第61章「太陽を掴め! 灼熱ソーラープラントで爆死!?」
「風力だの水力だの、いろいろ試してきたけど、まだ本格的に“太陽”を使ったエネルギー事業はやってないじゃないか。魔導研究でできるはずなんだよ、超大規模な“ソーラープラント”を建設して、一気に世界中へ電力と魔力を供給する! 大成功間違いないだろ!」
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黒峰銭丸は王都の議会広場で新しい提案書を振りかざしながら、いつものように声を張り上げた。ここまで何度も大規模事業を起こしては最後に爆死してきた彼だが、懲りた様子は微塵も感じられない。
隣には水無瀬ひかりが書類を開き、困ったように首を振っている。まだ近隣の傷跡もいくつも残るほどの過去の爆死の惨状が頭をよぎるのに、銭丸はさらに莫大な金を集めて“空前のソーラープラント”を作ろうというのだ。彼女の心には、嫌な予感がざわざわと渦を巻いている。
「太陽を活用って、以前に魔導の“光エネルギー抽出”とかいろいろ試してましたよね。そこまで巨大な設備を作るには、広い土地と膨大な魔石も要るし、負荷や管理がとんでもないことになりませんか?」
「そこを俺がまとめ上げるんだよ。研究所が言うには“集光レンズ”と“魔導変換炉”を組み合わせれば、太陽光を直接魔力に変換できるらしい。でっかいソーラープラントを設置すれば、日中はほぼ無限の魔力を得られるだろ? 火力や水力より効率的で、爆死とは無縁だ!」
ひかりは何度も「爆死はもう嫌」と願ってきたが、当の銭丸がそのフラグを自分で立てているようで見ていられない。しかも、出資者たちが「確かに太陽の力は大きい」「魔力が大量に得られるなら利権も絶大」と色めき立ち、早速資金が集まってしまうから厄介だ。
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魔導研究所の若手たちが「集光レンズ式ソーラーパネル」を開発しており、光を一点に集めて魔導炉に注ぎ込む仕組みを応用すれば、地上に巨大な鏡やレンズ群を並べて、ほぼ無限の光を“魔力”に変換できる――そんな理論が提唱されていた。銭丸はこれに飛びつき、荒地に広大なプラントを建てて、商用電力と魔力を生産・販売する“ソーラー魔導事業”を打ち上げる。
バルドが工事現場の警備とレンズ設置を指揮し、メルティナが魔導変換炉や制御塔の調整を担当。ひかりは例によって財務管理や販売契約、保険書類を束ねることになった。彼女が書類を読み込み、「集光による高温や暴走リスクがある」と心配すれば、銭丸は「分散した鏡を制御して焼きすぎないようにすれば大丈夫」と自信を見せる。過去の失敗などどこ吹く風である。
こうして大掛かりな建設がスタートし、荒地には無数の巨大鏡やレンズが並び、中央には大きな魔導変換炉を搭載したタワーがそびえ立つ。工事は順調に進み、稼働テストをするたびにそこそこの魔力を抽出できると分かり、銭丸は「これで新時代を築くぞ!」と胸を張る。
ただ、プラントが膨大な光を集めるため、メルティナが「内部の冷却機構を強化しないと、炎上や爆発のリスクがある」と何度も警告。バルドは影の部分に避難シェルターや消火設備を整え、ひかりが万が一に備えた火災保険を契約しようとするが、銭丸は「そんなネガティブなことばかり言うな、爆死なんてもう沢山だ」と聞く耳を持たない。
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やがて“ソーラープラント”が完成し、いよいよ試運転の日が来る。関係者や出資者が見守る中、巨大な集光鏡が太陽を捕捉し、無数のビームが中央タワーの変換炉に集束。すると変換炉が魔力を生み出し、運営制御室の針がぐんぐん上昇する。
初期段階から既に大きな魔力出力が得られ、銭丸は「やっぱり大成功だろ? 昼間はこれで電力も魔力も作り放題だ」と大はしゃぎする。バルドやメルティナが安全装置を見張るが、まだ大きな問題は起きていなかった。見学に来ていたギルドの要人や貴族たちも「これは革新的だ」と興奮を隠せず、追加資金を投じたがる声さえ上がる。
いくつかの工場や町へ魔力と電力を送る仕組みもセットアップされ、プラントは大規模稼働を開始する。昼間の快晴時には膨大な光エネルギーが流れ込み、変換炉が活発に動いて、大勢が「これこそ本物だ」と讃える。しかし、少しずつ異変が忍び寄る。晴天続きで光量が想定以上に上がり、変換炉の冷却が追いつかなくなるのだ。魔石がオーバーヒートを起こしやすくなり、メルティナが「出力を落とそう」と主張しても、銭丸は「もったいない」とフルパワーを止めない。
何日か連続で晴天が続き、プラントの出力が想定以上の数値を示していると報告を受けたとき、ひかりが「もう余剰魔力は捨てるか、少なくとも出力制限すべき」と口を酸っぱくして言う。だが銭丸は「今は大いに売れる時期だ。魔力を最大限生産して“魔力市”で高値で売れば大儲けだろ?」と動かない。バルドが安全部門から「内部温度が基準超えてる」と再三警告しても「ちょっとくらい大丈夫だ!」と強引に押し通す。
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その結果、数日後にプラントの変換炉で高熱警報が鳴り響く。想定を超えた魔力転換量と連日の酷暑が相まって、炉の冷却システムが悲鳴を上げていた。メルティナが緊急停止を提案しても、銭丸は「お客さんや街がこの電力を求めてるんだ。止めるな!」と意固地になり、短期的な利益を最優先する。
バルドが「このまま出力を続ければマジで爆発するぞ」と詰め寄っても、銭丸は「今さら止めたら、出資者が黙ってない。爆死なんてありえないさ!」と一喝。そこで仕方なく冷却水を増やすなど応急処置を取るものの、根本的な熱問題は解消できないまま。
さらに不運なことに、天気予報に反して快晴の日が何日も続き、とんでもない量の太陽光がパネルとレンズを通して炉に集まる。ソーラープラントはオーバーパワー状態で、稼働室の温度が大幅に上昇。どんなに冷却水を入れても蒸気になってしまい、炉の壁が赤く染まっていくという報告が次々と上がる。
「止めろ! もう無理だろ……!」
バルドやメルティナが必死に停止スイッチを入れるが、出力制御装置が高熱と魔力のせいで壊れ、動作不能になっている。ひかりが「こんなことってあるの!?」と青ざめるなか、銭丸も流石に不安げにパネルを叩くが、反応がない。
◇
そのとき、鏡の一部が角度を誤り、集中光がプラント施設の外壁や配線に当たり、火花が散り始める。高温の反射光がそこら中を引火源として焼きはじめ、バリアや断熱素材が劣化して無数の小火が一気に拡散。さらに、炉の爆熱により内部が溶けかけ、魔導石が歪みを起こしているとの報告が入り、いよいよ「大爆発の危険」が現実味を帯びる。
「うわああっ、やっぱりこうなるのか……!」
バルドとメルティナはスタッフを誘導し、ひかりが「避難してください!」と拡声器で呼びかけるが、敷地が広大なうえ火が広がる速度が速く、あちこちに取り残される人が出てくる。あまりに輻射熱が強く、遠くから見るだけで肌が焦げそうな熱気だ。
炉内では循環系が完全に切れ、膨大な魔力が制御不能のまま内部に溜まっている状態。最後の瞬間、銭丸は炎と黒煙が巻き上がる中央塔の下まで走り、どうにか停止させようと試みるが、そこで感じるのは焼けつく熱とメルティナの必死の叫び。「もうダメ、止まらない……!」
次の瞬間、塔全体が白い閃光を放ち、炉が限界を超えたかのように大きな衝撃波を発する。銭丸は吹き飛ばされ、空を舞いながらいつもの叫び声を上げるかもしれない——誰の耳にも届かないほどの爆音がすべてをかき消すが、残された人の証言によると微かに聞こえたそうだ。
「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。ソーラープラントは……爆死ッ……!!」
◇
凄絶な爆発とともに中央塔から噴き出した火柱と魔力の塊は、広範囲のレンズ群や施設を一瞬で焼き払い、鏡と鉄材の破片を空高くまで飛ばして落下させる。プラント全体が火の海となり、周辺の荒地も数キロにわたって炎に包まれた。防ぎようのない大規模炎上で、逃げ遅れた人々や設備は何ひとつ原型を保てず、空を焦がす煙が数日間立ちのぼる。
翌日、ようやく火勢が弱まった跡地には、もはやプラントの形すら残っていなかった。コンクリートや金属は溶け、魔導炉の基盤は潰れた円柱のように歪んでいる。ところどころにかつての集光鏡の破片が突き刺さり、真っ黒に焦げ付いた地面だけが見える。
「あれだけの爆風に巻き込まれたら、さすがに助かるわけがない……」
多くの出資者や被害者が口々にそう呟くが、過去幾度となく“爆死”から平然と生き延びていた銭丸を知る人は、「どうせまた……」と複雑な表情を浮かべる。
ソーラープラントによって未来のエネルギーを生み出すはずの計画は、大量の出資と労力を使いながら最後の一瞬で破滅へ沈んだ。まさに太陽の強大な力を甘く見た代償と言えるかもしれない。火の柱を伴う爆散劇は、今回も逃れようのない“銭丸の結末”として王都に知れ渡り、人々は「やっぱりまただ……」と嘆息するしかなかった。
とにかく、どれほど革新的に見える計画も、黒峰銭丸が関与すれば、いつも派手な炎と崩壊で終わる運命からは逃れられないようだった。既に何度経験しても懲りない男の姿は今回もまた見当たらず、焦げ付いた大地が、焼失した夢の名残を無残に語るだけである。




