第80章「神の玉座で爆死!? 世界を統べる男の終焉」
「海底も空も霊界も、何でもかんでも俺は攻めてきたが、そろそろ“世界の頂点”を本当に手に入れる時だろ? いままで数えきれないほど『爆死』してきたが、ここで真の神となれば、もう爆死なんて概念から卒業できるはずだ!」
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王都の廃墟となった一角。何度目かの大事業の失敗で焼け落ちた建物の跡に、黒峰銭丸は新たな計画の拠点をこしらえようとしていた。どんな場所でも爆発と炎で終わってきたが、今度はそんな過去を完全に打ち消す“究極のゴール”——神の玉座を奪い取り、この世界に君臨しようというのだ。
いつもの仲間、水無瀬ひかり、バルド、メルティナがそろっているが、その表情には歴然とした疲労感がにじむ。彼らはすでに数えきれない惨劇に巻き込まれ、それでもなお銭丸に付き合ってきたが、この“神を名乗る”プランは特に危険な香りがする。まさに最後の暴挙というべき姿に映っていた。
「神の玉座って……それこそ、世界の理を司る領域ですよね。かつて神話の時代に創造神が使ったとか、竜の王や悪魔王が手を伸ばして散々な結末を迎えたとか……。そんな伝説が山ほどあるのに、あなたはまだ行くつもりなんですか?」
ひかりが幾度となく読んだ古代文献をめくりながら、半ばあきれつつ尋ねる。銭丸は苦笑いを返しながらも、決して揺るがない様子だ。
「何度も爆死したけど、今回こそは卒業だよ。世界の頂点に立ってしまえば、死ぬ心配なんてなくなるだろ? 神に等しい力を持って、今までの負債だのゴタゴタだのを一掃するんだ。金も女も俺の思い通り。最高じゃないか!」
バルドはうんざりした表情で「また言ってらぁ」と頭を抱え、メルティナは冷ややかに「神の玉座はそう簡単に狙えるものじゃない。下手をすれば世界そのものを壊すかもしれない」と警告する。しかし銭丸は「それならそれで“神の力”を使えば修復できる」と、まるで取り合わない。本当に手が付けられない暴走ぶりだ。
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こうして「神の玉座奪取プロジェクト」が動き出す。銭丸はある禁書に書かれていた「神の玉座が存在する最果ての神域」へ向かう情報を頼りに、またしても多額の資金を借り入れ、王都近辺に残っていた闇ギルドにも頭を下げて人手と物資を確保。
彼らが目指すのは“天と地の狭間”とも呼ばれる光と闇が混ざり合う聖域で、ここに“玉座”が空中に浮かぶ形で封印されているという伝承が残っているらしい。そこへ行き、封印を解き、玉座に座れば、この世界の“法則”を部分的に握れるというのだが、本当かどうかは誰も知らない。
バルドが護衛隊を率い、メルティナが儀式や封印解除の技術を担当し、ひかりは大量の契約書と新たな観光・投資プランを作りながら、いつものように半ば呆れた手つきで段取りを組んでいる。内心では「絶対にまた爆死する……」と感じながらも、もうここまで付き合ってきたから仕方ないと思っている節もあった。
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最果ての神域へ行くには、とある結界を越えねばならない。空も地面も灰色に霞む地帯を過ぎると、周囲の風景が崩壊した廃墟のようになり、一部に光の柱が天へ伸びているのが見える。そこが“神の玉座”と呼ばれる場所の入り口だという。
近づくと、古代の石柱が並ぶ遺跡があり、空がまるでひび割れた鏡のような模様を持ち、地形が歪んで浮遊している。この不気味な場所に踏み入った瞬間、ひかりやバルドはすでに寒気を覚え、メルティナが「魔力が異常値を示してる……これは危ない」と声を震わせる。しかし銭丸はいつもの強気で、「こここそが神域の正体だ。玉座はすぐそこにあるはずだ!」と歩を進める。
やがて深部へ足を踏み込むと、巨大な空洞に出る。天井も壁もなく、ただ広大な空間がゆらぎの中に存在し、中心部に高くそびえる階段が見える。階段の頂点には、まるで王の玉座のような椅子がぽつんと浮かんでいた。そこから放たれるオーラは白金の輝きをまとい、周囲にゆったり回転する光の破片がある。
「ほら、あれが『神の玉座』だ。俺があれに座れば、この世界の全てを思いのままにできる!」
銭丸は興奮を押し隠しきれずに駆け出すが、メルティナとバルドが「待て!」と声を荒らげてももう止まらない。
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結果は誰の目にも明らか。玉座の手前にいくつもの封印の紋章が浮かび、侵入者を排除するように激しく攻撃してくる。光の矢が飛び交い、足元に閃光の陣が現れ、そこに触れた作業員が昏倒する。バルドが盾を使っても焼け石に水で、メルティナが封印を解こうとしても凄まじい力にはじき返される。
それでも銭丸は強硬に進み、光の矢をすれすれで避けながら階段へ上る。最後に大きな門のような結界が立ちはだかり、彼は命がけで突撃していくが、その途中で身体に激しい痛みが走り、崩れ落ちそうになる。ひかりが遠くから悲鳴を上げている。
ところが、あと数歩という地点で結界がぱっと弱まり、玉座までの道が開ける瞬間が訪れる。まるで試験を突破した者だけが通れるかのように。一瞬だけ光が和らぎ、銭丸がまんまと頂上へ到達し、輝きに満ちた椅子の前に立った。彼は勝利を確信した笑みを浮かべると、いつものように腕を広げ、玉座へ腰を下ろそうとする。
「見たか! これで俺は神の力を手に入れるんだ。もう爆死とは無縁さ!」
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しかし、神の玉座に触れた瞬間、場の空気が急転する。周囲の光の破片がギラリと赤黒く変色し、玉座がドクンドクンと脈打つような音を立て始める。まるで椅子そのものが生命を持っているかのように、銭丸を拒否するような震動を放ち出す。
階下からメルティナが必死に「それは偽りの玉座だ! 古代の伝承によれば、本当の神しか座れない“禍根の玉座”と書いてある!」と叫ぶが、もう遅い。銭丸は座り込んだ直後に背もたれから光の触手が伸び、彼の身体をガッチリと拘束してしまう。
バルドが衝撃を受けつつ駆け上がろうとするが、強力な結界が再び立ち上がり、誰も手出しできない。ひかりが悲鳴を上げて階段を駆けるが、宙に浮いた何かの力が跳ね返す形だ。銭丸は困惑しながらも、「な、なんだこれ……?」と声を詰まらせる。
玉座がガタガタと振動し、周囲に裂け目が生まれ、空間がひしゃげるようなノイズが走る。明らかに“神の権能”ではなく、“戒めの力”が暴走する兆候で、メルティナは震える声で叫ぶ。「この玉座は“地上の者”が座ると、自身を宿主ごと滅ぼす仕組みなんだ! 伝承どおり、神以外が触れれば世界を乱す危険があると……」
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次の瞬間、玉座から放たれた衝撃波が周囲を斜めに断裂させ、宙を飛び散る光の破片がきらめきながら階下や壁を粉砕する。銭丸は逃れようにも椅子に張り付けられた状態で、悪あがきしかできない。「こんなはずじゃ……俺が神になれるはず……!」と慌てふためくが、すでに遅すぎる。
光の触手がさらに増えて彼の四肢や胸元を突き破り、最期の絶叫を絞り出すかたちに。 いつものように——
「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。神の玉座は……爆死ッ……!!」
その一言とともに玉座が稲光のような破裂音を放ち、階段ごと頂上が大爆発を起こす。白と黒が入り交じった炎と衝撃波が山道をなぎ倒し、下層の封印構造物までも連鎖的に破壊する。崖が崩落し、見上げるしかできなかったバルドやひかりは必死に退避するが、轟音と燃えさかる光、そして降り注ぐ瓦礫に呑まれかける。まさに世界の終焉のような惨劇が一瞬で広がった。
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翌朝、爆心地を確認した生還者の話では、山の頂上にあった遺跡が丸ごと消滅し、玉座があった痕跡すら見つからないという。巨大なクレーターが生じ、瘴気めいた黒い煙が漂う空間だけが残っていた。あれほど意気込んでいた銭丸の姿は当然見当たらない。
救助隊が王都から駆けつけても、「これだけ大規模な爆死なら、さすがにもう復活できないだろう」と首を振る。だが一方で「何度も爆死から生き残ってきた奴だからな……」と苦い表情を浮かべる者もいるのがいつも通りだった。
こうして、“神の玉座”という最終的な野望に挑んだ銭丸の結末は、再び大爆発の一撃で幕を下ろした。世界の頂点に届くどころか、封印の戒めに捕らえられ、一瞬で粉砕されて消える結末——先人の神話どおりに破滅を呼んだのは、まさに貪欲と狂気の果てともいえるだろう。
「結局、神になれば死なないと思ったんだろうが……死より激しい破滅が待ってたか」という声が人々の口をついて出るが、それをもって誰も驚きはしない。一度ならず二度ならず、毎回“爆死”を繰り返す姿を見せ続けた男の最後が、神になる夢を追って散った。果たしてそれで本当に終わりなのかは、また誰にもわからない。
王都の人々が再び「今度こそもう帰ってこないだろう」と嘆息しつつも、「いや、あの男のことだから……」と曖昧に口ごもる構図が繰り返される。そうして、世界を支配するはずだった神の玉座は、爆発とともに記憶の彼方へ消える形で、さらなる負債と傷跡を残して幕を引いたのだった。




