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三十三、闇玉

 戸の閉まる音と同時に、佳耶の首が折れたように頭が落ちる。狭い(へや)に佳耶は押し込められた。見張り役が戸のすぐ外に立っているのが気配で分かる。完全に、閉じ込められたのだ。

 どうしてこんな事に。何から何まで、佳耶の手にはおえそうにない。力を失っていたとはいえ天の火がときはの内に宿った事も、天の火がヤマの肉体だった事を思えばあまりの話の壮大さに頭が混乱する。そのときはが家族が赤の他人だと知った事も佳耶には想像を絶する出来事だ。自分には家族などいないと思って生きてきたから、佳耶にはそれが実は別人だったと知らされた時の気持ちを理解出来ない。

 そうして呆然としたときはを襲った、ヤマの脅威。ヤマの精神そのものがときはの内部に入り込んだなどという事――あまりにも話が突飛過ぎる。聞けば確かに閻魔王の方の事情が多すぎて、それをひた隠しにされた時期が長すぎて、佳耶には到底理解が及ばない出来事だった。

 おそらくこれが他の者の身に起きた事態だったら、佳耶はここまで気に病んだりしなかったろう。

 これがときはの身の上に襲いかかった苦難だから、佳耶はここまで焦燥にかられたりするのか。

 静かに拳を握ると、爪が手の平に食い込んできて皮を突き破りそうだった。

 これから一体、どうしたらいいのか。

 どうしたいかは分かっている。だが実行する術が分からない。というより、ないのかもしれない。

 以前佳耶は聞いた事があった。閻魔王の権限には、六道の門を封鎖するというものがある、と。それは今実際に発揮されていて、それ程までの緊急時だと冥府中に知らしめている。問題はその塞がれた門を如何なる手段でも通る事が出来ないという事だ。佳耶のしようとしている事は、閻魔の手によって阻害されている。ヤマに体を奪われたというときはを元に戻す手段だって思いつかないのに、彼女の居る人道にどうやって行ったらいいというのだ。

 元々冥府では六道の門を厳正に管理している。とはいえ門を通るのは容易ではなく、門と言いながらも長い洞穴のようなもので、道は一本ではなくただ前に進めばいいというのでもない。なんとか出口が見つかっても、踏み出す一歩を間違えれば大地の上ではなく空に放り出される、そういった不可思議な存在なのだ。

 天の火を掠め取ろうとしている少女を探しに人道に降り立った時も、佳耶はうっかり征崖に遅れをとって、最後は急ぎ足で彼を追った。それが悪かったのか人の背より幾分も高い場所で急に人道に落ちて――そこで、ときはと邂逅した。

 彼女の上に落ちた事から始まった出会いは、良くない関係のまま進んだ。最初、佳耶はときはを天の火を盗もうとしていると思った。何しろ閻魔王に見せられた少女と同じ顔の造りをしていたからだ。だがそれとは別のところで、佳耶は彼女が気になるようになった。負けん気が強くて自分勝手、佳耶が何か言えば反発してくる。何度その口を閉じさせるために殴ろうと思った事か。

 それから、三度目の再会の時だったろうか。ときはが涙を見せたのは。

(ああ、そういえばあの時も泣いていたな――……)

 立派な邸の中で涙する所以を佳耶は今をもっても知らない。彼女の言葉から察するに、何か途方も無い出来事が降りかかってきて、混乱しているようだった。あの時ときはを連れ出したのは、征崖がとにかく一度会いたいというので引き合わせようとしたまでだ。思えば、ときはは本当に佳耶たちの探していた人ではなかったのに、佳耶は途中までときはが天の火の盗人だと思い込んでいた。

『……お前を信じてやるって言ってんだよ』

 あの時自分はどうしてあんな事を言ったのだろう。自分でも分からないまま、桃緋が姿を現わし、あんな事になったから忘れていた。

 ただ、一人ぼっちで泣いてるときはが、迷子の子供のようにしか見えなくて。佳耶には彼女が何か大それた事をするようには思えなかったのだ。そんな余裕もなさそうにも、見えた。ちっぽけな少女の姿。周りに信じられる人など一人もおらずに、人道での暮らしを続けたあの頃の自分に――重なったとでもいうのか。

 今更考えても意味などはない。佳耶はふっと息を吐いた。考えねばならぬのは、未来(これから)の事。

 しかしてこの房から出るのも難儀なこの状況。行き着くところは壁のみで、煮詰まった思考は堂々巡りをしてしまう。

 だが何か方法があるはずだ。あの少女を、訳の分からぬヤマとかいう存在に侵食されたままで一人にしておきたくない。

 どうしたって佳耶はあのときはを放ってはおけないのだ。理屈じゃない、もうそう思い込んでしまっている。なんだか抜け出せない泥沼にはまっているような気がしてきたが、もう致し方ない事だと思う事にする。

 今度はとても長い息を吐いて、佳耶は顔を上げた。考えても仕方がない事、ならばまず動き出そう。順序だった思考が出来なくとも、佳耶はまず歩き出そう。そう決めた。

 立ち上がった佳耶は、自分の身なりを確認した。常に携えている黒色の太刀は、暴れた時に既に奪われてしまっている。あの太刀は六道のあらゆるものに干渉出来る。そして冥府においてもそれなりに力を発揮する事が出来るのだ。ゆえに征崖に命じられて佳耶を拘束した男たちに取り上げられてしまった。あれないと心細いという程ではないが、神名火守になってからずっと腰から下げていたものなので、なんだか変な感じがする。人道に行けたら、あれがあった方が便利だろうか。彼方がどうなっているかまだ分からぬので、何を持って行けば良いのか皆目見当もつかない。そもそもヤマという者は人道で何をしようとしているのか――。

 考えるよりまず行動、と決めたはずがまた思考の渦にはまりかけていると佳耶が気づく前に、突然に戸は呆気なく開いた。あまりにも軽く開かれたので、一瞬反応が遅れた程。

 また誰か男たちがやって来て佳耶が大人しくしているか釘を差しに来たのかと身構えたが、現れたのはなんと、胡蝶の姿だけだった。

 猫のように好奇心をかすかに潜めたその瞳で、胡蝶はくるりと房の中を見渡す。

「佳耶」

 よく知った相手とはいえ、胡蝶が佳耶の味方とは限らない。もしかすると、今度は胡蝶が佳耶を静かにさせるように派遣された相手かもしれぬのだ。

「……何してるんだ、お前」

 それにしたって、胡蝶はどこか楽しげだ。

「やっぱり皆混乱してるみたいね。あっちで新たな仕事があって人手が足りないーって言ったらここの見張り、飛んでいったわよ?」

 矢張りこの少女は大変な時期をおもしろがっているように思える。確かに子供は嵐の日もその非日常に胸を高鳴らせたりするが、そんな場合ではない。何れにせよ佳耶には胡蝶に構っている暇はない。

 閉ざされたはずの戸が開けられたのなら、この房を出るまでだ。入り口のところへと佳耶は歩いて行く。胡蝶は少し避けて、二人で廊下に出た。

「で、何しに来た」

 まさかこのまま自分について来るのだろうか。そういう思いもこめて佳耶は問う。

「もちろんあんたと人道に行くためよ」

「……ああ?」

 当たり前の事を問うなというような返事に、佳耶は歩き出していた足を止めてしまう。胡蝶は佳耶が立ち止まった事を不思議がるように見つめてくる。

 この少女は何と言った? 佳耶が人道に行こうとしている事を見抜き、それに同行するとでも? 確かに征崖にはそう疑われたが、まさか胡蝶にまで。その上、彼女まで征崖に禁じられた事をしようと言うのか。

 胡蝶の瞳から面白がる感情が消えた。

「ときはの事、心配なんでしょ」

 言い当てられ少しも動揺しなかったかと問われると嘘になる。だが、この状況で人道に行きたがる理由など限られてくる。推測されただけなら頷ける。

「わたし、佳耶の事見てたから分かるわ。あの子の事、好きなんでしょ」

「はあ?」

 少し寂しそうに笑う胡蝶は、顎を少し下げる。

「好きな相手なら、その人のために何かしたいって思うわよね」

 遠くで誰かが声を張るのが聞こえる。冥府は今、本当に大変な時なのだ。それが急に実感としてわいてきて、佳耶はしばし耳をすませた。

 ときはの事を好きかどうかと聞かれても――佳耶には返事が出来ない。自身扱いかねている感情だからだ。もちろん、最初の頃のように嫌ってはいない。

「……そんなんじゃない」

 思っていたより静かな声が出た。佳耶がほとんど感情を揺らがせないので、胡蝶は自分の言葉に自信がなくなったのだろうか。佳耶を再び凝視してくる。

 好きだというのではない。

「ただ、あいつは。他人(ひと)のために泣くから」

 恋情とは少し違う気がしている。もっと違うところで繋がっていると感じる不可解な気持ち。

 地獄道で名を呼ばれた時。あの瞳と視線が合って胸に広がった感情を何と言おう?

 好きだとか恋だとかそういうものよりももっと強固で友情めいていて、魂の奥底で手を握るような感覚。そばに居て彼女の間違いを正してやる事が出来る、そうする事がずっと前から決まっているような、そんな関係性。

 自分でも理路整然とかけ離れていると分かっている。何にせよ佳耶のときはへの思いは、一通りではないのだ。

「なんでもいいよ。こんな時なのに征崖さんの言いつけも破って、それでも人道に行きたいんだよね」

 ふいに胡蝶は歩き出す。遅れて、佳耶も今は立ち止まっている暇はないと思い出す。背中ごしに語る少女に佳耶は追いついた。

「わたしだってそうだわ。腹が立つけど、あの子にまだ、謝れていないんだから」

 肩を並べて歩く少年と少女。

 胡蝶はときはに嫌がらせをするために地獄道に彼女を導いた。その事を後悔しているというのに謝罪をする事が出来ないでいる。出来ないまま、ときはは人道に連れさらわれてしまった。

 自分の非を認めるのは怖い事だ。自分のしてきた事といえば、ある意味では自分自身を作り出すという事にも似ている。それを否定する事になるのだ。過去の自分の否定、信じてきたものの拒絶、自身の愚かさを思い知らされる時。胡蝶はそれを恐れた。

 彼女はいつでも臆病者だった。そんな自分を隠すために仮面を被って、きつい態度をとって。それでも根っこの方は変わらなくて、誰かに謝る事さえ出来なかった。

 すぐにでもしてしまえばよかった。ときはがあんな事になる前に。佳耶との脱出劇が上手くいかなければもう二度とときはとは会えないのかもしれない。そんな予感があった。

 陵ときは。胡蝶は今ではさほど憎む事も出来ない。

 地獄道から戻った彼女を胡蝶がどう思ったか。まさか肉体を持っているなどと、佳耶と同じだとは思わなかった。冥府ではかなり珍しいという程ではないのだが、矢張りその数は相対的に少ない。何も考えていなかった自分が恥ずかしくなり、嫌になった。幾度かときはの様子を伺いに行けば彼女は何故だか泣いているし、当初の胡蝶の目論見通りのはずが罪悪感に苛まれた。断片的に聞いた話では、ときはは人道での知人と思わぬ再会をしてしまったらしい。地獄道での再会など、ろくな話ではない。自分が彼女の身だったらと思うと、胡蝶の背筋は震えた。

 怒りばかりが先行して、胡蝶はときはがただの人間である事を忘れていたのだ。弱った彼女を見てほくそ笑むはずが、いつの間にか同情をしてしまった。つまらない事をした自分が小さく思える。

 胡蝶は何がしたかったのだろう。

 親しい友人の佳耶をとられたくなかったのだろうか。それだけだろうか。ああも嗚咽する程少女を追いつめてまでしたかった事だったのか。

 当然、嫉妬の眼差しを向けた頃から佳耶のときはに対する態度の違いを察していた。地獄道から戻った時ももっと他のものになりかけていた。胡蝶は自分の憧れの終焉を感じた。意外にもあっさりと受け止められた。

 思ったのだ。誰かのために泣ける彼女なら。それを支えようとする佳耶なら。たとえどうなっても胡蝶を蔑ろにはしないだろうと。胡蝶は、最初から仲間外れが嫌だっただけなのだ。かつて自分を消極的にさせた、経験だったから。

 ときはを気にする佳耶は此方を見ない、人道に思い囚われたままのときはも此方を見ない。だからあんなにも嫌って、憎んで、嫉妬して――。

 まだ胡蝶はあの時の事に縛られているのかと気づくと、うんざりした。自分の性格は簡単には変わらないかもしれない。ただ、このままじゃいたくなかった。過去の自分と距離を置きたかった。だからこそ、ときはにきちんと謝る必要がある。胡蝶はきっともっと、変わる事が出来る。今すぐには無理でも、少しずつ。人にも謝れる素直な子になって――きっと変わってみせる。

 いつしか、そう思えるようになった。

 だから胡蝶は彼女のため、それから自分のため。人道に居るときはに会って、謝らなければならない。

「あの子に会いに行くわ」

 胡蝶がもう一度言うと、佳耶は彼女を一瞥した。

「勝手にしろ」


 彼らは歩いていても誰の注目も集めなかった。それぞれが各々の仕事で手一杯で、あるいは誰かの手伝いをさせられており、仕事に関係のない事は視界に入らなかったのだ。

 歩くうちに佳耶は相手の正気を疑うような声を上げた。

闇玉(やみだま)を使う?」

 実際に佳耶は胡蝶の正気を疑った。ときはに謝りたいなどと急に素直な事を言い出した事からして、胡蝶の様子が変わったのが分かる。もしかすると今回の騒動で胡蝶の頭も混乱したままなのではないか。ややもすると失礼な事を思っている佳耶にも構わず、胡蝶は周囲を見回した。

「人道……六道への門が閉ざされたっていうなら、他に方法はないでしょ。時間もないし、一か八かの賭けだけど……上手くいけば、人道に行けるんだから」

 闇玉とは、冥府における不可侵の存在。冥府の住人は皆闇玉を避けて暮らしている。闇玉は自ら移動をし、何処にも姿を現わすが、人の歩く速度よりもひどく遅いために気をつけていればぶつかる事はない。闇玉に触れれば、冥府以外の何処とも知れぬ場所に放り出されてしまう。

「闇玉は行きたい場所に行けないどころか、時代も問わないところに行くんだぞ? そうなったらどうすんだ!」

「そうなったら……」

 本当に上手くいけば、闇玉こそが門となる。六道へ続く門は人道の門なら人道へ、天道への門なら天道へと決まった場所へ出る。闇玉はそうはいかない。が、佳耶たちに都合よく進めば人道に行く手段になるのだ。それ以外の術が他にないのは佳耶にも分かる。しかし失敗すれば夢生として六道の何れかを彷徨い、冥府の神名火守に見つけてもらうまで、其処で生きるしかないのだ。かつての佳耶がそうだったように、ただの力ない迷子と化す。

「聞いた事があるの。闇玉は人の願いを感じ取れるって」

 胡蝶は静かな声で言った。

「闇玉の力に負けないくらいの思いで、願うの。行きたい場所を」

 冥府において、佳耶は胡蝶よりも新参者だ。どの位の間胡蝶が冥府に居るのかは知らないが――もっとも、冥府において時間の概念などあってないようなもの――佳耶以上に冥府に詳しい。その彼女が言うのなら、佳耶が言うより信憑性があるかもしれないが、闇玉が相手だ。常に忌避すべき存在として見なされていたものに自ら触れるなど、賢い選択とはいえない。

 躊躇う佳耶を他所に、胡蝶はまた歩き出す。彼女は無闇と歩いているのではなかった。胡蝶は佳耶を房から出した時から、闇玉を探していたのだ。

 夢生になる覚悟をして、闇玉に賭けるしかないのか。過去の記憶が佳耶の決意を鈍らせる。我が身かわいさではない。成功する見込みが少ないものを最善として、失敗した時にときはは人道でどうなるのだ。その事が心配なのだ。

 黙り込んだ佳耶の葛藤に気づいているのか、胡蝶は幾度か彼を横目で見たが、何も言わなかった。そんな彼女の視界の端に、見覚えのあるものが見えた気がして口を開くが――

「あっ、お前、房を抜けだしたな?!」

 慌てた声に遮られる。二人で振り返ると、佳耶を最初に取り押さえた男の一人が此方へ向かってくるのが分かった。佳耶と胡蝶は顔を見合わせると、何方からともなく駈け出した。待てという声が聞こえるが、従う訳にはいかない。

 最初佳耶はただ追っ手から逃れるために走っていた。しかし胡蝶は違った。自分の向かう先について来いと言うように佳耶の手を取った。

 まさかと思った佳耶は、胡蝶の視線の先を追う。光の届かぬ闇を固めたような球体のそれ。

 闇玉だ。

 胡蝶は本当にあれに触れるつもりなのだ。躊躇いが佳耶の足を鈍らせ、胡蝶にもそれが伝わった。振り返ると、胡蝶は叱責するように声を荒らげる。

「佳耶、早く!」

 反論のようなものを口にするつもりだった。突然胡蝶が佳耶の手を離すまでは。

 あっと思った時には、胡蝶の体が男に引かれていた。征崖に言われ佳耶を拘束した男が、胡蝶の首根っこをひっ捕まえたのだ。胡蝶は暴れて、佳耶にすら手をぶつける。いや、それは佳耶の背を押す行為だった。彼に早く離れろと言いたいのだ。

「行って! あの子に、さっさと帰ってくるよう伝えて、わたしが謝りたがってるって言ってもいい!」

 男が鬱陶しそうに顔を顰めて、胡蝶の手首を捕まえようとする。

 佳耶は既に彼らとは距離を取っていた。

 このまま胡蝶を助ける事も出来る。

「……ああ、もうっ」

 胡蝶の瞳は、相手が自分に気を取られているうちに早く行けと訴えている。気を許せば気安い相手だが、強気な態度と素っ気ない素振りが常の胡蝶が、誰かのために動くなんて。

 もう後には引けない。

 佳耶は振り返らずに闇玉をめざした。

 闇玉は思っていたより近くにあって、目前に迫ると矢張り胸騒ぎがした。

 触れるのに今更躊躇いなど、必要ない。思ったはずでも佳耶は喉が乾きそうになるのが分かった。逡巡している場合ではない。そんな余裕は今の自分にはない。胡蝶の思いを無駄にするのか。心臓が裏返りそうだ――

『もう一度、冥府を案内してよ』

 そう言ったときはの声が蘇った。

『よく見たいの、ここを』

 知りたいのだと言った。冥府に来た当初は何も見たくないと瞳が語っていたのに。

 気がつくと、佳耶の指先は闇色の珠に触れていた。

 心臓が強く拍動した。あいたい。たった一つの願いは、単純なだけあって、とても大きな力になれる。

 思いは強いが、手は震えていた。闇玉を正面にした時には確かに異質さ、おぞましさを感じる事が出来た。それくらいに、力ある存在。もし彼女の待つ時代と場所にたどり着けなかったら? 不安をあおる存在。

 だがそんな危惧も一時(いっとき)の事で、佳耶はあっという間に闇玉に吸い込まれていた。

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