第一章:税収銀貨三枚の領地
目を開けたとき、俺は終わっていた。
「……今年の税収は、銀貨三枚です」
目の前の老人――執事らしき男が、申し訳なさそうに頭を下げる。
「……は?」
俺は思わず聞き返した。
銀貨三枚。
それは前世の感覚で言えば、コンビニ弁当すら怪しいレベルだ。
つまり――
「領地、死んでるじゃん」
老人はゆっくり頷いた。
ここは辺境も辺境。
山に囲まれ、道は崩れ、畑は痩せ、雨も降らない。
村人は二十人ほど。
逃げたくても逃げる金もない「残りカス」だけが、この地に残っている。
そして俺は――
「フラン・フォン・グラナード様。先代のご逝去により、あなたが領主です」
終わりだ。
■ 絶望の内訳
帳簿を見て、俺は理解した。
・農地:ほぼ不作
・水源:枯れかけ
・兵:ゼロ
・特産品:なし
・借金:山ほど
「これ、どうやって生きるんだ?」
「……生きておりませんでした」
老人は静かに言った。
つまりこの領地、すでに破綻している。
■ だが、終わりじゃない
俺は前世で、しがない地方公務員だった。
担当は――農政。
「……ああ、なるほどな」
フランは笑った。
「詰んでるんじゃない。未開拓なだけだ」
老人が顔を上げる。
「まず、水だ」
■ 最初の一手
フランは村を歩いた。
ひび割れた畑。
枯れた井戸。
だが――
「……あるじゃないか」
山の奥、誰も使っていない細い沢。
水は細いが、止まっていない。
「これを引く」
「無理です。人手が足りません」
「二十人いるだろ」
「老いと子供です」
「十分だ」
フランは言い切った。
■ 労働ではなく「参加」にする
「命令じゃない。分配だ」
村人たちを集めて、フランは言った。
「水を引けたら、収穫の半分を村に戻す」
ざわつく。
今まで領主は、奪う存在だった。
だがフランは違う。
「増えた分を、分ける」
それだけでいい。
■ 最初の変化
翌日。
誰も来ないと思っていた。
だが――
「……やるか」
最初に来たのは、痩せた男だった。
次に、老婆。
子供。
そして、全員。
■ 水が通る
三日。
五日。
七日。
そして――
「水だ!!」
乾いた畑に、水が流れ込んだ。
ただそれだけ。
だがそれは、この領地にとって――
数年ぶりの奇跡だった。
■ 領主の仕事
歓声の中、フランは一人で立っていた。
何も特別なことはしていない。
ただ、繋げただけだ。
「……これが、領主か」
奪うんじゃない。
作るんだ。
■ 次の一手
フランは帳簿を閉じた。
「次は――金だ」
水は通った。
だが、それだけでは生きていけない。
「この土地、何が育つ?」
老人が答える。
「……雑草しか」
フランは笑った。
「最高だ」
「……は?」
■ 伏線
雑草、キノコ、山菜・・・
誰も価値を見出さなかったもの。
だがフランは知っている。
その中に――
金になるものがある。




