表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/100

第40章「魔王国との大再開発で爆死!? 人間界と魔族の衝突点」

 「人間界だけで商売してると天井が見えるだろ? なら、隣接する“魔王国”と手を組んで大規模開発をすれば、新たな市場が一気に広がるはずだ!」


 黒峰銭丸は、国境付近にある関所跡を見つめながら、高揚した声で語った。いつものように途方もない企画ではあるが、彼なりの根回しはすでに進めているらしい。隣には水無瀬ひかりが、半ば呆れながら書類を抱えていた。


「魔族って、人間と価値観も文化も違いますよ? しかも、人間界と魔王国は過去に戦争があったとか、対立の歴史も長いですし……そう簡単に商売できるんでしょうか」


「そりゃ昔は敵対してたけど、いまは小康状態だろ? だからこそ、交流を深めれば両方が潤う。大再開発プロジェクトを立ち上げて、魔族領の首都と人間界の都市を繋げてしまうんだよ!」



 銭丸はすでに魔王国の一部“穏健派”と接触しており、国境付近にある広い荒地を共同開発して「人間界と魔族の交易ハブ」を作る計画を持ちかけていた。商業ギルドや改革派官僚の一部もこれに賛成し、資金や人材が集まりつつある。バルドは安全管理を、メルティナは魔族向け物資や言語サポートなどを検討。ひかりは資金繰りと契約を一手に担っている。


「でも、魔王国側にも保守的な『対人間強硬派』がいると聞きます。それに人間界にも『魔族嫌い』が根強い派閥が……」


「そこを乗り越えるからこそ大成功するんだよ。いまは両国が微妙に和平ムードだから、逆に大きく踏み込めるチャンスさ!」



 大再開発の第一段階は、人間界と魔王国の国境周辺に中立地帯を作り、そこに“共同都市”を建設するというもの。商業施設や宿泊施設、さらには魔族文化を紹介するテーマパークまで整備し、観光客や商人を大量に呼び込もうという狙いだ。

 工事が始まり、荒地を整地して道路や建物の基礎が作られていく。人間界からは大工や技師が来て、魔王国からは石工や魔法工も参加。最初こそ言葉や習慣の違いでモメるが、互いに慣れてくるとなんとか仕事が進んだ。


「やっぱり文化のギャップは大きいですね。でも、このまま順調に進めば、両国の友好にもつながりそう」


「だろ? 俺は爆死なんかしないで、このまま世界を繋ぐ商売王になるんだ!」



 やがて街の形が見え始め、魔族のエッセンスを取り入れた建築や、人間界の技術で整えられたインフラが同居する面白い景観が広がる。メインストリートには魔族向けの文字や看板、人間界の屋台や商店が並ぶ予定。

 この共同都市が完成すれば、両国の商人や観光客が自由に往来できる。その将来性に大きな期待がかかり、銭丸は「でかい融資を取り付けて新たな投資を呼ぼう」と意気込む。


「ここまでスムーズなんて、珍しいですよね。大丈夫なのかしら……」


「もう何度も爆死してるし、今回は学習したさ。魔族も悪くない連中が多いぜ」



 しかし、工事の途中で“魔王国の強硬派”が動き出したとの噂が流れる。人間との共同開発など認めないと主張する集団が、国境近くで不穏な動きをしているらしい。バルドは警備を強化し、メルティナは安全なルートで資材を搬入するように指示する。

 ひかりは銭丸に「せめて開発を少しスローダウンして状況を見極めましょうよ」と進言するが、銭丸は「今さら止まれない、すでに大金が動いてる」と返し、工期を急ぎ続ける。


「強硬派がいても、魔王国の穏健派が抑えてくれるはずだ。大丈夫、大丈夫」


「その“はず”が崩れるのが、いつものパターンなんですけどね……」



 開発は最終段階に入り、メインストリートやメインゲートが完成しつつある。オープニングイベントを近々に開こうという話が出ており、王都や魔王国側も「これで正式に交流を深める」と期待している。銭丸は「ほんとに今回は勝てる」とテンションを上げていた。

 すると突然、国境付近から「強硬派の魔族が武装して接近中」と報告が入る。彼らはこのプロジェクトを“人間に魂を売った裏切り行為”とみなし、建設現場を潰すべく進軍しているというのだ。人間界側の守備隊と衝突すれば、全面戦争につながるリスクもある。


「嘘だろ? いまさら戦争なんて……何とか止める術はないのか?」


「穏健派が交渉してるけど、間に合わないかもしれません。もうごく近いところまで来てる……」


 ひかりとバルドが青ざめた表情で報告すると、銭丸は「俺が直接説得してみる!」と飛び出すつもりになっている。



 翌日、強硬派の魔族数十名が開発地に乱入。工事現場や資材置き場を次々と破壊し、人間の職人たちが悲鳴を上げて逃げ回る。バルドが少ない警備員で応戦するが、魔族の力は圧倒的で手が出せない。銭丸は「やめろ!」と叫んで駆け寄るが、聞く耳を持たれず、衝突が激化していく。


「こんなことをしても得にならない! 一緒に稼げるチャンスだろ?」


「貴様ら人間は信用できん! 魔王国の土地を勝手に弄ぶな!」


 そう怒鳴られ、建築中の建物に火が放たれたり、魔法の斬撃が走り、それをきっかけにさらなる破壊が広がってしまう。



 開発現場はパニック状態。木材や建材が風や火の魔法で吹き飛ばされ、魔導具が爆発や誤作動を起こす。新しく組み上げたメインゲートも崩壊の危機だ。人間の工員も魔族の穏健派も、騒乱に巻き込まれ逃げ惑うしかない。

 銭丸はそれでも諦めず、強硬派のリーダーらしき魔族に「損しかしないぞ!」と説得するが、返ってきたのは「黙れ人間!」という鋭い魔法攻撃。彼はどうにか避けたものの、背後で大型建物の支柱が轟音を立てて倒れる。


「うわああっ! やめろ、死にたくない!」


 彼の叫びも空しく、建材の塊が銭丸の体をかすめ、次の瞬間、大きな魔導エンジンに引火して爆発が起きる。


ドオォン……!!


 衝撃波で彼は宙に放り出され、鉄骨や魔石の破片が飛び交う中で地面に叩きつけられる。


「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。魔王国再開発は……爆死ッ……!!」


 そう呟くや否や、さらに大きな連鎖爆発が走り、開発地の中央部が巨大な火柱と煙に包まれる。銭丸はそのまま瓦礫の海に呑み込まれ、見えなくなった。



 翌日、広大な荒地に新都市を築くはずだった開発区は無残に破壊され、炎の跡がくすぶっていた。魔族の強硬派は、一晩でやるだけやって去り、残されたのは人間側の被害と混乱だけ。折角の建築物は破壊され、資材や魔導エンジンも大半が焼失。

 貴族や商人は「あの男に関わるからこうなる」と唖然とし、魔王国の穏健派も「暴走を止められなかった」と肩を落とす。いつものように銭丸は行方不明で、周囲は「絶対に死んだろう……」と口々にいうが、過去を知る者は「また生きてるかもな」と苦笑する。

 こうして、人間界と魔族との大掛かりな共同開発という夢は、わずかな衝突から一気に大破壊を引き起こして終わる。時代を動かすビジネスだと言われた割には、爆死に散ったただ一人の男の存在だけが妙に印象に残る――それも、彼がまた立ち上がるのではないかという嫌な予感とともに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ