裏切りと仙尊討伐
こんにちは、皆さん!(˘︶˘).。.:*♡
この本を読んでくださって、本当にありがとうご
います!初めて書いた小説なので、どうぞよろしくお願いします!
この作品には中華文化がたくさん登場しますので、分からないことがあればコメントで気軽に聞いてくださいね!
ちなみに、この世界の修業境界は低い方から順に以下の通りです。
「炼气れんきRenki
筑基ちきChiki
金丹きんたんKintan
元婴げいえいGeiei
化神かしんKashin
渡劫どきょうDokyō
大乘だいじょうDaijō
横击仙人おうげきせんじんŌgeki Senjin
人仙じんせんJinsen
地仙ちせんChisen
天仙てんせんTensen
金仙きんせんKinsen
大罗金仙だらきんせんDara Kinsen
太乙金仙たいつきんせんTaitsu Kinsen
仙尊せんそんSenson
道祖どうそDōso」
それぞれの境界は更に十段階に分かれています。
まあ、要するに中国の修仙小説でよく見かける定番設定ですね!
俺は力尽き、廃墟の上に片膝をついていた。
口の端から血が垂れる。
一滴、また一滴。
粉砕された砕石の上に、ぽたりぽたりと落ちていく。
顔を上げる。
二十一人の仙人が、四方八方から俺を取り囲んでいた。
九人の半歩仙尊、十二人の太乙金仙。
仙袍が、残存する霊気の余波の中で、静かに揺れている。
誰も口を開かない。
だが、実体を持つかのような殺意が――じわじわと、降り注いできた。
俺の名は林砚。
かつて、この神州大陸唯一の仙尊だった者だ。
つい先ほど、俺はこの世界の道祖を自らの手で討ち滅ぼした。
衆生を三億年もの間縛り続けてきた天道の枷を、打ち砕いた。
そして。
気力を大きく損じ、修為が大乗境まで落ちたその瞬間――
彼らが来た。
かつての友。
かつての弟子。
かつての同胞。
全員が。
俺を、殺しに。
―――――――――
風が止んだ。
最初に口を開いたのは、白凝冰だった。
雲の上に立ち、俺を見下ろしている。
白衣は雪より白く、目尻がほのかに赤い。
それは、泣いているのではない。
恨みだ。
三百年をかけて煮詰め、涙すら枯れ果てた――そういう種類の、恨みだ。
彼女は、きつく下唇を噛んでいた。
「林砚」
声は大きくない。
だがそれは、この死の静寂の中に、細い針のように刺さった。
「三百年前。あなたは私の宗門を皆殺しにした。上は太上長老から、下は入門したばかりの弟子まで。千二百三十七の命を。私は屍の山の中で跪き、三百年の誓いを立てた――」
彼女は、ふっと笑った。
その笑顔は、泣き顔よりもよほど恐ろしかった。
「ねえ、わかる? この三百年、毎朝目を覚まして真っ先にすることが何だったか」
「あなたという魔頭が、今日はどんな死に方をするか。それを、想像すること」
(三百年前。道祖が俺の勢力を削ぐために、お前の宗門を密かに血祭りにあげたんだ。重傷を押して、屍の山からお前を救い出したのは、他でもない俺だ。……なんで、忘れてるんだよ)
俺は彼女を見た。
何も言わなかった。
―――――――――
次に口を開いたのは、冷清寒だった。
彼女は宙に浮かなかった。
廃墟の上に立ち、片膝をついた俺と、正面から目を合わせた。
その顔は美しかった。
直視するのを憚られるほどに。
なぜなら、その瞳があるべき場所には――赤い布の切れ端が巻かれているだけだったから。
傷跡は深く陥没し、まるで内側から何かに抉り取られたかのようだった。
その縁には、霊力による灼傷の焦げ跡が、今なお残っている。
彼女はゆっくりと手を持ち上げ、指先を自分の眼窩にそっと触れさせた。
動作は、極めてゆっくりと。極めて静かに。
妹の話をするとき、彼女はいつもこうした。
「私の双瞳を抉り、妹の精血を使って、あなたは突破の贄とした」
(あの年、お前の妹は修行中に暴走した。先天血体が制御を失い、城ひとつを道連れに自爆しようとしていた。それを止めたのは、俺だ。お前の目が焼けたのは、妹の制御を失った霊力のせいだ。俺が自分の仙元を使って、お前の命を繋ぎとめた。……なんで、忘れてるんだよ)
「彼女の名前は冷清月。逝ったとき、十六歳だった。先天血体を持つ、私の妹。あの子は暗いのが、大嫌いだった」
声に、初めて亀裂が走った。
張り詰めた氷の面に、最初の一筋が入るような――そんな亀裂が。
「林砚――あの子の精血で、あなたはいくつ境地を上げた?」
俺は彼女を見た。
やはり、何も言わなかった。
―――――――――
三人目に口を開いたのは、陸景元だった。
彼は人垣の後方に立っていた。
全員の視線が集まるのを待ってから、ゆっくりと前に出る。
溜め息をついた。
それが彼の、お決まりの仕草だった。
「八百年……か、林砚。八百年の付き合いだぞ。俺は本当に、ここに立ちたくなかった」
(八百年の付き合い。お前が仇敵に追われていたとき、助けたのは俺だ。弟子として取り立て、修行を教え、資源を与えた。……なんで、忘れてるんだよ)
彼は目を伏せた。俺と視線を合わせようとしない。
「だが……十万城の民の命は、どう説明する。お前はあいつらの血肉で、あの星宿輪盤を――」
その三文字を聞いた瞬間、俺の指先が微かに動いた。
星宿輪盤。
あれは、この世界の造物ではない。
俺が仙尊境を突破した折、虚空から偶然に手に入れた太古の遺器だ。神州大陸に属さず、この方の天道の管轄すら超えた存在。その核心的な能力はただひとつ――
次元跳躍。
別の世界の座標を特定し、通路を引き裂いて跳躍する。
七千年をかけて研究し、ようやくその駆動方式を解読した。
そして気づいた。あれは空間だけでなく、時間すら超えられると。
ただし座標の特定には膨大なエネルギーが必要で――十万の生きとし生ける者の血肉が、最低限の贄だった。
この秘密を打ち明けた相手は、ただ一人だけだ。
陸景元。
彼はしばらく黙っていた。
そして言った。
「万策尽きる前には、使うな」
俺は「わかった」と答えた。
そして今、彼は俺の対面に立ち、その秘密を手に俺を裁こうとしている。
(陸景元。誰よりもわかっているはずだろう。輪盤の駆動条件は、お前と俺が共に算出したものだ。今さら問うのか――十万の民の血肉で駆動した意味を? 言えないだろうな。ここにいる全員に。あの輪盤の、もう一端が何処に続いているか)
俺は彼を見据えた。
彼は俺の視線から、目を逸らした。
―――――――――
天禹は、最初から最後まで俺を一度も見なかった。
その視線は、ずっと俺の背後に向けられていた。
まだ取り出されていない星宿輪盤に。
彼はいらいらとしたように指を叩いた。
これが彼の、激怒する前の前触れだった。
「もういい。結陣しろ――これ以上口を開かせるな」
(何を怖がっている? 俺が話すことが怖いのか? 言ってはならないことを俺が口にするのが怖いのか? お前たち全員の醜聞を、衆目の前に晒すことが、それほど怖いのか?)
―――――――――
顧長歌が、人垣の後ろから歩み出た。
俺を見るその目は奇妙だった。
恨みでもなく、怒りでもなく――まるで何かを確認しているかのようだった。
俺が本当に重傷なのかどうか。まだ立てるかどうか。
長い沈黙が続いた。
天禹の陣紋が、空中に浮かび上がり始めるほど長い沈黙が。
「……待つな。時間を稼いでいる」
声は静かだった。
まるで誰かに、こっそりと何かを告げるように。
―――――――――
俺は彼らを見た。
一人一人、見ていった。
白凝冰。
冷清寒。
陸景元。
天禹。
顧長歌。
そして――俺は笑った。
口の端から血が滴り、笑みと混ざり合い、一滴また一滴と廃墟の上に落ちていく。
「天道の……枷は……俺が打ち砕いた。お前たちがここに立てるのは、俺がお前たちを立てさせたからだ」
俺は膝に手をつき、一歩一歩立ち上がっていった。
動くたびに体中の傷が引きつれる。
それでも止まらなかった。
「三百年。八百年。千年。俺が道祖を殺すまで耐えた。俺が境地を落とすまで耐えた。俺が重傷で瀕死になるまで耐えた――そこまで待って、ようやく来たのか」
その場にいる全員に、視線を巡らせる。
笑みは深く、深く、冷えていく。
「俺が重傷を負ったら――お前たちにも、ようやく胆力が湧いたらしいな」
顧長歌の目が、一瞬揺れた。
天禹の陣紋が、半拍だけ凝滞した。
俺は笑みを収めた。
全身の気が、爆ぜるように解き放たれる。
大乗境の余威は、まだ残っていた。
その残滓の気圧が山岳の如く、前列の数人を半歩後退させた。
俺は手を持ち上げた。
星宿輪盤が、虚空から浮かび上がる。
紫紺の烈焔が音もなく燃え上がり、その場にいる全員の顔を蒼白く照らした。
「来い。見せてみろ――お前たちの千年の忍耐が、俺の命と引き換えに足るものかどうかを」
そして。
虚空が、裂けた。
彼らがやったのではない。俺でもない。
漆黒の亀裂が、俺の背後に音もなく口を開いた。
まるでこの世界そのものの意志が、ついに俺の存在を容赦することを諦めたかのように。
天禹の瞳孔が収縮した。陣紋が砕け散る。
顧長歌が、初めて冷静を失った。
「――やめろ!!」
何かを叫んでいた。
だがもはや、どうでもよかった。
亀裂が俺を飲み込んだ。
星宿輪盤の紫焔も。
大乗の余威も。
全て。
次の瞬間には、消えた。
廃墟の上に残されたのは――二十一人の仙人が、互いの顔を見合わせる光景だけだった。
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