魔法を唱えてみようかな
「やってみる?」
パッキーちゃんは水をペットボトルの中に入れると、聞いてきた。
ワクワクして首を縦に振ると、パッキーちゃんが指から指輪を外す。
「この指輪を、あたしがつけることから始まるからね」
そして、私の指に入れようとする。
「待って、ちょっと待って」
「どうしたの?」
左手の薬指に指輪を入れようとていていた。
(いろいろ勉強中って言っていたなあ)
パッキーちゃんはふしぎな顔をして首をかしげている。
「指輪はパッキーちゃんのだから、なにかあったとき大変かなって」
「それもそっか。ならブレスレットにしておくね」
ポケットからブレスレットを出して、私の腕につける。
つけてもらったブレスレットは、太陽の光を受けてまぶしく見える。
「それじゃあ、あたしの後に続いて風を起こす魔法をやってみよう」
パッキーちゃんが言葉を紡ぐ。その発音をまねて私も魔法を唱える。
「あれ?」
パッキーちゃんからがお手本に見せた魔法は、風が吹いた。
水飲み場に置いた空のペットボトルが少し動く。
そのあと私が魔法を唱えても、ペットボトルは平然としている。
「もう一回やってみる」
同じ結果に首をかしげ、パッキーちゃんに聞いてみた。
「こっちの世界の人って魔法使うの、難しいのかなって」
「昔読んだ絵本は、みんな使っていたよ」
「うん、そうだよね。私もそう聞かされてきたよ」
それから少し、パッキーちゃんは考えているように見えた。
「こっちの世界に来るのに大変だったし、昔と変わったのかな」
「どう大変だったの?そこに行ったらわかるかな?」
「行くには魔法が必要だから……」
パッキーちゃんが困ったように話して、考え込む。
私も考える。どうすれば魔法が使えるかなって。