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あなたの悪魔とわたしの天使  作者: 鈴森 心桜
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第二十一話「ハルデヴィアンVS鳴」

第三者視点ー


イーリス「…来たか。」


ハルデヴィアンの女王イーリスは

ピエトラに兵士を集め、

東からやってくる鳴の軍を待っていた。

今回のハルデヴィアンの兵士は約幾千人。

軍事力の無いハルデヴィアンにしては、

中々の人数になった。

けれど鳴の軍はそれを大幅に上回る人数で

やってくる事をイーリスは重々承知していた。

鳴がハルデヴィアンに辿り着くまで、

どれだけ人数を減らせるだろうか。

そんな考えを巡らせていると、

イーリスの視界には遠くの方で

鳴の軍がやってくる光景が見えた。


セディク「如何します女王陛下。いつでも攻撃の準備は出来ております。」


イーリス「まだだ。まだ引き付けろ。」


遅れてセディクや兵士達が

敵軍を視界に捉えても、

イーリスは攻撃を許可しなかった。


蒼炎「見えた!あれがハルデヴィアンの軍かぁ。女王が直々に前線に立ってるなぁ。」


一方、蒼炎率いる鳴軍は、

敵軍を視界に入れると

直ちに攻撃態勢へと入る。


蒼炎「仲雲!」


仲雲「はい蒼炎さま、此方に。」


蒼炎の呼びかけに応じて

仲雲が取り出したのは巨大な槍。

それを合図に後ろの兵士も弓の準備をする。

蒼炎は槍を軽々と片手で持ち上げると、

後ろに居る兵士に声をかけた。


蒼炎「みんな!攻撃開始だ!放てぇっ!!」


蒼炎がハルデヴィアンに向かって

その大きな槍を投げると、

後ろの兵士達も空高く弓を射る。

巨大な槍と、幾多の矢の雨が

ハルデヴィアンに降り注ぐ。


イーリス「…何だ?何か大きなものが…」


だがイーリス達ハルデヴィアン軍は

まだその事態を把握していなかった。

「黒くて大きなものが此方へ飛んでくる」

それくらいの認識でしかなかったが、

それが巨大な槍だとわかると、

イーリス達は一気に顔を青くした。


イーリス「ドラッセン!直ぐ此処ら一体に防壁を貼れ!」


イーリスの大きな声での指示に

セディクは慌てて大きな防壁を貼るが、

間に合わなかった。

未完成の防壁は簡単に破られ、

槍はハルデヴィアンの軍に直撃した。

セディクは咄嗟の判断で、

女王を守るように防壁を貼り替える。

中心部から突風と共に

大きな黒煙が上がり、視界が悪くなる。

誰もが状況を把握しようと

槍に視線を集める。

その隙を狙い、

追い打ちをかけるかのように

幾多の矢が空から降ってくる。

視界が悪いせいで

兵士の痛がる声と、何かが張り裂ける音や

血飛沫が上がるような音しか聞こえない。

ハルデヴィアンは一気に混乱していた。


煙がなくなり、

辺りの様子が見えてきた頃には、

無残にもハルデヴィアン第一軍の半分が

犠牲になっていた。

赤く染まった水溜まりが彼方此方にある。

生き残った者達はその光景に息を呑んだ。


イーリス「これほど巨大な槍…、重装機もないのに一体何処から?」


試行錯誤するイーリスの目に、

先頭を行く蒼炎の姿が見えた。

その手には、先刻と同じ槍を持っている。


イーリス「まさか…腕力だけで…?」


蒼炎「もういっかーいっ!!!」


敵軍は敵軍の隙を狙い見落とさない。

態勢を立て直す余裕も与えずに

蒼炎は再び槍を投げ、

兵士は弓を射る。


セディク「女王!また次が来ます!次は先刻のようには守れません!攻撃の許可を!」


イーリス「まだだ。あと少しなんだ!」


イーリスは頑なに許可しなかった。

真剣に鳴の軍を凝視するばかりで、

攻撃する様子が見られない姿に、

セディクは困惑した。

鳴の攻撃はハルデヴィアンに

態勢を立て直す隙も与えず、

再び巨大な槍と無数の矢の雨が降ってくる。

セディクも先刻守れなかった兵の分まで

少しでも多くの兵を守ろうと、

鳴には負けるが、

それでも大きな防壁を貼る。

だが全員を守ることは出来ず、

兵士の痛がる声が響く。

セディクはもう駄目だと思った。

諦めかけたその時、

ハルデヴィアンと鳴との距離が

数メートルにも満たなくなり、

遂にイーリスは声を張った。


イーリス「攻撃開始!」


その一声で、ハルデヴィアンの兵士が

鳴軍に向かって魔法型炎砲を撃つ。

魔法型炎砲とは、

ハルデヴィアンが開発したもので、

本来鉄砲の中に入っている弾が

火薬になっており、

撃つと同時に火の玉となって

発射されるものだ。

イーリスはこの魔法型炎砲の

威力をわかっていた。

鉄砲を改造したものとは言え、

飛ぶ距離には限度がある。

それを考えて、

イーリスは鳴の軍を

ギリギリまで引き付けたのだ。

そして必ず当たる距離で攻撃をする。

だが蒼炎らは動じず、

腰から剣を取り出すと、

炎を一振りで掻き消す。

ハルデヴィアンも

直ぐに大砲機で巨大な火の玉を

鳴軍に向けて撃った。


蒼炎「ん?…黄光ーっ頼んだぁ!!」


黄光「了解!娑乃に娑穏、出番だ!」


娑乃「はーい、黄光様!」


娑穏「………了解致しました。」


娑乃(しゃない)娑穏(しゃおん)は、

馬に乗りながら手を合わせて

幾千と居る兵士全員を囲うほどの

巨大な防壁を頭上に貼る。


イーリス「なっ…!あれ程まで巨大な防壁を貼るなんて…、鳴にはどれ程優秀な魔導士が居るんだ!?」


ハルデヴィアン軍が

魔法の発展に驚いている間にも、

鳴は距離を詰めてくる。

兵士が必死に炎砲を撃つ中、

イーリスは遂に

腰に差していた剣を抜く。


イーリス「…皆!戦闘開始だ!!」


蒼炎「さぁ!殺し合おうじゃないか!」


そうして、

鳴軍がハルデヴィアン軍へと侵入した。

先頭に居た蒼炎とイーリスの剣が交わる。

それを追い越して鳴の兵士達が

ハルデヴィアンの兵士へと襲い掛かる。

キンッキンッと言う金属の

ぶつかり合う音が耳に響く。


蒼炎「まさか他国の女王と一戦交える日が来るとは思わなかったよぉ!」


イーリス「そうか!それは良かったな!」


ニコニコと笑う蒼炎に、

イーリスは腹正しさを感じた。

蒼炎の態度はまるで戦争を

楽しんでいるようだったからだ。


蒼炎「随分強情なんだねぇ。炎が届く距離まで自分の軍の兵士を犠牲にするなんて!」


蒼炎はわかっていた。

何故イーリスがギリギリまで

攻撃をしてこなかったのかを。

それほど彼女は聡明だった。

イーリスは彼女が気付いていたことに驚き、

力を緩めてしまった。

その隙を蒼炎は見逃さず、

一気に剣で追い込む。

誰が見ても、イーリスは劣勢だった。

そして遂にイーリスの剣は弾かれた。

同時に、彼女は地面に尻餅を着いた。

弾かれた衝撃に耐えながら、

イーリスが体を起こすと、

蒼炎が彼女を見下ろすように剣先を向ける。


蒼炎「君がそんな人柄じゃなかったら、兵士達は死ななかったのにねぇ。」


イーリス「……国を守る為に闘うのは兵士の本望だ。例えそれが死に繋がったとしてもな。」


剣先を向けても威勢の良いイーリスに

蒼炎は笑いが堪えきれなくなった。

大きな声で笑い声を辺りに響かせる。

だがこんな喧騒の中、

周りは誰も気にしない。

突然笑いだした蒼炎にイーリスは困惑した。


蒼炎「そういうところだよぉ女王様。それが兵士を殺したんだ。君は、その犠牲の上に立っている。」


蒼炎は剣をイーリスの喉に向け、

彼女と目を合わせるように腰を下ろす。

蒼炎の真っ青な瞳が

イーリスの視界いっぱいに広がる。


蒼炎「ほら聞いてご覧。こうしている間にも君の大事な兵士はどんどん減っていく。」


彼女達の周囲では、

鳴とハルデヴィアンの兵士が闘っている。

そして軍事力の無いハルデヴィアンと

軍事力の有る鳴ではやはり力の差は大きく、

ハルデヴィアンの兵士達は

沢山殺されていた。


蒼炎「大人しく傘下に入れば、兵士は死ななかっただろうに。」


イーリスはもう呆然と

その光景を見ることしか出来なかった。

自分は何処から間違ったのだろう、

何処からやり直せば良いだろう、と。

認めたくはないが、

蒼炎の言うことは最もだった。

イーリスはその光景から

目を逸らすように俯いてただ地面を見る。

そんな彼女に蒼炎は呆れて

立ち上がり、再び剣先を向ける。


蒼炎「鳴の為にその命貰うよぉ。イーリス・ハルデヴィアン!」


蒼炎の剣が高く振り上がり、

イーリスの首を切ろうとしたその瞬間、

剣を持つ蒼炎の腕が何かに弾かれた。


蒼炎「っ!?」


剣は遠くへ飛んでいき、

直ぐにイーリスと距離をとった蒼炎が

"何か"が当たった箇所を見ると、

右手首辺りが赤く腫れ上がっていた。

驚き、イーリスへと視線を戻すと、

其処には新たな人物が

イーリスの前に立っていた。

京紫色の髪に赤い瞳の少女、

妖桜のルシファーである。


ルシファー「…これは別にお前を助けた訳じゃないわ。あの子の相手は私だから、取られちゃ困るの。自惚れないで頂戴ね。」


イーリス「……来て、くれたのか。開戦の時に姿が見えなかったから来ないのかと。」


ルシファー「彼女は戯言は言っても、虚言は言わないわ。それにこの戦争は私達にとって大きな分岐点だしね。」


蒼炎は驚いていた。

女王に対する態度は勿論、

こんなにも華奢な少女が

自分の腕が腫れるくらいの攻撃を

したのかと。

そして一番目に行くのは、

彼女の背中だった。

ルシファーの背中には、

黒くて大きいものが生えていた。

禍々しくも美しく見えるそれに

目を奪われながら、

蒼炎はやっとのことで口を開いた。


蒼炎「…女王をお前呼ばわりって…、君一体何者?」


ルシファー「何者でもないわ。ただ貴女と闘う女ってだけ。」


ルシファーは腰に差していた剣を抜き、

蒼炎に向けて構える。

その姿に蒼炎はゾクゾクと

自分が興奮するのがわかった。

骨のある奴が来たと思ったからだ。

戦闘が好きな蒼炎にとって、

ルシファーの出現は想定外だが好機だった。

一方ルシファーは、

自分の相手である彼女を前に、

少しばかり緊張していた。

相手の力がどれ程か知らないからだ。

剣を握る力が籠る。


そしてルシファーと蒼炎の闘いが始まった。

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