことを思っていたら、何人かが質問を始めた。
「好きなことや物はなんですか?」
「体を動かすことと、魔法の研究かな!食べ物だったら、私のおばあちゃんが作るパンがとっても美味しいからそれかな!」
「自然魔法学の授業って何するんですか?」
「1年生だと自然魔法の性質や定義を理解するのと、後は実演とかかなー」
「結婚してますか!」
「結婚はしてないけど、彼氏はいまーす!」
そんな質問を飛び交い始めた所で…
急に私達の横にある扉がバタン、と勢い良く開かれて、寝癖でボサボサの金髪に体格の小さいエルフが入ってきた。
「すみません、遅れました。」
「初日から遅刻はダメですよ!今日は注意で済ませますが、次回からは反省文です!」
「はーい、気をつけます。」
「気を取り直して…他に質問がある人いるー?」
先生は少し怒って、直ぐに話題を質問へと戻した。
エルフの彼女は教室全体を軽く見渡した後、こちらの席に歩みを寄せてきた。
「ねぇねぇ、ここの席座ってもいい?」
「良いよ!」
私は二つ返事で了承する。
「ありがとうー!私の名前はエリユス・セイクレッド・アルマティス!長いからエリって呼んでほしい!」
見た目に違わずゆったりとした喋り方で良い人そうだ。
「おっけー!私はイリア・エフィメール!よろしく、エリ!」
「私はアカネ・フリューゲル。よろしくねエリさん!」
違う魔族の知り合いができたからか、アカネもなんだか嬉しそうに見える。
「イリアにアカネ。よろしくー!私が来るまでに先生は何か言ってた?」
「えっとね───」
そこからは先生の自己紹介の内容について話しながら、私達も自分のことについて話した。
大体自己紹介について話し終わったところで、
「よし!質問終わり!ここからはこれからの学園生活に大きく関わる大事な話をするよー!」
先生が話題を切り替えた為、私達は1度話を中断して聞く姿勢を強めた。
「まず、ここにいる皆さんはAクラスで、生徒は合格順で上位40名が揃っています。
入学する上で色々な目標をもっていると思うけれど…成績上位で合格しているということは少なからず《賢者》を目指していることだと思います。」
賢者。ただ魔法使いとして強くなるだけならば、弟子入りや早いうちから冒険者で実践を積むことなどで出来るが、それでは賢者になることは出来ない。
何故なら、この学園で称号を認められた者にのみ、賢者の名が与えられるからだ。
賢者には様々な特典がある。
巨額の富、大きな名声。
私のように祖父の為に富を得たいという人もいるだろうが、それは珍しいだろう。
賢者の特典で最も大きいもの。それは、
「賢者の力を使えば、世界に1つだけ魔法を呼び戻すことができます。
過去の賢者には空間魔法や時魔法を世界に呼び出した者もいます。」
教室全体がザワつく。
勿論私やアカネとエリも。
この世界には大きく分けて2つの魔法の分類がある。
精霊の力を借り、自然の力を宿す《自然魔法》。
精霊では及ばない、膨大的もしくは人工的である力を扱う《世界魔法》。
その世界魔法の中でも、時魔法と空間魔法は及ぼす影響の大きさから2大魔法と呼ばれ、実際に使用された様子は伝記でしか確認できなかった。
「実在…するんだ!」
アカネが驚嘆の声を上げる。
エリも空いた口が塞がらない様子だった。
先生は一息置いて、また話し始めた。
「そんな強大な力を得られる賢者ですが…勿論簡単になることは出来ません。
かく言う私も、賢者になる方法は知りません。」
「はぁ!?」
サイユが怒りを露わにして声を上げた。
「私は賢者になりに来てるのよ!その方法すら分からないって…」
他のクラスメイトも共感するように頷いている。
「まあまあ、落ち着いて。これから皆さんに課題を出します。
賢者になるための《方法》とその 《条件》を探し出しなさい。
これが分からなければ賢者になる事は不可能と言っても過言では無いです。
色々聞きたいことあるかもしれないけれど…ホームルームはこれで終わり、今日は授業も無いから皆寮に戻って良いからね!」
そう言うと先生は足早で教室を去っていった。
教室のざわめきは止まらない。サイユも怒りを押し殺して口篭っているようだ。
「賢者になる方法と条件を探し出す…か」
私は考えながら口吻を洩らす。
「情報が殆ど無いから、難しいね。」
「うーん…」
アカネもエリも困り果てた顔をしている。
「今考えても埒が明かなそうだし、一旦寮にでも行ってみよう!」
2人が頷いてから私達は教室を後にした。




