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追放された元宮廷魔導士、魔法を再定義して最強国家を築く  作者: 一月三日 五郎


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第4話:魔法は才能ではなく、ただの技術だ

アレス流・魔導工学の授業開始です。

誰でも魔法が使える世界の始まりをご覧ください。

 ザルツに「城塞都市」が出現して一ヶ月。


 かつての棄民の地は、今や周辺諸国にとって「理解不能な怪現象」の代名詞となっていた。


 門の外には、毎日数百人の難民が詰めかけている。


 王都の重税から逃れた農民、戦場で使い捨てられた元兵士、そして――。


「アレス様、入国希望者が限界を超えています。食糧は足りますが、彼らを管理する人間が足りません!」


 カイルが書類の山を抱え、悲鳴を上げる。


 アレスは最新の魔導式計算機(彼が一晩で自作した)のレバーを弾きながら、冷静に答えた。


「問題ない。想定内の人口増加スケーリングだ。カイル、今日から君には『魔法』を教えてあげる」


「えっ……魔法を? でも、僕には魔導士の才能なんて……」


「才能? まだそんな非論理的なことを言っているのか」


 アレスは作業机から顔を上げ、カイルを真っ直ぐに見つめた。


「魔法とは、現象の定義だ。前世……いや、僕の理論では、一定の術式と魔力供給があれば、誰でも同じ結果を出せる。必要なのは『祈り』ではなく『理解』だ」


 アレスは広場に集まった難民たちの中から、読み書きができる者や意欲のある若者、約五十人を選別した。


 彼らに対し、アレスが最初に行ったのは「瞑想」でも「呪文の暗唱」でもなかった。


「今日から君たちには、算術と幾何学、そして『魔導回路学』を学んでもらう」


 広場に巨大な黒板(石板を魔法で加工したもの)が設置される。


 アレスがそこに描いたのは、美しい円や三角形が組み合わさった、精密な基板図のような数式だった。


「いいですか。火を出すのに、火の神に祈る必要はありません。空気中の酸素濃度を特定し、魔力による摩擦係数を $x$ と定義して……」


 受講者たちは呆然としていた。


 だが、アレスが配った「量産型魔導杖(計算補助機能付き)」を手に、教えられた通りの手順で魔力を流すと――。


 ボッ、と。


 魔力を持たなかったはずの農民の少年から、真っ直ぐで安定した火柱が上がった。


「で、出た……! 呪文も唱えてないのに、僕でも魔法が使えた!」


「当然だ。設計図が正しければ、機械は動く。魔法もそれと同じだ」


 アレスが教えたのは、個人の才能に依存しない「規格化された魔法」だった。


 これが、のちに世界を震撼させる『アレスティア式魔導工学』の第一歩となる。


     *


 一方、エルディア王都。


 かつてアレスを追放した玉座の間は、もはや見る影もなく荒廃していた。


 豪華な絨毯には、雨漏りによるカビが広がり、高価な香料の代わりに、下水の逆流による悪臭が漂っている。


「……浄化魔法はどうした! なぜ王都の水が飲めんのだ!」


 王の絶叫に、宮廷魔導士団長が震えながら答える。


「へ、陛下……アレスが設置した『浄化槽の魔法回路』が、経年劣化……いえ、我々の魔力供給による過負荷でショートいたしました。回路の構造が複雑怪奇すぎて、誰にも修理ができません!」


「修理できぬなら、新しく作ればよかろう!」


「それが……今の我々には、あのアレスが構築した『高効率な術式』の半分も理解できないのです。古い術式で作ろうとすれば、アレスが一人でやっていた仕事を、一万人規模の魔導士で維持しなければなりません。そんな予算も人員も、今の我が国には……」


 そこへ、青ざめた伝令が飛び込んできた。


「報告します! 王都西側の結界が、ついに消滅しました! 魔獣『キメラ』の群れが、農村部を蹂躙しています!」


「なんだとっ!?」


 王は椅子から転げ落ちた。


 アレスがいれば、指先一つで、あるいは自動防衛システムが数秒で処理していたはずの災厄だ。


 だが、今の彼らには、それに対抗する術がない。


 王都の民は、ついに気づき始めていた。


 自分たちが「無能」と蔑み、追い出した青年こそが、この国の唯一の「柱」であったことに。


     *


 ザルツ――新国家『アレスティア』の建設現場。


 そこには、かつての絶望は微塵もなかった。


 アレスから「論理」を学んだ若者たちが、量産された建築魔法杖を使い、まるでパズルを組むように次々と新しい施設を建てていく。


「アレス様、農業ドーム第3区画の温度調整回路、セット完了しました!」


「よし。次は、魔導列車マナ・レールの試運転だ。物流の最適化は国家の血管だからね」


 アレスは、完成しつつある真っ白な都市を眺めた。


 教育された国民。


 科学的に管理された食糧。


 そして、才能という不確定要素を排除した、安定した魔導技術。


 その時、城門の監視兵から報告が入った。


「アレス様! 難民の中に、一人……妙な女が。王都の聖騎士団の鎧を着ていますが、ボロボロで……『アレスに謝罪しなければならない』と繰り返しています」


 アレスは、懐中時計に目を落とし、パタンと蓋を閉じた。


「……予定より三日遅い来客ですね。カイル、彼女を会議室へ。ついでに栄養価の高いスープを用意しておいて。彼女の今の健康状態では、話の途中で気絶されると効率が悪い」


 アレスの瞳は、どこまでも冷たく、そして未来を見据えていた。


「さあ、王都の崩壊を、より加速させてあげましょうか」

王都側の自業自得な崩壊もチラ見せしていこうと思います。

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