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第十話


魔人になって動体視力も上がっていたようで北の魔人、レオの動きがよく見えた。


キャロットちゃんの顔面に放たれた正拳突きが、横へのステップで躱される。空ぶった拳の延長線上の地面が拳圧で爆発した。

カウンター気味に北の魔人の脇腹にキャロットちゃんの左フック。北の魔人より攻撃スピードが早い!綺麗に脇腹へ拳が突き刺さり、そのまま荒野を吹き飛ぶ北の魔人。

あれ?キャロットちゃん強くね?先代の西の魔人を下した強さは伊達じゃねえ!

...え?キャロットちゃんの腹あたりから血が出て...

い、いつの間に。キャロットちゃんが右腹に攻撃をくらっている!


俺が驚いてる間にのっそりと北の魔人がこちらに戻ってきた。


「なかなか強くて安心したぜ。歴代最強って言われた先代の西の魔人を殺ったのは嘘じゃねぇみたいだなあ〜。」

「....」

のっしのっしとこちらに歩いてくる北の魔人の脇腹がシュウシュウ煙を立てている。...回復してるっぽいな。

キャロットちゃんもお腹から煙がでて再生しているみたいだ。これが魔人の回復力か。長期戦になりそうな気がする。


また先に北の魔人が動いた。は、早っ!さっきのスピードとは全く違う!拳が地面にかするような低い姿勢からの強烈なアッパー!躱しきれない!顎を狙ったその攻撃を受け止めようと両手を出したが、ガードの上からの衝撃だけでキャロットちゃんが上空へ吹き飛ぶ!

...!!凄い魔力が北の魔人から漏れ出ている!何かヤバい!ヤバい気がする!


「死ね!西の魔人!!」

「...!!」


そして空中にいるキャロットちゃんに、手を突き出した魔人からとんでもないレーザー状の魔力が放たれた!!


不味い!キャロットちゃん、まだ体勢を立て直しきれてない!魔人って空中で移動できる手段ぐらい持ってると思ったけど意外とないのか?!大ピンチじゃねーか!!

助けるべく駆け出そうとした時には遅く、キャロットちゃんが光の柱に呑まれた。


決着は一瞬でついた。


「後はお前だけだな、東の魔人。」

「ひっ。」

キャロットちゃんを失った感傷に浸る間もなく、北の魔人から向けられる殺意に情けない悲鳴が漏れる。

どうする?どうするどうする!?絶対絶命だ。北の魔人は元々強かったらしいが今の操者は俺だし、奴は初戦の相手には荷が重過ぎる。


...無理だ。何をどうやっても生きれる道が見当たらなかった。諦めるしかない。

ハァ...今世も人生短かったなあ...。


ドサッ。


俺に近づく北の魔人の後ろから変な音が聞こえた。

俺も北の魔人もそちらへ振り向く。


......炭化したキャロットちゃんが上空から降ってきた音だった。絶望がより大きくなって押し寄せる。

心の中ではきっとキャロットちゃんはまだ生きていて反撃の隙を窺っているんだと淡い期待を抱いていた。そしてそんな希望も打ち砕かれる。

くそ...2人で逃げておくべきだった。奴が迫ってくる時にキャロットちゃんに余計な質問をしている場合じゃなかった。

後悔ばかりが頭の中でループする。


「なんだぁ?俺の魔力波を食らって原形がある奴は珍しいな。」

俺に向けていた体をキャロットちゃんに向けて北の魔人が喋る。

...?死体に向かって喋りかけている?それとも俺に背中を向けるぐらい脅威とみられていない?

答えはすぐに分かった。


「...不覚をとった。」

キャロットちゃん!!生きてる!!涙が出た。


生きていたとはいえ、炭化した体から煙が出ているからまだ再生中だ。万全には程遠いだろう。辛うじて生きてる状況でここから勝ちを拾うなんて無理だ。ここは命懸けで俺も戦闘に加わるしか...。


キャロットちゃんが北の魔人から見えない角度で俺にウインクをした。は?可愛すぎか?...じゃなくて。どんな意味だ?挟み撃ちにしようぜ!か?

...もしかして大人しくしてろ?...いやいやまさか。


ウインクの意味を考えてるうちに北の魔人がキャロットちゃんにトドメを刺そうと動く。

しまった!挟み撃ちの意味だった場合は背中を向けられている俺が先に動かないと効果が薄かっただろうに!


過剰なほど魔力を拳に集約させた北の魔人がキャロットちゃんへ歩み寄る。


「俺の固有能力はなぁ、魔力の増幅だ。さっきの魔力波も魔力の規模を見て耐えれる、とか思ったんだろ?そしたら急に魔力が膨れ上がって致命傷を受けちまったわけだ。

この拳の魔力も10倍にしてお前の顔面にブチ込んでやる。楽しみだろ?」

「....」

アレは本気でヤバい!さっきの魔力レーザーよりも魔力がつぎ込まれてる!


「死ね。」

そしてその拳が放たれ、四肢が吹き飛んだ。




北の魔人の四肢が。

決着はやっぱり一瞬だった。


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